なんじゃこりゃあああ!!【デスストクリアレビュー】
1番好きなボスはゴースの遺児。ステージは漁村か星輪草の庭。
こんにちは。普段はアトラスのゲームばかり遊んでいますが、気晴らしにやったデスストがとんでもないゲームだったので、鼻息荒くレビューします。
初回プレイで気づいたら8時間遊んでた。最後はほぼぶっ通しで24時間遊んでクリアしました。
忘れられないゲームになった。本当にサムが大好きだ。
Steam版をプロコンでプレイ。
難易度はHARD。クリア時間は40時間。
※【評価点】の項目からネタバレありです。ご注意。
プレイフィール
荷物運びの旅へ
突然ですが、ドライブは好きですか?
僕は大好きです。好きな曲をかけながら高速道路をぶっ飛ばすあの瞬間がたまらんのです。ぶっ続けで5時間ぐらい運転するのが苦にならない。
デスストの面白さは、このドライブの面白さと似ている。
僕はゲームを遊ぶときに、どこか旅行に行く気分を期待している。
現実ではあり得ない魔界の地形。
この世のものとは思えない天界のダンジョン。
そういったダンジョンデザインは見るだけでワクワクするし、だから3Dのメガテン作品が好きなんだと思う。僕にとってゲームとは、まだ見ぬ新たな地形との出会いだ。
デスストの世界は巧妙に作られたファンタジー(現実世界)だ。
景色が綺麗だとそれだけでテンションが上がる。
もちろん、綺麗なだけのゲームが面白いとは限らない。薄っぺらいゲームはごまんと存在する。
デスストは極論、荷物を運んでムービーを見るだけのゲームだ。
でも、それがたまらなく楽しい。後述するけど、のめり込んでしまう仕掛けに満ち溢れている。
荷物を運ぶ。
その大変さは老若男女問わずわかってもらえると思う。
時には100kgや200kgを超える荷物を背負いながら、こんな地形を登ったり下ったりする。当たり前だけど大変だ。
無茶な動きをするとバランスを崩して荷物を投げ出してしまうし、往復距離が短いわけなんかない。大変だしめんどくさい。依頼を受けるたびに「めんどくせ」って思ってしまう。
荷物運びの旅における脅威は自然だけじゃない。フィールドに配置されたミュール(人間の敵)やBT(人外の敵)が僕らの行方を阻む。
歩きで川を越え、山を越え、降り、荷物を運ぶ。
文字にしたらとんでもなく面白くないゲームだ。
でも、プレイヤーはみんなこれに心打たれる。
「そろそろゴールだ!」っていうタイミングで、神曲が流れる。
僕はこれを「ご褒美タイム」って勝手に呼んでる。
この瞬間が本っっっ当にたまらない。これを待ち侘びてゲームする。
プレイしていて思うけど、小島監督はただの「アメリカかぶれおじさん」だ。そしてデスストは、そんなおじさんの趣味に付き合わされるだけのゲームだ。
でも要所要所でセンスが光ってる。洋楽や洋画を愛しているからこそ、僕らのツボをググッと抑えられてしまう。僕は毎回気持ちのいい敗北感を感じていた。
「小島、やるなぁ〜!」
苦難を乗り越えて、ご褒美タイムが始まる瞬間。
それはドライブをしながら、シャッフル再生していたプレイリストで大好きな曲がかかるあの瞬間に似てる。
綺麗な景色と音楽。それだけあれば人は喜ぶ。
エンタメが複雑化していっても、それだけは不変なのだなぁと思い知らされるばかりでした。
ゲーマーのツボを抑えたゲーム作り
僕が小島(以下敬称略)にしてやられるのは、演出だけじゃない。
ゲーム体験全般も小島の手のひらの上なんだ。悔しいくらい術中にハマってしまう。
この画像を見てもらいたい。
ただの岩。普通の岩だ。
でも、デスストプレイヤーなら、心の中にモヤっとしたものが芽生えるはず。
(序盤の)デスストは、こんな岩にも気を配らなきゃいけないのだ。
少しでも角度があると、サム(主人公)はバランスを崩してしまうからだ。
したがって、プレイヤーはこの程度の岩ですらなるべくなら避けたいのだ。
物語が進んでいくと、サムはどんどん強くなる。
一気に運べる量が増えるし、運ぶことが少しずつ楽になっていく。
僕が「やられた!」と痛感したのは、バイクに乗れるようになった頃の話だ。
最初の頃は歩いてた。歩きながら運送ルートをじぶんで決めて、一生懸命山登りしながら配達していた。
それだけでもじゅうぶん楽しかったし、不便を感じたことはなかった。
「歩くのもいいなぁ」って思いながらミッションをクリアしてたんだ。
バイクが解禁されるのは、徒歩での運搬に慣れた頃。当然とっても嬉しい。
「これからはバイク便がメインになるのかな?」とか考える。
でも、そんなことはない。
「なんだよ。歩くのかよ」って愚痴をこぼしたくなったとき、心の中でツッコミが入る。
「いや、お前、歩きを楽しんでたじゃん! 何歩くのめんどくさがってんだよ!」って。
このバランスが本当にビビる。心の中を覗かれてるような気持ち悪さ。さすがベテラン開発者。
「デスストって結局歩くゲームなんだな」
そう納得して、ゲームに対する見方を変えてからも、また同じ術中にハマることになる。
雪山の上り下りが大変で、ジップライン(移動を楽にする建物)を建設しまくってた時に「ハッ」とした。
というか、小島に怒られた気がした。「お前、また歩くのやめようとしてるだろ?」って。
ここに至るまでカイラル通信量なんて気にしたことなかった。
なんかよくわからん、やり込み用のパラメーターだと思ってた。でも違ったんだ。
このゲームで移動を最適化しようとすると、「徒歩から逃げること」につながる。
ゲームも中盤。「小島、あんたの考えてることわかってきたぜ〜」って思った矢先にこれだ。僕はいつになったら学ぶのか。
プレイヤーとしてゲームを遊んでいて、ここまで綺麗に上回られたのは初めてだ。ユーザーの感情曲線を熟知していて、どんな行動をしたくなるかわかっているからこそ、こうして思考を先回りされる。脱帽です。
ここまで書いてみても、デスストの魅力は1割も伝えられてないと思う。
未プレイの人はこれを読んでも「やってみたい!」とは思わないはず。
でも、それでいい。そう思った人にこそやってもらいたい。
本当に「ゲームの魅力」がたくさん詰まったゲームだ。
僕みたいなアラサーは、そろそろゲームがめんどくさい。
新しいシステムを理解することがめんどくさい。新装備とか新しい要素とかが煩わしくなってくる。シンプルなゲームの方が好きだ。
でも、デスストの新装備や新ステージは喜んでしまう。
コピペダンジョンじゃないから。それぞれにしっかりと遊び方が用意されてるから、クリアを通して新鮮な気持ちで遊び続けられた。
一人でも多くの人に触ってもらいたい。
世界観やストーリーが難解とかいうけど、全然そんなことない。SFの面被ったダークファンタジーだ。
これぐらいの理解でじゅうぶん。
グラフィックとかを最低にしてもまだ綺麗だ。僕のポンコツロースペックPCでも動く。
全く期待しないで遊んでもらいたい。
この先はクリアした人向け。未プレイの人はまたお会いいたしましょう。
評価点
圧倒的な没入感
自己紹介が遅れました。
普段はすっぴんアラハバキとして活動していますが、僕の本名はサム・ポーター・ブリッジズです。よろしくお願いします。冗談はさておき。
このゲームは圧倒的に没入感がすごい。エグい。
最初、デスストのパッケージをみた時に、「主人公はきったねぇおじさんだな」って思った。無精髭生えてるし、全然引きがない。人物としての魅力はほぼゼロだった。言い過ぎ。
でも、ゲームが始まってすぐ、僕=サムになった。サムは僕なんだ。僕はサムなんだ。
没入感に一役勝っているのは、声優の津田健次郎さんの力量もあると思う。演技がうますぎる。決め台詞はもちろん、普段のぼやきとかのリアリティがエグい。プレイヤーの感情がサムの感情と同期する。
ゲームスタート直後に感じた、ブリッジズの面々の押し付けがましい感じがまさにそれだ。
そういう僕の感情を代弁するかのように、しっかりとサムが声を荒げてくれる。
この「サム=じぶん」の方程式が、このゲームの面白さだと思う。
だってサムは僕だもん。何度も言うけど、僕はサムなんだ。
それを感じさせる仕掛けが至る所に詰まってる。
なぜ荷物運びが楽しいのか
デスストは本当に荷物を運ぶだけだ。
戦闘はオマケだし、マイクラのような建築も楽しめない。
文字に起こしてみると本当につまらなさそう。実際僕も日を跨いでプレイする際は、「初回プレイみたいに楽しめるかな」といつも不安だった。頭の中で「めんどくさくてつまらないゲーム」だと認識してしまっている。
それでも面白いのは、小さな自己承認欲求をくすぐられるからだ。
このゲームの住人はとにかく褒めてくれる。
大袈裟なぐらいのテキストが本当に気持ちがいい。
アクションに対するリアクションが大きすぎると、僕らは萎えてしまう。「あ、お世辞だな」ってのが透けて見えるからだ。
でも、道中の辛さを僕たちは知っている。だって本当にめんどくさいだもん。徒歩移動の時とか絶望だよ。リバーストライクも岩肌ゴツゴツのとこじゃ役に立たないし。
そうして苦労した後だからこそ、依頼者の過剰な喜び具合が嬉しい。本当に仕事で褒められてる感覚に陥る。むしろもっともっと褒めてくれや。
そしてこのゲームは、オープンワールドらしく押し付けがましさがない。
攻略手順に正解はないし、サムの数だけルートがある。このルートを考えている瞬間がたまらない。
仕事でもなんでも、計画通りに物事が進むことなんかない。
デスストも同じだ。最短距離で楽するはずが、気づいたらバカみたいに辛いルートを選んでいることがある。
いやらしいのはミュールの配置。これ、本当にプレイヤーの心理を突いてくる。
「うわ、山登るのかよ」→「遠回りになるけど平地で行くか」→ミュール「いるよー^^」
僕ら配達人にとって通りやすい場所は、土地として価値が高いと思う。
往来は多くなるだろうし、至る所に人の痕跡が見つかる。
でもそれは配達人だけじゃない。荷物を奪うミュールも同じだ。
効率よく人を襲えるだろうし、拠点を構える土地としても優秀。なるほど、説得力がある。だから余計にムカつくんだろうけど。
試行錯誤がとても楽しい。じぶんの頭の中で考えるのが最高に楽しいんだ。
僕は常日頃から、不便なゲームに怒っている。
大体それは開発者側の怠慢だし、予算や納期の都合でプレイヤーに『押し付けられた不便さ』だからだ。でも、デスストの場合は、不便であるからこそ面白い。「やったろ!」って思えてしまう。
別ゲーの中では風景の一部でしかない岩にも、しっかりパラメータ振ってんだもんなぁ。
ホントに独立したてのクリエイターが作るゲームじゃないよ、これ。どこまですごいのさ。
引きのある設定とストーリー
まず、大陸横断が最高にワクワクする。
社会科の先生でよかった。ロッキー山脈を越えるのかと思うと、もうワクワクが止まらない。
メインシナリオも続きが気になりまくる。アメリの胡散臭さが尋常じゃない。本当にいいキャラだ。
それでもやっぱり、脇を固めるのはサブキャラクターの魅力だ。
気になるメインシナリオをチラつかせつつ、サブクエでボリュームを嵩増ししながらも、ちゃんとクオリティを保ってくれる。
デスストのキャラクターはクセが強い。みんなクセが強い。だから第一印象は大体悪くなりがち。
それがしっかり裏返るから面白い。全編通して不快なキャラがあんまりいなかった。砂時計女ぐらいだ。
それはヴィランであるヒッグスも同様だ。
ここの演出とか本当に最高だった。「もう! 小島ったら!」って言いながらプレイしてた。裏でかかるBGMがまた最高なのよね。
SFっぽいです〜、小難しい話してます〜みたいな面してるくせに、やってることはベタベタな王道なんだもん。
ある種置きに行ったシナリオで舌鼓を打ちつつ、ぶっ飛びきった情景描写で頭をぶん殴られる。
そしてシナリオを奥深いものにしてるのは、間違いなくカイラルアレルギーの設定。
ある程度、エンタメを楽しんできた人間からすると、「いかにも」な涙とかあからさまな描写はめちゃくちゃ萎えてしまう。
でも、「カイラルアレルギーのせいで涙が出る」がかなりいいスパイスになってる。
そういう『解釈を迷える楽しみ』がある。
解釈の仕方すら指定しないのは絶句。涙を見るたびに設定がチラつくのが心地よい。
これも立派な飽きさせない工夫の一つだと思う。
死生観を圧倒的に表現している
このゲームほど「死」と向き合っているゲームもないと思う。
ペルソナ3は「日常の延長線上の死」だった。いわば人生を考える、に近いと思う。
でもデスストは「概念としての死」なんだ。生命の誕生や幽界について考えさせられる。というか思考が伸びる。
最初、BBやスティルマザーの設定を聞いた時、ものすごく不愉快な気持ちになった。
イタズラで持ち出していいものじゃないし、それで雰囲気を作ろうとしているのならその魂胆が気持ち悪いから。
それに加えて、ママーの子供がBTだった時はドン引きした。
いやいや、下品すぎるだろって。やっていいことと悪いことがあるって。創り手の品性を本気で疑った。
でも、死や生命について深く考えていくと自ずとそこに辿り着くんだ。ただの悪趣味じゃないし、薄っぺらい雰囲気作りじゃない。
確かに、命ある者の中で、一番死に近いor近かったのは赤子だ。
そして生と死(あるいは無)がつながる場所は、子宮を置いて他にない。そう気づいた瞬間に考えが180°変わった。
特に印象的だったのは、ハートマンのムービーだ。
これを見て、デスストが「死生観の表現作品」なんだと思った。
僕はこれまで、こんなに死を表現した作品を知らない。
こんなに死生観を叩きつけられた作品も知らない。
見事にゲームとして、あるいは映像作品として作り上げてしまったのがデスストだ。
この一点においても傑作だと言い切りたい。
不満点
クセのある操作
デスストの操作感は快感とは言えない。
荷物を背負ったサムはすぐよろけるし、方向転換も面倒臭い。
でもそれは、”敢えて”そうしているのだと思う。
歩くことが不便だから、運搬することが面白くなる。それは全面的に同意だ。
でも、僕の不満はそこじゃない。
遊んでいて一番ストレスだったのは、登り動作。
BTに襲われてる時や雪山が特に顕著だった。
小さな段差はオートで登るにしてもよかったなぁ。
ボタンの長押しで小or大登りの切り替えなんだけど、緊迫した場面だと誤動作が連発してしまった。
単に僕のゲームセンスのせいかもしれないけれど、特筆しておきたかった不満点だ。
くどい演出
小難しい設定だからこそ、お話はシンプルに。演出はわかりやすく。
きっと、小島はそういう風にゲームをデザインしてくれたに違いない。
確かに雰囲気だけでも楽しめるゲームだ。僕の理解だって浅いのかもしれないけど、でもすごく楽しかった。
それを補うように作ってくれた演出が、少しくどくてストレスだった。
特にパパ周辺だ。プライベートルームに行くのが億劫になるレベル。ほぼ毎回回想挿入はやりすぎ。
ムービー的な演出だけじゃない。全3回あるパパ戦も同様だ。ここをどうにかしてくれというのは、贅沢なのだろうか。
だるいTPS要素
不満点に書くか迷ったが、一応。
このゲームの戦闘はオマケだ。特段楽しいわけではないけど、つまらないわけじゃない。
というか、このゲームは運搬が楽しすぎるのだ。モノを運びたいのに戦闘を強要されるシーンがある。
難易度HARDだったからかもしれないけど、めちゃくちゃやられてしまった。
特に上の二つは物語後半だ。続きが気になりすぎた僕にとって、TPS要素で邪魔されるのはとてもストレスだった。かといって、ラスボスで戦闘がないのも寂しい。なんとわがままなやつなんだ。
総評
僕はサムが大好きだ
このゲームは死体に始まり、死体に終わる。
大切な人を失ったサムが、人を、大陸を繋ぐ。
作中で一番繋がったサムが、一番大切なものを捨てるのだ。
僕は最初からアメリが好きじゃなかった。というか胡散臭かった。
僕のヒロインはママーかフラジャイルだ。アメリにキャラクターとしての魅力を感じない。
それでも、このシーンはダメだった。
撃てなかった。撃てなすぎた。サムが寂しすぎて。
じぶんの分身であるサムがこんなに悲しんているのを見て、涙が止まらなかった。
このゲームが残酷なのは、まだ僕(サム)から奪おうとすることだ。
ダメだよ、ルーはダメなんだ。ルーだけはダメだ。
これまでどんなことも許してきたけど、ルーだけはダメなんだ。そこを容赦なくぶっ込んでくる。小島ァ!!!
怒涛のエンディングを終え、フラグはほぼ回収し切ったと思って、僕は放心してた。
心を空っぽにして、ムービーを楽しんでいた矢先にこれだ。なんなんだよ、何か悪いことした!+!?!?!!?!なんでこんなことするのさ!!?!?!?!?!!!!!!!
エピソード13までで、デスストがくれたゲーム体験は完璧だった。
というか、予想の遥か上をいった。大満足だ。
それなのに、最後の最後に抉られた右ストレートが、一生忘れられないモノにしてしまった。
確かに、すごいゲームだ。
主人公とプレイヤーが分離していて、押し付けられたストーリーを見せられてもなお、まるでじぶんのことのように考えてしまう。
悪意ある言い方をすれば、全部ただの押し付けだ。映画にゲームプレイの要素を付け足しただけなんだ。
でも、それだけじゃ得られない没入感や体験がある。まるで僕が本当に経験したかのような満足感があるんだ。デスストは本当にすごいゲームだ。
こないだ、遠出する用事があった。
高速道路を飛ばしながら、なんとなく景色を見ていた。外は晴れていた。
「逆虹ないよな……?」
気がついてハッとした。これは病気だ。デススト病だ。山を見れば登れるか考えてしまう。それくらい取り憑かれてしまった。
一生懸命レビューを書いたつもりだ。
でもきっとデスストの魅力はあんまり伝わってない。
敗北感だ。プレイし終わってもまだ小島に負けるのか。
ああ、すげぇよ。本当にすげぇゲームだ(絶句)
最後に、僕にデスストを薦めてくれた親友に感謝を。
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