第59話『約束と油断』

 意外と本当のことなので、少し気をつけて見てみると、水が吹き出す噴水の水が、二つの方向に分かれる現象を目にすることができます。
 これは、その噴水の周辺で、何かの約束が行われた証拠なのですが、それはあくまで世界の法則の中でということなので、からずしも人間同士の約束が取り交わされたものを、勝手に映し出しているということではないので、注意してください。
 ただ働き続ける昆虫の様な、心のない法則同士の約束であれば、何ら問題はないのですが、これが人間同士の約束の場合には、なかなか一筋縄ではいきません。
 互いの約束が正しく行われ、それぞれが何も損なうことなく約束を守り続ければ問題は起きないのですが、そもそも人は純粋な法則とはかけ離れた存在なため、変転しない方の人間が思ったようにならない目に会い、その約束では何も得られないままになってしまうといのが、普通です。
 これは、約束が互いにひとつのことを分かち合っているという、根本的な誤解が原因です。
 人は、法則がひとつのことを分かつように、人間同士で同じものを分かつことができないのです。
 できないばかりか、できると信じていることに人の大きな油断があり、それを知って実行することは、なかなか難しいのでした。

この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?