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毎朝球児が素振りをしている。


出勤しようとドアを開けると、高校球児が素振りをしている光景に出くわす。
朝練かな。いいなあ。

高校生ってなんて瑞々しいんだろう。
きっと大学生が素振りをしていても、何とも思わないのだけど。
彼が高校生というだけで素敵な光景に見える。 

高校生活は、大人でも子どもでもない特別な3年間だ。
危ういバランスにある彼らの存在に、惹かれるものがあるのかもしれない。

高校球児とくれば、夏の甲子園を連想する人が多くいると思う。
(なぜか春の選抜はそうでもない。ふしぎ。)
かく言う私もその一人。
彼らの戦いっぷりには、いつも心を打たれるのだ。

炎天下、ひたむきすぎる全力のプレー。
一回負けたら夏が終わる、選手の息づかいまで聞こえてきそうな、ぎりぎりの緊張感。
9回からの大逆転劇や、有名高校の初戦敗退、予想だにしなかった筋書きのないストーリー。
敗者たちの流す涙、その健闘を称える勝者たち。
彼らの弾けんばかりの青春を目の当たりにすると、出身地や高校に関係なく、どの学校でも応援したくなるし、ときには感動して涙してしまう。

あんなにも何かに一生懸命になることって、今の私にあるかなあ。
仲間との絆とか、一つのことにわき目もふらずに打ち込むとか。
もう戻らない青春の日々に思いをはせる。
大人になるって、昔はもっといいことだと思っていた。
テストがなくていいなあ、自由でいいなあ、とか。
そんな単純なことしか考えていなかったけれど。
なぜだろう。
なんの根拠もなく、「今の自分より更にいいものになれる」のだと確信していた。
高校生は謎の「無敵感」を持っているんだよなあ。
当時の自分になんだか申し訳ない気持ちになってくる。
すいません、こんなんなっちゃって。

毎朝欠かさず素振りに取り組む球児のまぶしい姿に、ちょっぴりノスタルジックになりつつ。
高校生のときより「いいもの」になったはずの私は、今日も通勤電車に揺られるのであった。


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