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【第3回】日本の会社は「生え抜き至上主義」 

長年にわたり、日本経済が停滞してきた原因のひとつとして指摘されているのが、「閉鎖的な労働市場」です。

周知の通り、戦後の日本の高度成長を支えてきたのが、「終身雇用」と「年功序列」に基づく仕組みでした。

一旦新卒で就職してしまえば、その後は会社が面倒を見てくれるという「暗黙の了解」が、転職する必要のない環境を醸成していた訳です。

そこで、昨今は労働市場を流動化すべく、「転職しやすい環境の整備」が真剣に議論されるようになります。

では、個人の立場から見た転職市場はどうなっているのでしょうか。一般論として、日本人の転職に対する意識は、特に若手を中心に高まっています。

その意味からすると、状況は望ましい方向に向かっていると言えます。しかし、転職した後の当人が置かれる立場を見る限り、話は一変してしまいます。

かなり前の話になりますが、私が初めて転職した際に、「おめでとう!本当によかったね」と、心から祝福してくれた人は極めて少数でした。

まして転職先が名もない会社と聞くと、口にこそ出さないものの「何でまたそんな会社に。お前正気か?」と言いたげな空気も伝わってきます。

ところが、転職先が大ブレークして一躍有名企業の仲間入りでも果たすと、今度は手のひらを返したように「お前の会社、すごいね!」となるのです。

どうも日本人の根底には、「有名」で「一流」な「大きい」会社は「良い」という価値観があるようです(分かりやすいと言えば、分かりやすいですが)。

裏返すと、日本では一旦有名な会社に入ってしまえば、その会社にいることに価値があって、そこで何をしているかは「二の次」であるとも言えます。

直近の話ですが、日系企業の採用責任者と求人に関するミーティングをした際、マネージャー職に応募する候補者の「転職回数」の話になりました。すると、その責任者いわく、

転職回数は、多くて1回まででお願いできますか?実は、面接する幹部が皆生え抜きでして、転職の必要性が根本的に理解できていないんです」

今日、日系企業のトップや幹部クラスの大半は、新卒で入社した「生え抜き」で占められており、その傾向に変化の兆しは見られません。

社内には多様性を排除する保守的な「企業風土」が色濃く残っており、その結果、転職組が日の目を見るケースは「極めて稀」です。

従って、日本における「生え抜き至上主義」は、本音の部分では、もうしばらく続くと考えたほうが無難でしょう。

外資系やベンチャー系企業などにおいてはその限りではありませんが、その場合は「他のリスク」を想定した上で、対策を講じる必要があるのです。

     次回につづく(毎週月曜日若しくは火曜日に投稿予定) 

(本文は、弊著『四十歳を過ぎて初めて転職の二文字が頭をよぎったら読む本』<ブイツーソリューション>より一部抜粋編集し、シリーズ化したものです)

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