アルメニア生活記7🇦🇲
ナゴルノ=カラバフでの生活を終えた私たちは次の町に向かう事にした。正確には町と言えるほどの場所ではなく、村といった方が正確な場所かもしれない。朝早くにナゴルノ=カラバフを出た私たちはゴリスという街に向かった。しかし、目的地はゴリスではない。そこからさらに山の上に向かった先にある「タテヴ」と呼ばれる村だ。
ゴリスまではあっという間についた。「タテヴ」に行く目的は世界一長いケーブルカーに乗るためだ。ギネスにも認定されたというそれに乗ってみたかった。いや、乗ってみたかったというよりは近くを通るし、乗ってみるか。くらいの気持ちだったかもしれない。
何はともあれ、実際に向かう事にした。しかし、山奥にあるということもあって、アクセスが非常にわアクセスが非常に良くない。なんせゴリスまで到着したのは良いものの、そこからまだ30㌔は移動が必要だ。公共交通機関はなく、タクシーの一択。1人だったら、間違いなく来ない場所だった。近くにいたおばちゃんに料金の相場などを聞いて、チェックした後、タクシーの運転手と交渉開始。やはり、どの国でも同じで、メーター制を採用していない国は最初は吹っかけてくる。しかし、事前の調査のおかげで、すぐに料金は落ちた。しかも、びっくりするほど簡単に、素早く。だったら、最初からそういってくれと言う感じだが、そこは人間の欲なのだろう。もしかしたら、この料金で乗ってくれるかもしれない。そんな気持ちがある限り、この交渉制のタクシーのぼったくりは一生なくならないのだろう。
私たちは無事にタクシーに乗り込み、ケーブルカーのある場所まで向かった。前に進むたびに緑の量が増えていく。やっとケーブルカーが見えてきた。これしか観光スポットがないような押し売り感が否めないが、観光客もそれなりにいた。
いざ目の前に現れた世界一長いケーブルカーは思った通りのケーブルカーではあったが、「世界一」と言うその言葉にだけ引かれて乗ってみる事にした。案外こういったところの料金は高い。タクシーで頂上まで行った方が安いと言うくらいだ。しかし、そこはやはり世界一。実際に乗ってみると、長い。15分以上は乗っていたのではないかと思うくらい長い時間乗っていた。景色は確かに素晴らしく、魅力的ではあるが、この先の人生でまた乗るかと言われたら、おそらく乗ることはないだろう。
ケーブルカーが頂上に着いた場所が今回の目的地「タテヴ」一言でいうのなら何もない村だ。しかし、それが良くて私たちはここに滞在する事になった。
無事に宿にも到着し、いざ今日のディナーを調達しようとするが、近くにはスーパーはおろか、小さな商店が2つしかない。あとはその辺に馬や牛がいるだけだ。商店の品揃えも豊富とは言えない。こんな場所が面白かったりする。あるもので、何かを作り出す。これこそ、日本をはじめとした先進国が忘れかけている、「生きる知恵」を発揮するタイミングなのだ。幸いにも、食に関しては最低限なものはあったので、購入しパスタを作る。しかし、ここでは全く英語が伝わらないため。ミルクが欲しいのに買って開けてみたら、ただの練乳なんてこともあった。いっそのこと馬でもやっつけて馬刺しを食いたいなんて思った。
ただ、それでも周りに広がる自然はここアルメニアでも随一だろう。何もしなくても楽しいのはこの自然のおかげだ。子供達も自然と遊んでいる。不便なら不便なりの戦い方があるということなのだろう。
夜になれば外は街灯ひとつない。これがとにかくすごい。星は美しく、気がついたら目の前に馬がいて、びっくりもした。何も見えない状況って本当に存在するのだ。真っ暗。家の明かりもない。月と星の僅かな光の中進んで行くのは冒険以外の何物でもないのだろう。
翌日「タテヴ」のもう一つの有名な観光地に向かった。それは教会だ。正直キリスト教圏内はどこもかしこも教会が観光スポットになっているため、飽きてはいた。しかしここは立地的にも非常に特殊な場所だし、ほかにやることもないので行ってみることにした。行くと言うが小さな村なので、徒歩数分の距離にある。実際目の前にするとそこには崖っぷちに立つ教会があった。
中に入れば、一気に空気が涼しくなる。そして天井が高く、色合いが少しブルーに見える。なぜかそこの居心地がよかった。単純に涼しいからなのか、天井が高いからなのか、理由は全くわからないが、何かしらの要因はあるのだろう。しばし、そこでのんびりした。
そこの世界はなんとなく白黒の世界にも見えていた。これを言葉で表現するのは非常に難しいが、人間ばかりが色のついた世界に見える。時間に置き去りにされてしまったような感覚。そこがここの魅力なのかもしれない。私たちはその場を後にした。振り返ると、決して白黒ではない世界が確かにそこにはあった。
少し離れた場所に行けば牛も馬もいる原っぱがあった。そこがなぜか一目で気に入り写真を撮る事に。夢中になりすぎて気がついたら横になっていて、服は泥まみれに、それでもその瞬間は「楽しい」の一言だった。体が痛むのでよく見れば大量の蟻が私に噛みついてるではないか。極めつけは股間まで噛まれた。とんでもなく痛かったが、それもまた面白かった。
この日もまた、何もない商店に行き、晩飯を調達するのであった。