アルメニア生活記8🇦🇲
何もない村「タテヴ」しかし、それが最高に良い村でもある。1日の予定は早く終わってしまう。それほど何もない村なのだ。ではなにをするか。そう。自然の中でボーッとするのだ。それが最高に気持ちがいい。日本人が忘れかけている感覚を呼び覚ます。と言えば、言い過ぎかもしれない。なんせ、私はただの旅行者だ。遊びの延長線上にいるのだから。
さてそんな村もとうとう去らなくてはならない。いつまでものんびりしていられる程、余裕はないのだ。て事で、この村を出る事に。世界一長いケーブルカーを背にタクシーでゴリスまで戻る。残念ながらタクシーを使ったほうが安いと言う事実。正直あのケーブルカーには2度と乗らないだろう。そんなこんなでゴリスに到着。しかし、ここで問題発生。エレバン行きのバスがなんと満席で乗れない。しかも次の便は明日になると言う事態。
選択肢は3つ。ここに一泊するか、タクシーを使うか、それともヒッチハイクか。ヒッチハイクは物理的に厳しい。なんせ3人+大量の荷物。なかなか乗せてもらえないだろうという結果に。ゴリスの宿を調べてみると、高い。ってことでタクシーを使いました。タクシーと言っても話しかけたおっちゃんの知り合いが送ってくれるみたいで、相場よりはほんの少し安く、一応ベンツに乗れた。
4時間ほどの道をかっ飛ばす兄ちゃん。事故に対する恐怖心はないのか、運転中も携帯をピコピコ、電話も何度もかける。この辺では当たり前の光景なので見慣れてしまってはいたが、今になって考えるとやはり怖い。日本のドライバーはかなり安全に見える。それでも事故があるのが現実ですが。
あっという間にエレバンに到着し、宿を確保。すでに時間が遅かったため、食事をして今日は終わり。
翌日は連日の観光や移動を考慮してオフになった。宿を変え、私は1人1番安い宿へ移動。そんな日には美味しいものを食べたくなるのが人間。近くのスーパーへ行き、ありったけの食材を買い、自炊する。しかし、インターネットに書いてあったキッチン完備をいうのがこれまた酷いもので、地下に存在するそれは、いま現在誰も使っていないだろうボロボロで真っ暗な倉庫のような形。洗い物もできるのかどうなのかというレベルの中で、様々な調理器具を探し出し、洗い、使う。汚いものにもだいぶ慣れた。大きな鍋があったのが唯一の救いで、今日はやってやろうと、1人フードファイト。パスタ750gにトマトや玉ねぎ、様々な具材を掛け合わせ、総重量1キロ程度の飯を完成させた。もちろんそんなものが入る皿なんて置いていないので鍋ごと平らげる。1人で黙々と食べる姿は、奇妙なものに見えただろう。部屋に戻ると、同部屋の中国人が、いきなり翻訳アプリで、「あんなに食べる人は初めて見たよ」と挨拶も無しに笑っていた。私にとっては最高の褒め言葉だった。
そんな彼は何をしにきたのかよくわからない人物であったが、一生懸命翻訳を使って話しかけてくれた。どうやらアルメニアで何か問題が起こったらしく、英語も全く話せないのに、裁判所やら弁護士やら、何かと動いたらしい。しかし、日本の事については非常に興味を持っていて、食が特に素晴らしいと絶賛してくれた。将来は日本にレストランを展開したいとまで言っていた。しかし、そんな彼も見た感じ40は軽く超えているだろうおっさんだ。いつか会えることを楽しみにしている。
翌日はエレバンからほど近い修道院に向かった。ここでもまたバスに乗れないという事態に見舞われたが、最終手段のタクシーに。意外と安く済んだ。しかも、3人揃って、教会には飽き飽きしていたので、パッと見て、パッと帰るという極めて効率のいい観光になった。そう。長期旅行のネックは、近い国や、宗教が同じところは概ね観光地が似たものになってしまう。特に陸続きで隣り合った国なんかは少なからず、隣国の影響を受けているので、その姿、形、ましてや食べ物まで似てしまう。これがネックではある。それぞれの地域には何かの境界線があり、それが宗教なのか、民族なのか、人種なのか。それぞれによって違うが、何か変化がないとどうしても飽きてきてしまう。ジョージアもアルメニアも観光地という観点から言えば、教会や修道院ばかりで同じに見えてしまった。
そんな簡単に見た修道院から帰宅すると、本日は何を食べようかとワクワクする自分がいる。もはや、料理をしにアルメニアまで来た旅行者と思われても仕方ないくらいルンルンでスーパーに向かった。宿代をかなり抑える事に成功していたので、本日も豪華なメニューにしようと1人企んでいた。今日の目当ては「肉」
スーパーの中でひときわ輝く牛肉にロックオンした。300g。控えめに。一応健康にも気を使っているので、本日は炭水化物を抜きにして、野菜を大量に購入。何かの葉っぱに、玉ねぎに、ニンニクにバターに。ここのスーパーでは今後の旅でも重宝する事になるスパイスや醤油も手に入れた。
薄汚いキッチンでまた1人料理をする。とにかく何でもかんでも炒めた。そして、肉を焼く。そう。待ちに待ったステーキだ。ジュージューという音と共に、徐々にこちらに向かってくる最高の匂い。たまらない。最終的にはやはり、全てが収まる皿なんてなかったため、大きな中華鍋が皿代わり。久しぶりに食べたステーキは最高の味だった。エレバンはやることが無い分、そんな事に時間をかけた。
1人でもフードファイト。いや1人だからこそ、戦えるのかもしれない。そのくらい自由なのだ。楽しいのだ。私は満腹を通り越した呼吸をするのも苦しい状態の中眠りに落ちた。
もちろん、満腹になった日の夢はハッピーだった。