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美容室の開業 夫が事業に失敗しても、妻は開業融資を受けられるのか?

 とある女性の美容室の開業支援をさせて頂いた時、『この方のご主人、どうやら事業をされているようですが、このことはご存知でしたか?』かつて、金融機関から言われた言葉です。最初は何のことか分かりませんでしたが、金融機関からの情報で初めて発覚しました。結論から言えば、融資は受けられなかったのですが、その理由についてご紹介します。

〇女性の美容室の開業相談でした。
 ご主人はサラリーマン。奥様は美容師として長年サロンで働いてきた。そろそろ自分のお店を持ちたい。ご主人も自分の夢を応援している。自己資金はそれほど多くはないが、長年積み立ててきた貯金がある。そのお金を自己資金として融資を受けられないか?というご相談でした。
 ご主人は何をされていますか?という質問は何度もしました。ご主人が美容室の開業にどれくらい理解があるのか、創業融資という大きなお金を借りるのに、どれくらいの理解があるのか。ご夫婦で、ご主人がお勤めの場合は、こういった前提がしっかりと確認させていただきます。この時は、ご主人の会社名、ご主人の源泉徴収票も確認し、女性の話の内容も特に不一致を感じる点は全くありませんでした。

〇金融機関から言われたこと
 何の疑いもなく融資申請を進めておりましたが、『この方のご主人、どうやら事業をされているようですが、このことはご存知でしたか?』と、金融機関から連絡がありました。
 「はい、サラリーマンをされており、勤務先からの源泉徴収票も確認しましたが、、」とお伝えしましたが、どうやら、その源泉徴収票はニセモノだったようで、ご主人が美容室を何店舗か経営しており、奥様は、そのお店の店長として働かれていました。

〇ご主人がお店を経営していると融資は受けられないのか?
 そんなことはありません。配偶者が事業を経営している、もしくは、法人の役員である場合には、その経営している会社、役員をしている会社の経営状況の確認が必要となります。事実として奥様がご自身として美容室を開業したい、という前提で、ご主人の経営する会社が財務的に何も問題ないのであれば、美容室を開業するための創業融資を受けることは可能です。ただ、お金を貸す金融機関としては、万が一、ご主人の経営する事業が資金難に陥っており、自分の会社では既に融資を受けることができず、それならば、と、奥様を独立するという話にして、創業融資を受けようとしていないか?は可能性として疑ってきます。結果として、ご主人がお店を経営している場合は、その事業の状況次第ではお金が借りられない可能性も出てきます。

〇なんでバレたのか?
 経営状況が難しい状況かどうかは、金融機関の信用情報を見ればすぐわかりません。資金的に厳しい状況だと思いますので、高い確率で公庫か、民間銀行で融資を受けているはずです。場合によっては、カードローンなども利用しているかもしれません。また、借入の返済にも遅れが発生していることも可能性としては高いです。こういった情報は金融機関は簡単に調べることができます。ただ、ご主人の源泉徴収票が偽造されていましたから、その確認をどうやってやったのか?までは詳細は分かりませんが、融資を受ける場合には家族構成を確認し、配偶者の仕事の状況は必ず確認ポイントとなってきます。ここで発覚したと推測します。

〇融資を悪用は絶対にしてはいけない。
 今回は、私自身も反省すべき点がたくさんありました。どんな聞き方をしていたら、気づけたのだろうか?と考えることもありますが、どちらにしても配偶者の状況、収入の状況は融資申請のご支援をするにあたっては慎重に確認するようになりました。疑っているのではなく、融資審査では確認されるポイントとして、最初から問題がないような状態を作っておくことが大切です。万が一、融資が受けられたとしても、それは融資を悪用としている訳ですから、一括返済の対象となります。資金繰りが厳しいどころの話ではありません。大変な状況を何とかしたい、しなければならない状況というのは分かります。ただ、経営者の取るべき選択としては大きな間違いです。融資を悪用してはいけません。

美容室専門税理士 中嶋 政雄

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