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2017年81冊目『アルカイダから古文書を守った図書館員』
タイトルから想像するよりも何倍も面白いです。
アブデル・ガデルさんという西アフリカ・マリ共和国の中部のトンブクトゥという街にいる図書館員の話です。
ただ、図書館員というのは単なる職種であり、実際は社会企業家であり、16世紀からの古文書を守ったスーパーヒーローのノンフィクションの話です。
映画になってもおかしくない素晴らしい話です。
かつて、ヨーロッパの人たちは、アフリカの黒人は文化がなく、白人よりも劣っており、奴隷になるべくしてなった種族であるという偏見を持っていました。
劣っていたとしたら、奴隷になっても仕方がないという理屈も変です。
しかし、それ以上にアフリカのマリには16世紀から多数の古文書がありました。
その分野は、歴史や文化は言うに及ばず、科学や星、農業や数学など多岐にわたっていました。
つまり、アフリカには文化がなかったなどというのは大きな誤解で、実際は、16世紀以前からその時代の最先端の文化・科学が繁栄していたのです。
そして、マリの部族の名家は、その本を写本したり、豪華な装飾をして、その内容や量や豪華さを争い自慢していました。
ところが、幾度とない内乱や征服などで、古文書は散逸し、各部族や有力の家が隠し持つようになっていました。
隠し持っていた本は、保管が良くないものが多く、虫に食われているもののも少なくありませんでした。
そこで、都市に図書館を作り、古文書を保管するプロジェクトが動き出しました。
ところが、各部族は、以前から古文書をだまし取られた経験があるので、このプロジェクトの活動を信用しません。
その時に、このプロジェクトへの参加を依頼されたのが、冒頭のアブデル・ガデル青年でした。
ガデルは過去10年間で8000冊の古文書を集めたこのプロジェクトのスピードを加速的に高めることに成功しました。
1年目に1万冊、数年で10万冊を集めます。
従来のプロジェクト員が大型車に乗って部落に訪れ、かつて本を奪われたことを彷彿させたのとは異なり、馬やラクダで現地を訪れ、しかも適正な値段を提示し、買い取ったのです。
これだけではありません。
様々な国や団体に現状を伝え、たくさんの資金調達にも成功します。
そのような矢先に、この図書館があるトンブクトゥの北部までアルカイダがその勢力を広げてきたのです。
彼らは像や遺跡を次々に破壊しています。
そのような状況で、ガデルは本を安全な場所への移送を決意します。
しかし、本を運ぶ箱もありません。
安全な場所への通路の途中にはいくつもの関所があります。
しかも、刻一刻と状況は変わります。
そのような状況の中で、すべての古文書の移送を決意します。
すべてとは、図書館が保管している本だけではなく、その地域にあるすべての本、その数37万冊。
それを、仲間と一緒に、何度にも分けて、ルートも変更しながら移送するのです。
途中、何度か危機が起きます。
それも、様々なつてを使い、解消します。
そして、最終的に37万冊を1冊の破損もなく、移送に成功するのです。
何度も何度も手に汗握る場面があります。
すごい方の、すごい話です。
きっと、神様からこの任務を遂行するために生まれてきた方なのだと思います。
タイトルから想像するよりも、何倍も何倍も面白い本です。
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