2016年 28冊目『宇宙からいかにヒトは生まれたか 偶然と必然の138億年史』
帯にビッグバンから未来まで。宇宙・地球・生命を通史で読める初めての1冊とあります。
読みやすくて、分かりやすい本です。
所々のメタファーだけ分かりにくいのがあったのだけが玉に瑕ですが。
まず、138億年の歴史を5つに分類し、5部構成にしています。
第1部 宇宙の誕生(138億年〜)
第2部 地球の形成(45.5億年前〜)
第3部 細菌の世界(40億年前〜)
第4部 複雑な生物の誕生(19億年前〜)
第5部 生物に満ちた惑星(5.4億年前〜)
それぞれの部をいくつかの章に分解して全体で20章構成にしています。
それぞれの部のポイントを書いておきます。(長文です)
第1部 宇宙の誕生
第1章 たくさんの宇宙
・素粒子を点ではなく、ひも状に広がった状態だと考えるストリング理論が成立するならば、宇宙空間は3次元ではなく10、11次元になるらしい。
この理論が正しいとするならば、我々が認知できる3次元は伸びいていて、残りの次元は縮んでいることになる。
その中で私たち生命が存在できるような宇宙はほんの一部だと考えることができる。
第2章 ビッグバン
たくさんの宇宙の中の1つとして、私たちの宇宙は誕生した。
誕生しておよそ10のマイナス36乗秒後に一気に膨らみ始めた(インフレーション期)。
そして10のマイナス34乗秒後に、膨張が急激に減速する。
その際に莫大なエネルギーが放出され爆発した(ビッグバン)。
しばらくすると温度が少し下がり、電子などの素粒子が生まれ、陽子や中性子が生まれ、原子核を形成した。
宇宙が誕生して38万年ごろ、温度は3000度くらいまで下がり、電子は勢いを失い、原子核につかまり始めた。
すると光子も電子に邪魔されることなく、まっすぐ進むことができるようになる。つまり、星空が見えるようになった(宇宙の晴れ上がり)
・第一世代の恒星は、水素、ヘリウム、リチウム、ベリリウムという軽い元素だけでできていた。
しかし、内部の核融合や超新星爆発などにより徐々に思い元素が生成されてきた。
・太陽系が誕生したのは92億年後なので、最初から生物を作るための元素が揃っていた。
第3章 太陽系の誕生
・地球と太陽の距離を1とするとそれぞれの惑星の距離は(4+3×2n乗)÷10で表される。nは整数。(ティティウス・ボーデの法則)
・原始太陽系星雲のかなりの部分は、ある時期、気体になるぐらい高温になったらしい。
それが冷えてきて最初に固まった物質をCAI(カルシウムとアルミニウムに富む部分)と呼び、その年代測定により、太陽系ができたのは46億年前と推定できる。
第2部 地球の形成
第4章 地球と月の誕生
・原始太陽系星雲では、小さな天体同士がぶつかって直径が数km程度の微惑星になった。その微惑星同士がぶつかって天体を作っていた。
・太陽の周りを8つの惑星が同じ向きに公転している。原始太陽系星雲が回転していた向きを反映していたと思われる。その中で目立つ例外は3つ。理由はわからない。
1 金星の自転が他の惑星と逆向き。
2 天王星の自転軸は横だおし。
3 海王星の最大の衛星トリトンは、通常とは逆向きに公転している。
・月は火星と同じくらいの大きさのティアと言う原始惑星が地球に衝突してできたと言うジャイアントインパクト説が有望。
第5章 地殻の形成
・初期地球は数1,000度あったと思われる。つまりマグマオーシャン。その後、重い金属は重力で沈み核となり、軽い岩石は浮かんでマントルや地殻になった。その沈み込む際に大きな位置エネルギーを開放し、大きな熱源となった。結果、地球の内部は熱いのだ。
・地表温度が下がるとカンラン石の地表ができた。しかし、1000度程度になると更に軽い玄武岩が形成されるようになったと考えられる。
第6章 大気と海の形成
・地球は水の惑星と言われるが、全質量のわずか0.02%に過ぎない。
・微惑星は重力が弱いので、期待を引きつけて大気を持つことはできない。月程度の大きさになると、周囲に充満していたガスを引き寄せ、捕獲して、それから大気を作ったと考えられる。
・初期の地球は、8割以上が水蒸気で、2割近くが二酸化炭素であったと推定できる。地球が冷えてくると、水蒸気は液体の雨になる。
・44億年前の地球は気圧が桁違いに高かったので、200度であっても水は液体であった。44億年前から水があったと主張する人たちもいる。確実なのは38億年前。地層から発見されている。
第3部 細菌の世界
第7章 生命の誕生前夜
・海は少なくとも38億年前に存在し、生命の痕跡も38億年前に見つかっている。という事は40億年くらい前に生物が誕生したと思われる。
・生物の遺伝子はDNAでできている。DNAをもとにRNAを合成し、DNAの情報をRNAに移す。そしてRNAの情報をもとにタンパク質が合成される。このタンパク質が生命現象の主役である。
・このDNA(情報)→RNA(情報)→タンパク質(生命現象の主役)という流れは、すべての生物が共有している。セントラルドグマ(中心原理)
・このセントラルドグマの進化。つまり3つのプレイヤーの最初はどれか?が議論になっている。RNAが両方を作った(RNAワールド仮説)、たんぱく質→RNA→DNA(たんぱく質ワールド仮説)。
第8章 生命の起源
・生命は浅い海で生まれたという説があった。あるいは地下で生まれたという説もある。しかし、現在、最も有力な仮説は「生命は深海の熱噴出孔付近で生まれた」と言うものである。
第9章 初期の生命
・すべての生物はただ1種の今日つ祖先から進化してきた。
・現在名前が付いている生物で200万種(半分は昆虫)。未知もいるので1000万種?
・地球上のすべての生物はDNAを遺伝情報として使っている。(ただし、DNAは遺伝物質としてかなり理想的な分子。もしかしたら遠くの星の生物も使っている可能性がある)
・DNAの塩基3つとアミノ酸1つの組合せを遺伝暗号と言う。この組合せは何でも良かったと思われる。これもすべての生物が使っている。これが共通祖先の根拠である。
・すべての生物の最終共通祖先をルカと呼ぶ。(Last Universal Common Ancestor)
・ルカを最初の生物だと勘違いしている人がいるがそうではない。ルカ以外の生物もいたが、すべて絶滅した。
・現在の地球上の生物は3分類できる。1真核生物(細胞の中に核がある) 2真正細菌(核を持たない) 3古細菌(好熱菌など:核を持たず、細胞膜やたんぱく質の合成の仕方が真正細菌と異なる)
・ルカは好熱菌である可能性が高い。
第10章 光合成
・生命が生まれた40億年前から10億年程度、大きな進化はなかった。
・27億年前ごろ外殻の液体金属の移動により電流が流れ、その電流が磁場を発生させた(ダイナモ作用)
・この磁場のせいで、有害な放射線である太陽風がカットされた。
・これにより生物は深海から浅海に進出できるようになった。
・ラン藻が酸素発生型の光合成を開始すると、酸素耐性がなかった生物の虐殺(酸素ホロコースト)が起きた。
・ラン藻をはじめ、酸素耐性があったものが多数いて生き残った。
第4部 複雑な生物の誕生
第11章 真核生物の誕生
・およそ20億年前までは原核生物(核がない)しかいなかった。約19億年前に真核生物(DNAが核膜に包まれている)が出現した。
・原核生物は5マイクロメートル以下。真核生物は数十マイクロメートルから1ミリメートルと大きい。
・真核生物の発展はミトコンドリア抜きに語れない。
・ミトコンドリア自体も元々細菌だったと考えられている。
・ミトコンドリアを持っていない真核生物は見つかってない。
第12章 多細胞生物の出現
・単細胞生物(=生殖細胞)+使い捨ての体細胞=多細胞生物
・真核生物は3つに分類できる。アメーボゾア、オピストコンタ、バイコンタ。
・多細胞生物生物の確実な化石は、12億年前の紅藻。
第13章 スノーボールアース
・遅くとも約12億年前には多細胞の藻類は出現していた。しかし、6億3500万年前から始まるエディアカラ紀まで多細胞生物の多様性は低いままだった。
・エディアカラ紀の直前、地球は2回全球凍結していた。
・全球凍結が終わった時に酸素濃度が向上し、競争相手のなかった多細胞生物はアバロン爆発と呼ばれるぐらい一気に多様性の高い状態に到達した。
第14章 カンブリア爆発
・ダーウィンはカンブリア紀以降多様な化石が発見され、それ以前にはあまり見つからないことに悩んでいた
・カンブリア紀は5億4100万年前から4億8500万年前までの時代。現在の動物門の4分の3がこの時代に出現した。三葉虫もこの時代。
・カンブリア紀に動物がいっせいに骨格を進化させた。動物を食べる動物が出たことで、食べる側もそれを防ぐ側も硬いボディプランを進化させていった。
・この時代に眼が出現した。当時の最大の捕食者はアノマロカリス。
第15章 生物の陸上進出
・最初に上陸した生物は細菌。
・生物が陸上に進出するには、太陽光(紫外線)を防がねばならない。
・酸素が増加したことで、紫外線と結合し、オゾンを作る。6億年前にオゾン層ができて、ようやく生物は陸上に進出した。
・私たちを含めて陸上で生活する脊椎動物は、ハイギョのグループから進化したらしい。
・水中で生活している時から足や肺はあったようだ。足は性交時に足を絡ませることで確率を高めるため。肺は水中酸素濃度が下がった際のリスク対策のためと思われる。
第16章 大森林の時代
・生物は進化の歴史の中で4回空を飛ぶ能力を獲得した。昆虫、翼竜、鳥、コウモリ。
・CO2⇄O2+C →光合成、←分解。つまり、植物が光合成→をしても枯れて分解されると、全て←に戻るので、酸素濃度に変化はない。
・この時代では、大森林ができて光合成→をして酸素が増え、植物が枯れても分解せず石炭になった。
・ペルム紀と三畳紀の間(PーT境界絶滅)に当時の96%の生物が絶滅した。
・原因は地磁気の乱れ(頻繁に逆転)が起き、太陽光が遮られ寒冷化。同時にシベリアで巨大マグマの噴火も起きたようだ。さらに海洋無酸素事変も数百万年続いたようだ。
第17章 恐竜の繁栄
・最古の恐竜の化石は2億3000万年前。それから6600万年君臨していた。
・現在では恐竜は活発な動物であったと考えられている。
・幾つかの恐竜は羽毛を持っていた。
第18章 巨大隕石の衝突
・白亜紀と古第三紀の間(KーPg境界)で10kmほどの巨大隕石がユカタン半島北部の海に落下した。これにより生物の大量絶滅が起きたと考えられる。
・恐竜も大打撃を受けたが一部は現在鳥類として生き残り9000種が生息している。哺乳類も一部が生き残り現在4500種が生息している。
第19章 哺乳類の繁栄
・白亜紀末の大量絶滅で哺乳類が生き残った理由は身体が小さかったからだ。
・寒冷化が進むと、内陸部の雨が減り、乾燥化が進み、森林は草原になり、低い二酸化炭素濃度でも光合成ができるイネ科植物が繁栄した。
・イネ科植物は成長点が根本にあるので葉先を食べられても回復できる。また土中のケイ素を吸収し歯を固くすることで草食動物から身を守った。
・サルの仲間である霊長類は北方獣類だが、4000万年前にはアフリカにも住んでいた。2000万年前、アフリカ大陸とユーラシア大陸が地続きになった。北方にあるユーラシア大陸に戻った類人猿がテナガザルとオランウータンに進化した。アフリカに残った類人猿がゴリラ、チンパンジー、ボノボとヒトに進化した。
第20章 人類の進化
・ヒトに至る系統がチンパンジーとボノボに分岐したのは700万年前。
・チンパンジーのメスは、いつでも性行動が可能なわけではなく、オス5〜10頭につきメス1頭ぐらいしかいない。取り合うためにオスの犬歯は大きい。ボノボではオス2〜3頭にメス1頭。犬歯は小さい。ヒトはつねに性行動が可能なのででオス1頭にメス1頭が成立し、さらに犬歯は小さく。メスの取り合いによる争いは穏やか。
・ヒトはチンパンジーと分岐した直後から直立歩行をしていた。地上の食べ物も食べ、それをオスが運搬するために両手が空いていた方が有利であったからであると思われる。
・ヒトは240万年前に石器を作り出した。その頃に脳が巨大化していく。
・一番脳が大きいのはネアンデルタール人で我々ホモサピエンスは2番目。
・約4万年前にシベリアでデニソワ人が絶滅。2万8000年前にスペインでネアンデルタール人が絶滅。1万7000年前にフローレス島でホモ・フロレシエスが絶滅。とうとうホモ・サピエンス1種だけになってしまった
最終章 地球と生命の将来
・今後の地球は数十年から数百年の単位では二酸化炭素が増加し、温暖化が起きる可能性が高い。数万年前から数十万年のレベルでは氷河時代が起き、寒冷化が起きる可能性が高い。しかし、数億年のレベルでは地球は確実に暑くなっていくだろう。
・おそらく10億年から20億年後に、太陽の高温化により、地球気温は上昇し、地表の液体は蒸発する。すると生命は存在できない。その後、数10億年たち地球は赤色巨星になった太陽に飲み込まれて消えていく。
あまりにおもしろかったので詳細に書いてしまいました。
読むのにかけた時間と同じくらい書くのにかかりました。
▼前回のブックレビューです。
▼新著『業績を最大化させる 現場が動くマネジメント』です。
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