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2022上半期facebookいいね!ランキング3位『巨大企業の呪い』

2022年 17冊目の読書レビューです。
松岡正剛さんの塾AIDAに通っているのですがそこの課題本です。

衝撃受けました。
この本の問題提起、それは貧富の差の拡大です。
アメリカでは1%の人が23.8%の所得を稼ぎ、30.8%の資産を所有しています。産業も一部の企業によって寡占化されました。

そして、問題は貧困だけにとどまらないのです。
独占企業が政治家と情報を支配し、庶民の自由を奪い、最終的に戦争になだれ込んだという歴史がある。だから独占禁止法が必要で、それをきちんとGAFAMに対しても運用することが必要。レーガン政権の頃から西側世界は新自由主義に転じ、今は行き過ぎの状態。その反動を予告しています

独占の弊害として取り上げられる事例が戦前のドイツと日本。大企業による独占が民主主義体制を脅かし、全体主義とファシズムを招来・助長させました。一方、戦後のアメリカでは、独占禁止法により、IBMやAT&Tに関する反独占の取り組みが新たな産業や企業を勃興させ、経済成長を促したのです。

寡占化の歴史を振り返ってみます。
1990年代から大企業の寡占化が進んだのは、独占禁止法をシカゴ学派が無力化したから。

英語で独占禁止法は、反トラスト法とも言います。トラストが19世紀にロックフェラーやカーネギー、モルガンなど多くの資産家を生み出しました。この時代は緩い規制の中で独占化をしていきました。

この動きを1890年、ルーズベルト大統領時代にアメリカは独占禁止法を制定。大統領はモルガンなどの独占企業の解体を進めました。

当時は経済活動の最大化のために独占は効果的だと考えられていました。競争を勝ち抜いた独占は社会的にも経済的にもいいものだとみなされていました。

今の風潮もそんな感じがしますよね。
しかし、ブランダイスはそうは考えませんでした。「良い経済と政治は個人に十分な自由とサポートを与えて、意味があり充実した人生を送るようにしなければならない」。独占はそれを実現するための自由を奪う。彼がJPモルガンの鉄道独占を阻止して最高裁判所判事まで上り詰めます。

ルーズベルトは「わるい独占」を叩きました。ルーズベルトの時代はそれでもよかったのですが、なにが「わるい独占」なのかの客観的な基準が必要となりました。

これをロバート・ボークとシカゴ学派が定義しました。シンプルに「わるい独占」は価格が上がる独占だとしました。シカゴ学派は新自由主義のひとつで、政府の規制は最小限であるべきという立場です。結果、独占禁止法が適用されて会社が分割されたのはATTが最後になってしまいました。
「価格が上がる独占は悪い」という判断基準はとても明確ですが、裁判までなったのがマイクロソフトで、それ以降はまったくありません。

シカゴ学派は、独占禁止法を換骨奪胎したのです。
マイクロソフトの独禁法裁判以降、様々な産業で寡占が進み、イノベーションを妨げているというのがティム・ウー(著者)の主張です。

実際、競合になりそうな会社をGAFAMが自由にMAしまくっています。GoogleはYouTubeを、FacebookもInstagramやWhatsAppを。スタートアップもGAFAMに買収されまくっています。買われるか、潰されるかだけなんですよね。

いまや政府による大企業に対する反独占の取り組みは低調となり、GAFAMなどの大企業が独占を深めています。これが世界経済全体の低調や格差拡大を招いていると言います。そして、この先に進むかもしれないのが戦前のドイツや日本で起きた民主主義体制が崩れていくのではないかというのが著者の見立てです。

ティム・ウーは打開するために提案をしています。合併の審査プロセスを改革して民主化することです。あとは、ヨーロッパから学ぶということです。

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