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2023年 49冊目『21世紀の楕円幻想論』

夢をかなえるゾウ』の著者の水野敬也さんが『サピエンス全史』以来の衝撃だ!と言っていたので手に取りました。

還暦を過ぎ、会社を畳む時に借金を一括返済を求められ、

家を売り

定期預金を解約し

全財産を失った。

同じころ

肺がんで右肺の三分の一を失った。

もう失うものがあまり残っていない。

売りものがないというのは、弱みでもあり強みでもある。

金が無くなり、体力が無くなれば自然と性格も変化する。

一日の変化が少なくなるように、変化したのである。

これを流動性の喪失というらしい。

まえがきは、このような話から始まりました。

全ての財産を失って身も心も軽くなったという著者の言葉、重いんですよね。

交換と贈与、無縁と有縁、自己責任と相互扶助。

著者は、これらを二項対立させるのではなく、制御し折り合いをつけることが大事なのだと言います。

そして本来そういうことができる人が「大人」なのだというのです。

「お金は大切なものだし欲しいものだけど、他にも大切なことがある。」

当たり前で陳腐な言葉のようですが、無縁と有縁の折り合いをつけるというのはそういう事なのでしょうね。

お金は

・交換を促進する道具

・関係を断ち切る道具

贈与関係

・交換を禁止すること

・関係を継続させること

近代化以前

・共同体モデル

・相互扶助モデル

・縁という夫妻関係でつながっている社会

近代化以後

・消費者モデル

・等価交換原理

・金銭的な負債関係を絶えず更新する社会

ルポ雇用なしで生きる スペイン発もうひとつの生き方への挑戦

→読んでみました。

若者のメルカリの使い方

・着た服をメルカリで売って、お金は置いておいて、他の洋服を買っている

→洋服の物々交換をしている

世の中には「有縁」と「無縁」の場が様々に形を変えて存在しています。

縁がなくても金があれば生きていけるのが「無縁」社会

宗教の場:許しの場

世俗の場:贖罪と許しがせめぎあう場

ビジネス:厳格な等価交換の場

お金は借りちゃダメなんだよ。お金というものは、もらうものなんだ。

※著者の友人の画家の言葉

最初の交換は

・呼びかけと応答

→アマゾンのジャングル奥地の未開のイゾラドとのコミュニケーション

 鳥や獣の鳴きまね→イゾラドも鳴きまね

ボートにバナナを積んで送る→イゾラドはボートに矢じりを入れて送り返してきた

我々の気持ちの中に都市的なものと田園的なものがあります。

どちらか1つではなく両方があるのです。

どちらかを選べと言われても、それはできない相談なんです。

この焦点がせめぎあうとき、折り合いをつけることがとても大切なことになるのです。

楕円が楕円である限り、それは、醒めながら眠り、眠りながら醒め、泣きながら笑い、笑いながら泣き、信じながら疑い、疑いながら信ずることを意味する

楕円も円とおなじく、1つの中心と、明確な輪郭を持つ堂々たる図形です。

円はむしろ、楕円のなかの極めて特殊な場合です。

にもかかわらず、ひとは真円の潔癖性に憧れる

真円的な思考は、楕円がもともと持っていたもう1つの焦点を隠蔽し、初めからそんなものは存在していなかったかのように思考の外に追い出してしまう。

真円的志向とは、すなわち二項対立的な思考であり、それは二者択一を迫ることです。

→ここから本のタイトルが来ていますね

貨幣により

全体給付モデルを採用していた時代の相互負債関係モラルから、

貨幣交換の時代の貸借関係のモラルへ180度の転換があったのです

具体的には

贈与は義務である

贈与に返礼してはいけない

贈与物を退蔵(隠し持つ)していはいけない

というモラルから

返礼を受けるのは当然の権利である

貸借関係は等価交換によって生産されなければならない

貯蓄は美徳である

というモラルへ変化した

さらにインターネットの発展が実現してしまった分断

貨幣:非同期交換を可能にした

  :劣化しない価値の担い手であった(そう信じられた)

貨幣交換:人々のモラルを180度転換した

インターネットメール:非同期的コミュニケーションを可能にした

インターネット技術:人類的なデータベースを可能にした

インターネット:新たな部物交換の場(フリマアプリ)をつくり、貨幣交換とは別の交換を可能にした

そして、一度グループに分断されると、もう他のグループとはコミュニケーションをしなくなる。

関心がない相手との回路は、断ち切ることが可能になっているツール=インターネット

必然的に同じ価値観をもった人間ばかりが集まりことになるのです。

インターネットの脅威に、もう少し敏感になる必要がある!

だから、楕円の柔軟性を取り戻す必要がある!

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