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2023年 93冊目『動物たちは何をしゃべっているのか』

ゴリラの大家の山極寿一先生(京大前総長)とシジュウカラの言葉の大家(文法を解明した:動物言語学者)の鈴木俊貴先生の対談の本です。

なぜ手に取ったのか覚えていないのですが、松岡正剛塾で意識と情報のAIDAについて考えているので、とても参考になりました。

近年まで動物は複雑な思考ができないと考えられていて、きちんと研究されていなかったそうです。

ところが研究してみると、あら不思議。
複雑な思考やコミュニケーションをしていたのです。

これは乳幼児も実は賢い。
しかも、ある部分では大人よりもすごいって話と同じです。

そんな話が満載で、とても面白かったです。

■シジュウカラの言葉には文法がある

シジュウカラの言葉に文法があることを2016年に発見した鈴木先生。

どうやって文法があるのかを証明したのかが興味深いのです。

シジュウカラは「ピーツピ・ヂヂヂヂ」と鳴くことがあります。

これは天敵が出た時に鳴くのです。

鈴木先生は、警戒しろ!(1羽でいると襲われて危ないので)集まれ!と2語からなっていると仮説を立てます。

これを3段階で文法の有無をチェックするのです。

①順番 

1)ピーツピ⇒ヂヂヂヂという順番と

2)ヂヂヂヂ⇒ピーツピという順番で

シジュウカラの行動が変わるかを確認したのです。

1)だと警戒するのが、2だと警戒しないのです。

②外国語を理解できるのか

シジュウカラとコガラが混じっている群、混群に着目したそうです

シジューカラでは集めれがヂヂヂヂなのですが

コガラは、ディーディー

そこで

ピーツピ・ヂヂヂヂを

ピーツピ・ディーディーに変更したところ、警戒して集まってくるのです

水ちょうだいを

ウォーターちょうだいでも伝わるような話です

そして、

ひっくり返すと

ディーディー・ピーツピにすると何もしないのです

③併合(2つの語を1つのまとまりとして認知しているのか)

これは

1つのスピーカから連続してピーツピ・ヂヂヂヂとした場合と

2つのスピーカーで別々にピーツピとヂヂヂヂを伝えて場合を比較したのです

前者は警戒して、集まってくるのですが、後者はそうではないのです

この3つのステップでシジュウカラに文法があることを確認したのです。

2016年、人以外の動物ではじめて文法能力が確認された論文になったそうです。

■嘘をつく動物たち

シジュウカラは混群で、大きな鳥と一緒にいると、自分たちがえさを取れない。

だからピーツピ・ヂヂヂヂと鳴いて、大きな鳥を警戒させて、その間に餌を食べちゃう。

ヒヒの子供は固い地面の下にある若い芽を食べたいんだけれど、地面を掘れない。

そこで、若いヒヒが地面を掘っていると、その周りで泣き叫ぶ。

すると母ヒヒがやってきて、若いヒヒを追い払う。

その間に、若い芽を食べちゃう

チンパンジーは心の理論を持っている。弱いチンパンジーだけにバナナのありかを教える。

直接取りに行くと、強い個体に取られてしまう。

そこで、弱い個体はバナナの無い方に歩いていき、強い個体が目を離した瞬間にバナナのところに行き、食べちゃう。

■過去の話を説明するゴリラ

ゴリラに手話を教えると、学べるそうです。

話せるというには、考える能力とそれを言葉にして発信する能力の2つが必要です。

人以外の類人猿は後者の能力が低いんですね。

で、ある若いゴリラに手話を教えたところ、上手に人とコミュニケーションできるようになったそうです。

すると、自分の母親が密猟者に撃たれて、首を切られた事。

自分も捕まって縛られたことを説明したそうです。

驚きですよね。

▼前回のブックレビューです。


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