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ハイエナに会いに行く。~バンガロール~ハンピ~

これは野生動物を見てみたいという思いから始まった旅である。

動物園とは違う、明日死ぬかもしれない環境の中で生きる野生動物たちのたたずまいとはどんな姿なのだろうか。

そんな時、アフリカに野生動物を見れるツアーがあると知った。

どうせアフリカまで行くのなら国伝いに日本からアフリカまで行った方が面白いのではないか

それになるべく安い移動手段を選べばアフリカまでの航空代金とたいして変わらないのではないかという思いから、陸路もしくは格安航空券を使って旅をしながら目的地まで行こうと決めた。

日本を出発して約一ヵ月、今インドのバンガロールからハンピという小さな村に移動しようとしている。


バンガロールを夜10時に出発しハンピの経由地であるホスペットという街に到着するのは翌朝の5時である。

移動手段は寝台バスだ。運賃は1260ルピー、日本円にして約2000円

高いのか安いのかわからないが、おそらく高いのだろう。

というのも今までのバンガロールでの体験から基本的にぼったくられていたからである。

基本的に南インドではデリーやコルカタなどの北インドよりもぼったくりや詐欺は少ないと言われているが、それでも露骨に観光客向けの値段を提示してきた。

しかし、値切ることさえめんどくさくなっていたから言われるがままにチケットを買った。

22時近くになって、バスの停留所に行くとまだバスは到着していなかった。

やがて22時を回りしばらくしてバスが到着した。チケットを添乗員に見せると、これはホスペット行きではないという

ホスペット行きはいつ来るのかと聞くと首をかしげながらわからないという

仕方がないので、しばらく待ったが、20分過ぎても一向にくる気配がない

その間、バス二台が僕の前に停車し出発した。

僕は停留所を間違えているのではないかと思い始めてきた。

たしかにここのはずだが、渡された地図もわかりにくかったが、しかしここ以外に考えられなかった

30分が過ぎた頃、初めてインド人ではない人間が停留所に現れた。

30代後半の背の高い欧米人の男性だ

僕はもしかしてと、ホスペット行きを待っているのかと尋ねた

その欧米人はそうだと答え、地面に荷物を降ろし隣でバスの到着を待った。その人はとても落ち着いていた。

30分もバスが来ないのによく落ち着いていられるなと思った

まるで送れることが分かっていたような落ち着きようだ

それからすぐにバスが到着した

今度はちゃんとホスペット行きのバスだった。

バスに乗り込むとすぐに出発し、5分ほどで高速に乗った。

するとビカビカと赤や紫や黄色や緑といった色の光線が車内に入り込んでくる

窓の外を見るとスタジアムから漏れている光らしい

どうやらクリケットの試合が行われているようだ

クリケットはインドの国民的スポーツだ。

僕はカーテンを閉めて眠ろうとしたが、車の振動が直にベッドに伝わってくるのでなかなか寝付けなかった。

身体は眠たいのに頭は冴えているという苦痛と戦いながらただ時間が過ぎるのを待った

そしてようやくホスペットに着いた。しかしそこからさらに一時間ほどオートリクシャに乗ってハンピの村まで行かなければならなかった。

ホスペットに着いたのはまだ真っ暗な朝の5時だというのにオートリクシャの運転手が数人待ち構えていた。

バスの乗客が降りだすと一斉にオートリクシャの運転手は勧誘を始めた

僕が戸惑っているとさっきの欧米人が一緒に乗ると安く行けるけどどうかと誘ってきた

僕は二つ返事でオーケーした。値段の交渉はその欧米人がすべてしてくれた。

軽く自己紹介をした。彼はフランス人で僕と同世代だという

それ以外はお互い聞かなかった。

後はただひたすらガタガタの道を走るオートリクシャに身を任せた。

なぜかバスよりも揺れの激しいオートリクシャの後部座席の方がぐっすりと眠れた。

一時間ほどでハンピに到着したが、まだ宿にチェックインするには時間が早すぎる

寝床を探し彷徨っていると、まだ夜が明けきらぬ6時過ぎだというのにチャイを出してくれる宿を見つけた。

店主は時間がくるまでここで寝ていればいいと外のベンチを貸してくれた

そのベンチに腰掛け温かいチャイを飲んだ。

普段は甘い飲み物は口にしないが、この状況で飲む甘いチャイは格別だった。

チャイを飲み終え、お金を払おうとすると受け取ってくれなかった。

インドに来て何度もぼったくられたが、お金をいらないと突き返されたのは初めてだった。

このベンチで寝ることもお金を取られるのかと思っていた、それでも寝れるところがあればかまわなかった

しかし、そうではなくただ親切心で言ってくれているらしいのだ。

僕はその優しさを素直に受け入れることにした

そして、持っていた上着を布団がわりにし横になると数分で眠っていた。



つづく








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