「坊っちゃん文学賞よみ芝居」視聴ノススメ②『羽釜』

こちらは松山市の主催する坊っちゃん文学賞の第16回にて大賞を受賞した、高野ユタさんのショートショートを「よみ芝居」として舞台化したものです。

これまで青春文学の登竜門として400字詰め原稿用紙100枚程度の作品を募集していた坊っちゃん文学賞から現在の4000字以内のショートショート募集にリニューアル後に初受賞をされ、以降の応募作品を方向づけた、まさに記念碑的作品です。

大学生の青年とお婆ちゃんの「おいしいごはん」を通した心の交流がほのぼのと温かい感動を呼ぶ本作ですが、舞台化するにあたってネックとなるのは作品のタイトルともなっている「羽釜」をいかに表現するかでしょう。

この羽釜は読んで字の如く羽が生えて空を飛び、海の幸、山の幸を方々から集めて美味しいご飯料理を作って青年とお婆ちゃんに振る舞ってくれるのですが、「羽釜の飛翔」を舞台上でいかに見せるかが演劇化における最重要ポイントと言えると思います。

さて、原作では高野ユタさんの筆力によって実に自然でいてリアルに描写されている羽釜に翼が生えて羽ばたく場面ですが、これを制約のある舞台上で表現するとなると困難が伴います。おそらく一番簡単な方法は実際に羽釜に鳥の翼を貼り付け、ワイヤーなどで釜自体を吊り上げて空を飛んでいるように見せる演出です。

ですが、この「吊り上げ」ではどうしてもチープな印象を受け、ともすると原作を改変したパロディと受け取られかねません。

映像をご視聴頂くとおわかりいただけると思いますが、ごそく楼の皆さんはその表現の難しいポイントを羽釜を擬人化することで見事に解決されています。その演出の素晴らしさもさることながら、注目して頂きたいのは羽釜の衣装と俳優の演技です。

どこか山伏や巫女を思わせるシンプルな白黒の装束は「現代における日本の民話」ともいえる本作の雰囲気に見事にマッチしており、その袖の部分をあえてたっぷり作ることで、演者が両腕を大きく広げた際にまるで翼が生えたように見えます。つまり衣装によって羽釜の擬人化と翼が生えて羽ばたくという描写の二点を同時に解決してしまったわけですね。

さらに素晴らしいと思ったのは、ご飯を作って戻ってきた羽釜が手渡された茶碗にご飯を盛って青年とお婆ちゃんに振る舞う演技が実に自然に行われている点です。

この描写は原作にはない部分なのですが、羽釜が擬人化されたことにより、舞台上でいかに不自然にならずに食事を振る舞うかを追求した演出として光っていました。

以上のような原作との相違点や、舞台化するにあたって表現の難しい場面をどのような創意と工夫で乗り越えているかを発見することも、この「よみ芝居」の楽しみ方のひとつと言えるのではないでしょうか。

高野ユタさん原作の「羽釜」は以下の松山市ホームページから読むことができます。https://www.city.matsuyama.ehime.jp/shisei/machizukuri/kotoba/bocchan.files/16th-01-hagama-a4-tate.pdf

 
 大好評のうちに幕を閉じた2023年11月公演に続き、2024年8月公演の開催が迫って参りました。以下はそのご紹介になります。

「坊っちゃん文学賞よみ芝居2024」

観劇チケットのご予約は下記の予約フォームからお願い致します。https://forms.gle/qnPnGyeXWdsCFxvCA

各回200名様。
前売り:一般2,000円・高校生以下1,000円
当日 :一般2,500円・高校生以下1,500円 
※前売り券は当日券に比べて500円割引になります。

公演日程は以下の通りです。
8月3日(土曜日)18:00開演
8月4日(日曜日)11:00開演・15:00開演

会場は松山市総合福祉センター1階 大会議室(松山市若草町8-2)です。

観劇前に原作をチェック!

今回舞台化される3作品の原作を読んでみたいという方は
下記のリンク先(松山市ホームページ)からPDF形式にてお読み頂けます。

『ドリームダイバー』
https://www.city.matsuyama.ehime.jp/shisei/machizukuri/kotoba/bocchan.files/17th-01-dream.pdf

『父の化石頭』
https://www.city.matsuyama.ehime.jp/shisei/machizukuri/kotoba/bocchan.files/18th-04-chichikaseki.pdf

『空色ネイル』
https://www.city.matsuyama.ehime.jp/shisei/machizukuri/kotoba/bocchan.files/19th-03-sorairo.pdf

過去に上演された「坊っちゃん文学賞よみ芝居」をご覧になりたい方は
下記YouTubeチャンネルから!

https://m.youtube.com/@engeki.office59

ご興味を抱かれた方は是非ともよろしくお願い致します。

 さらに2024年7月28日(日)の13時から、下記サイトにて、そるとばたあさんと舞台芸術倶楽部「ごそく楼」の皆さんのインスタライブが開催される予定です。原作者と演者の間でどのようなトークが繰り広げられるのかとても楽しみですね。

https://www.instagram.com/botchan_yomi/

 
 最後になりましたが、わたくし中乃森も「父の化石頭」という作品を今回舞台化して頂くにあたり、僭越ながら以下のようなメッセージを配信しております。よろしくお願い致します。


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