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『正欲』朝井リョウ

19:50。今このnoteを書いている。
夜ご飯を食べた後、ベッドに入り眠りにつくまでのこの時間が、たまらなく好きだ。

私は両親のもとでぬくぬくと実家暮らしをさせてもらっている身だが、私の家では夜ご飯を食べ終え片付けを済ませた後、21時〜22時ごろにみんなでコーヒーを飲む習慣がある。

それくらいの時間になると、
自ずと「コーヒー飲む?」と声を掛け合って、
コーヒーをドリップしたり、買ったお茶菓子を持ち寄ったりする。

豆大福。

だから、我が家のコーヒー豆は回転率が早い。

私はこの時間に、自分のやりたいことを充てることが多い。
本を読んだり、湯船にお湯を張って長風呂したり、大学の授業の課題をこなしたり、服にアイロンをかけたりする。

私が大好きなこの時間帯に、他のみんなは何をして過ごしているんだろうな〜と気になっている。
就活終わったし、服作りたいなー。


朝井リョウさんの『正欲』の文庫化を今か今かと待ち侘びて、
発売日の5月29日に書店に赴き、購入。

そのままドトールにもつれこんでアイスハニーカフェ・オレを片手に、課題そっちのけで夢中でページを捲った。

「多様性」という言葉を頻繁に目にするようになり、いずれも肯定的なニュアンスを含んで使われている世の中。

「多様性」を「理解する」という表現は上から目線な印象を受けるし、そもそも「多様性」という言葉は、マジョリティサイドが作った言葉だと思う。

マイノリティの中にもマジョリティは存在し、
マイノリティの中のマイノリティは「多様性」を「理解する」に含まれないことが多い。

そもそも何かしらのマイノリティに属している人たちは、「理解される」ことを望んでいるのだろうか。
「理解され」なくても良いから、ほっといてくれ、と思っているかもしれない。

だけど、マジョリティに属する人たちは、自分が多数派であることに安心し、勝手に「受け入れる」立場として、「多様性」という言葉を賞賛し、濫用する。
マジョリティが想像しうる「多様性」に含まれず、苦しんでいる人がいるとも知らずに。

大也と八重子の言い争い。

「自分が想像できる"多様性"だけ礼賛して、秩序整えた気になって、そりゃ気持ちいいよな」

本当は、自分が知らない世界について自信を持って許容できるなんてこと、ない。
わかったフリをするより、わかんねえよ、と言えた方がいいのかもしれない。

わかんねえよ、でも、いなくならねえから。

佳道が夏月に、夏月が佳道に残した言葉。

「いなくならないからって、伝えてください」

友情でも恋愛でもない「繋がり」によって結婚した二人は、二人だから
「明日死にたくない」と思って生きていける。

そんな佳道と夏月の関係性は、「理解され」なくても、「受け入れ」られなくても、否定も肯定も、されなくて良いと思うのだ。


『正欲』が、今秋に映画化されるらしい。

秋までの楽しみが一つ増えたから、生き延びる理由が一つ増えたのと同じだ。

今月中旬には、浅倉秋成さんの『六人の嘘つきな大学生』が文庫化されるから、せっせとバイトして、課題を期日までに提出して、部屋を整理整頓して、たまに美味しいものを食べて、毎日なんとか息をして生きていこうと思う。

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