『軽薄』金原ひとみ
金原ひとみさんについて知ったキッカケが、
映画『蛇にピアス』だった。
中学生か高校生の頃に初めて観てから何度か観直していて、先週『軽薄』を読み終えてから久しぶりにNetflixで開いた。
今考えると、なんであの時期に『蛇にピアス』を選んで観る選択をしたのか、自分でも謎である。
愛と暴力とセックスと身体改造がテーマの作品は中高生にはヘビーすぎるし、実際に観た時も自分とはかけ離れた世界のストーリーである上に、舌にピアスを開けたり、背中に大きなタトゥーを彫ったりするシーンが怖くて、直視していられなかった記憶がある。
今でも私はピアスを開けるだけで「痛いですか?」と先生に何度も確認するくらいビビりで、両耳一つずつプラス2個しか開けられていないし、
注射は大嫌いだし、
夜は眠いし、
痛みが快楽に繋がる境地にはまだ行けていない。
自分とルイとの共通点は限りなく無いにも関わらず、時間が経つとなぜかふと観直したくなる『蛇にピアス』。
感情の揺れが激しくて痛みにも強く、大人に感じていたルイとアマの年齢を、私はいつの間にか追い越してしまった。
母と姉とのベトナム旅行の移動のすきに読み進めた、姉に借りた『軽薄』。
『蛇にピアス』に負けず劣らず、
ストーカー、不倫に近親相姦と、ヘビーな内容だった。
狂っていると確実にわかっているのに、
カナが私とは根本的に違う人種である、とは思わない。
『蛇にピアス』のルイと同じように、
私と重なり合う部分なんて無いに等しいのに、
「つまらない」で終わらないのは、彼女たちが決して生きるのが器用ではなく、人間臭いからだろうか。
私は決して浮気や不倫肯定派ではないし、
もし自分が付き合っている人が浮気したら、「二度と人と付き合いたくなんかない」と思うほどにボコボコにしてやろうと思う。
それでも、それ以上に揺るぎない私の中での信念があって、
「人の恋愛に口を出さない」
ということである。
他人が浮気していようが不倫していようが、
それが私にとって「悪」だろうと、
その人にとって良ければ、それはもうヨシなのだ。
倫理観や道徳的な問題を指摘することはできるが、
二人にとっての関係性は、二人にしかわからないことだって絶対にある。
他人に「やめときなよ」と言われてやめられるような関係なんて、初めから始まってもいないようなものだ。
金原ひとみさんの作品は、理性やモラルを踏み越えた感情や信念が描かれているから、自分とは全く違うタイプの主人公の女に、どこか共感してしまうのだ。
金原ひとみさんに対してのイメージがもう一つ、文學界新人賞の選考委員としての言葉である。
世の中は不条理なことだらけだし、
日本の未来に明るいイメージは湧きづらいし、
自分のできないことを数え出したら余裕で100個に到達するし、
私は決して小説なんか書けるタマではないけれど、
「小説書けたら送ってみるか〜」
と思えるだけで、なんだか心が軽くいられる。
人にそんな影響を与えられる小説家という仕事を、私は死ぬほどカッコイイと思っている。
金原ひとみさんのエッセイ、『パリの砂漠、東京の蜃気楼』も読んでみたい。
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