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眠らない猫と夜の魚

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不登校の小学生、草薙波流は夜の街を歩く。 実際に歩くのではない。眠っている間に波流の意識だけが体を抜けて、夜の街を歩くのだ。それを街で怪談を収集する大学生の黒崎朱音は「夜歩き」と…
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2024年7月の記事一覧

【眠らない猫と夜の魚】 エピローグ

「夜を泳ぐ」 夜明け前。 真夜中と朝のちょうど中間くらい。 空の碧が一番濃くなる時間に、街…

中村朔
3か月前
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【眠らない猫と夜の魚】 第22話

「猫と魚」④  背後に御神体である三珠山を据えた三珠神社は、夜半を過ぎて怖いくらいに静ま…

中村朔
3か月前
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【眠らない猫と夜の魚】 第21話

「猫と魚」③  小さな頃から、夜が好きだった。  長い夜の中で、怖い話とかUFOの話とか、夜…

中村朔
3か月前
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【眠らない猫と夜の魚】 第20話

「猫と魚」② 「またお前か」  赤い目の波流は、興味なさそうに言った。  境内を埋める猫た…

中村朔
3か月前
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【眠らない猫と夜の魚】 第19話

「猫と魚」① 「いてっ」  助手席のドアガラスに額をぶつけて目が覚めた。もう三度目だ。ガラ…

中村朔
3か月前
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【眠らない猫と夜の魚】 第18話

「神隠し」③  波流が試合をすることについては吾妻さんも難色を示していたが、波流のやる気…

中村朔
4か月前
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【眠らない猫と夜の魚】 第17話

「神隠し」② 「小夜、ほい」 「ん、ありがと」  水鳥の声に我に返って珈琲のペットボトルを受け取る。表面に浮いた水滴に近づきつつある夏を感じた。 「私も珈琲飲みたいなー。けどまだ飲んじゃだめなんだって」  ベッドに上体を起こした素子さんが唇を尖らせる。 「退院したらアボカド来てよ。店長から送られてきた秘蔵のブラック・アイボリー淹れたげるから」  水鳥が素子さんに向けて親指を立てた。 「えっ、それ美味しいやつ?」 「前に飲ませてもらったけど、独特の甘みがあってスペシャルな味がし