見出し画像

校則に挑む中高生を襲うメンタルブレイク

私は今日、学生サポーター(運営)として、NPOカタリバの「ルールメイキングサミット2022 Day1」に参加した。

今日は、このイベントに参加して強く感じたことを綴りたい。

単刀直入に書くと、「このままだと中高生のメンタルは壊れてしまう」ということだ。

ルールメイキングサミット2022

そもそも、このイベントは、NPOカタリバが2019年から行っている「みんなのルールメイキングプロジェクト」で、ルールメイキングをしてきた、つまり、生徒・先生・地域等間での対話を通して、校則を一から新しく作り変える活動をしてきた学校の生徒たちが今までの活動を報告するというオンラインイベントであり、今日は全国各地から公立私立問わず17校が参加して、発表を行った。

多くの発表校は、イベントにも先生同伴で参加していて、生徒と先生がお互いニックネームで呼び合う学校や、先生の側から校則見直しを提案された学校など、多少の校則に対する価値観の違いはあっても、比較的、先生も協力的なところが多かった。

しかし、そんななか、私がタイムキーパーを担当したCグループで発表を行った私立中央大学附属横浜中学校・高等学校の場合は、残念ながらそうではなかった。

発表した生徒の方によると、生徒側でアンケートなどを行って改革案を学校に提示しても、理由を明かされないまま却下されたり、「先生相手にアンケートをやるのはおかしい」とアンケートそのものを否定されたりしたそうで、そんな状況下で3年間に渡ってルールメイキング活動を続けてきてもほとんど成果を得られていないというのである。それでも、生徒の方々は怒るわけでもなく、「先生方と直接対話したい。どうすれば良いのか?」と悩んでいた。

これには、熊本大学の苫野一徳先生(教育学/哲学)も、「生徒にこんなことを思わせちゃうなんて本当に酷なことだよね。対話の場作りまで生徒自らが耕していかなきゃいけないなんて、大人が大人の責任を放棄していると思う。今年、生徒指導提要が変わることが少しでも希望になれば。」とおっしゃっていて、このイベントは生徒と先生の対立を煽るものでは決してなく、先生側にも何らかの事情があるのだろうということも補足されていたが、「生徒が学校に3年間も無視され続けている」という状況に、聞いていた人たちはかなり衝撃を受けていたようだった。

生徒が学校に無視され続けている

実は、「生徒が学校側に無視され続けている」という構図は、中央大附属横浜の例だけではない。私が、「北園現代史」製作以降、一緒に活動している安達晴野くんと一緒に学生サポーターとして担当している、個人で応募したルールメイキングの中高生メンバー(学校と比較的うまくいっていない人が多い)のなかにも、「先生に『生徒の意見をまとめて来て』と言われてまとめて来たのに読んでくれない」「校長先生に話し合いを求めても、校長補佐→生徒部とどんどんたらい回しにされて取り合ってもらえない」「新入生の入学に伴い、校則見直しを頻繁に行うように求めるも、『次は5年後、10年後』と言われ、生徒が入れ替わっているのにその人たちの意見を反映できていない」など、びっくりするような話を抱えている人は多くいたし、なかには、「管理職によるパワハラや入社前の説明との違いによって夏休み中に教員が3人辞めたうえに、そのうちの1人は未だ休職扱いされている」など、校則見直しの範疇をはるかに脱しているような、学校根本から腐っているんじゃないか?と思うような事例もあった(裏取りはできていないが)。

また、この問題をより深刻にしている背景の一つに、こうした事例はほとんど報道されないということがある。校則関連のニュースのほとんどは、学校公認で生徒と先生が話し合って校則を見直しを成功させた事例ばかりで、「学校と一般生徒の間に板挟みにされて苦しんでいる生徒会長」や「何度も先生に門前払いを食らっている生徒」の姿はなかなか表に出てこないため、より孤立しやすいのである。

「人生最大の成長のチャンス」が「人生最大の挫折」に変わる前に

ここまで読んでくださった皆さんは、「このままだと中高生のメンタルは壊れてしまう」という私の思いに共感してくださると信じたい。

こんな深刻な悩みを生徒に抱え込ませて良いのだろうか?

こんな無茶苦茶な状況下に生徒を放置して良いのだろうか?

ルールメイキングの中高生メンバーに応募してきた人はほんの一部…。一体、全国にこうした悩みを抱えている人たちがどれほどいるのだろうか?

「校則見直し活動」は、お互いが協力的であったとしても非常に労力がかかるもので、生徒も先生も、多忙のなか、かなり試行錯誤して、進めていくものだ。先生が協力的な学校は、今後もカタリバのサポートのもと、全国の先進事例として校則見直しを進めていただきたいと願っている。

だが、繰り返すが、問題はそれ以外の学校にいる生徒たちである。学校側に無視され続けている生徒たちである。
一刻も早く、彼らの置かれた状況を社会が把握し、同じ悩みを持つ仲間と繋げ、専門家や政治家とも繋げ、メンタルケアや解決のための糸口を探る必要があると思う(既に奥田ふみよさんなどはインスタライブで相談に乗るなどの活動を行っている)。中高生だけでできることも多いが、やはり限界はあるし、何よりしんどい(私が高3のとき、同じような状況に置かれ、問題提起するドキュメンタリー映画をつくったが、公開後しばらくはかなり精神的に堪えた /詳細→ https://note.com/nakamuramasahiro/n/n1422146bb23c)。

そうでもしないと、せっかく「自分の身の回りの社会に疑問を持つ」という人生最大級の成長のチャンスを、人生最大級の挫折に変えてしまうことになる。

「どうせ疑問に思ったところで何も変わらない」「大人に頼ったって綺麗事ばかりでうんざりだ」

絶対にそうは思わせたくない。

本当なら、法律や政治である程度の土台を全国的に作って、そのうえでNPOや専門家主導のもと、ルールメイキングを行っていくことが最善だと思うけれど、それが実現する頃には、今の中高生はもう卒業してしまっているだろうから、私はカタリバの学生サポーターとして、まずは目の前にいる中高生メンバーたちのメンタルケアを急いで、できる限り、彼らの置かれている状況が好転するようサポートしたいと思っている。

そして、私自身ももっと学びたい。若者がより民主主義を活用できる社会をつくるために。

中村眞大





この記事が参加している募集

みらいの校則

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?