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リクルートスーツはもういらない。

こんにちは。中村です。
僕は今は経営者をしていますが、40歳までサラリーマンをしていました。
いろんな業種の3社で仕事をしてそれぞれの会社でいろんな成功体験や失敗体験をして今の自分があるわけです。

そんな経験の中で 採用面接官 を4年やったことがあります。(32歳〜36歳まで)
毎年新卒を60名採用する企業。中途入社のキャリア採用は平均して30名くらい採用していました。不採用者も含めると年間で約200名以上の採用面接をしていたことになります。

今は一部上場しているその企業。その頃は上場前の「急成長期」でした。
事業所が全国に一気に増えている時期で、新卒・中途合わせて100名近く採用してもまだ足りないという状態。それでも面接通過率は40%くらいだったと思います。

人事部でもない僕に面接を担当しろと鶴の一声を掛けたのは社長。
そこで求められたのは、
「約30分の面接でその人の良いところだけを100個箇条書きにしろ」というもの。

「えっ?面接って能力を見て良いか悪いかを判断するところじゃないのか?」と思わず聞き返したのですが、社長は間髪入れずに
「良いところだけをできるだけ多く見つけることができるからお前に任せたんだ」と。

なるほど、人の良い部分を見つけることができるから僕が面接官になったのか。。ってオイッ!って話しでしたね。店長時代にパート・アルバイトの面接はとんでもない数やってきましたが、それは全部「この仕事ができそうかどうか」で見てましたから。そんな目線で応募者を見たことがなかったのですからね。

でもやるしかないってことで、いろいろ考えました。作戦を練ることは僕の習慣でしたから「さて、どうやろうか」を考えたわけです。


特に新卒のリクルーターなんかは「能力」なんてわかりません。
学生時代に何をしてきたか。どこの大学か。サークルは?リーダー経験は?なんてことは書類にみっちり書いてあるからわざわざ面接で聞くのがもったいないと思い始めてきました。

そこで僕は「モチベーション面接」という手法を採ることにしました。
とにかく「褒める」→リクルーターのモチベーションが上がる→本質が見える  という流れです。

ただ「褒める」というのが難しい。褒めるというのは条件付きの行為です。
つまり相手が相手が良いことをしないと褒めることができないということ。初めて顔を合わせる、しかも面接官とリクルーターとして。そんなシュチュエーションの中でいかに褒めるべく行動を見つけるのか。

最初はそれがよくわからなかったけど、やっていくうちに段々とわかってきました。褒めるという行為は条件付きだけど、何を褒めるかに制限をかけないという方法をやっていったのです。

褒めると相手はリラックスします。うまく面接ができるかどうかという緊張の中で、リラックスする瞬間にほとんどのリクルーターが安堵の表情をします。

緊張には「良い緊張」と「失敗しやすい緊張」があると言います。
失敗したくないから緊張する。つまり、この会社に入りたい気持ちが強い人ほど緊張するのだと気付きました。僕はその最初の「緊張感」にお礼をいうことにしたのです。

緊張していますか? 
「はい、すごく緊張しています」
そうですか。それは当社に入りたい気持ちの強さからくる緊張だと僕は感じますよ。すごく嬉しいです。ありがとう。


人は褒められると嬉しくなるものです。嬉しくなるとポジティブになります。そして素の自分に近い状態になってきます。
僕が見たいのは「目の前にいる素のあなた」。受け答えを暗記してきてうまく言えるかどうか緊張しているリクルーターではありません。

僕は面接の20分くらいの間に、一人当たり20回以上褒めようと決めました。お辞儀の仕方でもいいし、声のトーンでもいいし、やってきたことでもいい。人を褒める要素はいくらでもあると、その時感じました。

そして褒めることによって人はナチュラルになる。つまりリラックスするのです。
面接によっては相手を緊張させる方法もあるようです。極限の緊張感に耐えられるかを見るものらしいのですが、それって必要です??というのが僕の意見です。社会に出たらそりゃ緊張するプレゼンなんかもあるでしょう。その極限の中で能力を発揮できるかどうかということを不必要だと言っているのではありません。それはある程度必要でしょう。

でもそのリクルーターの本当の姿を見ることなく、チームプレーをしていけるかどうかを判断することは難しいでしょう。その時の僕はフリーランサーを募集していたのではなく、仲間を募集していたのですから。


そのモチベーション面接のために、もうひとつ僕が変えたことがあります。
それはリクルートスーツの廃止です。
最初の1年間はずっとスーツ着用での面接をしていましたが2年目から変えました。私服というわけにはいかないと古株幹部に言われたので「ビジネスカジュアルで」という抽象的でわかりにくい基準の着衣を指定することにしました。

リクルーターはきっといろいろ考えたでしょう。悩んだでしょう。
ビジネスカジュアルで来いって、いったいなんなんだ。と。

これには2つの意味があります。
1つ目は、まさにその”ビジネスカジュアル”を自分で考えることと、それをどう表現してくるかという表現力を見るということ。

2つ目は、リクルートスーツを着させないため。
たくさんある選択肢の中から選ばれた私服こそがその人の「人となり」が見えるからというのが理由。
彼らを見る情報を減らすだけのリクルートスーツではなくて、その服も含めて褒めるポイントを作りたかったというのもあります。


僕らが子供の頃、日本は高度経済成長期だった。
金太郎飴の如く、みんな同じように教育されて「みんなと同じ」を良しとされた。
でも時代が変わって現代は「個性」を要求される。
その人の個性を認めて褒める。褒められた人は自分がひとつの個性だと認められて嬉しくなって、そしてリラックスする。

そのリラックスする時間が、その人の人となりを見ることであり、
その人の良さを積み上げていく時間になると考えたのです。


リクルートスーツでは見れない個性が、もし見れたのなら
案外僕のやった面接は面白かったんじゃないかなって、今思うのです。



それでは今日はこのへんで。
またお会いしましょう。



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