あなたの中の ホスピタリティー。
またしてもコロナコロナ、蔓延防止措置、緊急事態宣言かも?ということで朝テレビを付けてても眉をかしめた評論家やキャスターがいろいろ喋っています。
ホントこのままでは世界の観光業界、飲食業界はその「質」までもが失われてしまいそうで、旅行が好きで出張多数の私(結局昨年は行けず終い)にとっては、行けない現実以上に業界の「質低下」が気になるワケです。
ホスピタリティーの話し
私は仕事で飲食店経営に関わるプロジェクトに携わることが多いのですが、
今日はそんな飲食店経営をはじめとしたサービス産業が取り組む「ホスピタリティー」について書こうと思います。
よくいろんなところで 「ホスピタリティー」 という言葉を使って、お辞儀や作法などを教えている講師がいますが、
ホスピタリティー とは「心の表現」。ホスピタリティー は「カタチ」じゃないのです。
「ホスピタリティー」という言葉が、特に接客サービス産業において重要視され始めたことをきっかけに、今では様々な分野で着目されています。
接客サービス産業では「おもてなしの心」を「ホスピタリティ・マインド」と呼んで、従来の「サービスのオペレーション主義(つまり接客接遇)」の進化形として、特に「人としてのあたたかさ」や「優しさ」を表現することも多くなってきました。
では「サービス業」の「サービス」とはいったい何でしょう。
接客のこと? オマケ? 人に尽くすこと?
サービスという言葉はすでに日本語化されていますので、本来の意味を知ることがないのかもしれませんが、知っておいて損はありません。
ホスピタリティーを正しく知る上で「サービス」を知ることが第一歩になりますから。そう思って読んでくれたらと思います。
「サービス」というビジネスの歴史
日本のサービス産業は、外食産業や観光産業をはじめとして昭和45年(1970年)の大阪万博以降、ニッポンの高度経済成長期の波に乗って大きく進化を遂げました。
例えば外食産業においては、いわゆる個人店(父ちゃん母ちゃん型の食堂など)しかなかった日本の食堂業が、アメリカからマクドナルドやデニーズなどのファストフード(FF)、ファミリーレストラン(FR)が日本に出店して、アメリカ型の飲食店経営のノウハウに代わりきっかけがコレですね。
欧米のレストランチェーンがこぞって日本に入ってきて、画一的なマニュアル・サービスを展開し、しかもそれが当時の日本にとっては新鮮でカッコいい「サービス・スタイル」として認知されたのです。
私もその頃はまだ赤ちゃんだったので実体験はしていないのですが、
銀座でマックを買って、ホコ天を食べ歩くことが日本一カッコいいライフスタイルだったとか ^^。
少し時期が遅れますが、「コンビニエンスストア」も同様に欧米からチェーン店が日本に入ってきて、その後同様の進化を遂げています。
その頃から、アメリカから来たレストランチェーンが火付けとなって、日本の飲食店も「チェーンストア理論」を学ぶようになりました。
今でも飲食店の経営用語に英語が多く使われるのはそのせいですね。
そしてしばらくして飲食店のチェーン化が始まりました。
その後数年で数百店舗、数千店舗を展開するまでになった外食企業もあって、まさに高度経済成長期における資本主義の象徴となっていったのです。
そしてその「飲食店のチェーン化」のソフト部分の象徴が
「マニュアル型接客サービス」と「コックレス調理システム」でした。
「修行が必要な技術職」と言われていた「調理」を誰でも同じように作れるように「オペレーション化」させるノウハウ=コックレス調理法と、それまでは感覚的に教えていた「接客」をマニュアルを使って「標準化(オペレーション化)」させることによって、アルバイトでも簡単に接客作業ができるように=マニュアル接客 していったのです。
ホスピタリティー とは
『ホスピタリティ』という言葉に定義はありません。
定義がないと言う事は色んな意味を含んで、人により解釈・捉え方・出来事次第で意味が違ってくるということです。
多くの場合、「サービス」と「ホスピタリティー」は同じ意味を持ち、
「サービス」の上級レベルが「ホスピタリティー」と位置付けられてしまっています。
それは間違いではないのかもしれませんが、正しい定義は存在しません。
したがって、サービスとホスピタリティの違いを学んで、接客業にとってのホスピタリティとは何なのかを 正しく理解してほしいと思っているのです。
サービスとホスピタリティーの違いを理解する上で必要となるのが、それぞれの「語源」です。語源を理解する事により、由来と意味が理解出来ると思いますのでそれをお伝えしようと思います。
サービスの語源と由来とは?
「サービス」の語源となる言葉はラテン語でセルヴィタス(Servitas)という言葉です。
意味は「奴隷」または「召使い」となり、その昔 主君がおりそれに仕える方との関係を表した言葉だそうです。
私はサービスの語源が「奴隷」?と知った時に、少しばかり衝撃を受けました。
主君から何かを言われて「する(仕える)」と言う形からセルヴィタスと言う言葉が生まれ、現代の「サービス」と言う言葉に派生していきました。
「召使い」の意味を持つサーバント(Servant)もサービスと同じ言葉が語源です。
そう聞くと、現代の飲食店の顧客と店員の関係性と比較してみたくなります。
例えば、店員を呼ぶときに使うベルスター。
押すと ピンポ~ン!と鳴って、店員さんが「は〜い、カウンター1番さんお呼びでーす」なんて声が返ってきます。
そしてその声からすぐに店員さんがテーブルに来て「お呼びでしょうか」とか「ご注文でしょうか」と要件を聞いてきます。
「お水をいただけますか?」と私が言うと、店員さんは「は〜い、しばらくお待ちください〜」と言って水を取りに行く。
そして水の入ったピッチャーを持ってきて空になったグラスに水を注ぐ。
注ぎ込まれたのを確認したら私は「ありがとう」と言って そそくさと帰っていく店員さんの背中を眺める。。。
それって、
大昔のご主人様(主君)が召使いを「お〜い!パンっパンっ!(手を叩く音)←これがベルスター
召使いが「ハハーっ」とすぐさま主君の元にやってきて
「何か御用でございますか?」←コレが店員の「お呼びでしょうか」
主君「水を持ってこい!」←コレは私の「水をいただけますか?」
召使い「ハハー!ただいまお持ちいたしまする」←コレは店員の「は〜い、しばらくお待ちください〜」
以降略...^^;
このサービスという形の歴史が今でもなお「お客 > 店員」という図式として残っているのかもしれないと、それを知った時に私は思ったのです。
そして本音。
「サービス業はやりたくないな」。※実際はその時すでにサービス産業で仕事していましたが。
それと、これはあくまで語源。ホスピタリティーを知るための語源の理解ということだけはお忘れなく。
『ホスピタリティー』の語源と由来とは?
「サービス」の語源がわかったことで、本題である「ホスピタリティー」の語源に入っていきましょう。
2つの語源を知るということでその「違い」を正しく理解できると、私の経験上そう思っています。
では早速、ホスピタリティーの語源をお伝えしましょう。
「ホスピタリティー」の語源はラテン語でホスピス(Hospes)と言う言葉です。意味は「客人の保護者」や「歓待」と言う意味があるようです。
言葉が生まれた当時は巡礼が盛んで、彼ら巡礼者を暖かく迎え入れる場所を「ホスピス」と呼んだそうです。
そのホスピスは巡礼者を迎え入れるために「最大限の努力で訪れる人を扱わなければならない」「心からあたたかくお迎えしましょう」という、今でいう「おもてなし」の考えを根底においていました。
つまり、旅で心も体も疲れた旅人を「心からもてなし、癒す」。そんな場所がホスピスだったそうです。
そこから、ホスピタル(hospital)・ホテル(hotel)・ホスピタリティー(hospitality)という言葉が派生し、それらの根底にある意味として「もてなす」ことの代名詞になってきたといいます。
ちなみにアメリカなどでよく開かれるホームパーティーにホスト役たる役割がありますが、この「ホスト」も語源は同じだそうです。
人をもてなす。人に楽しんでもらう。自分ではなく「他人」を主語にした行動をする人のことをホスト役と言いますね。
サービスと ホスピタリティー の違い
「サービス」の語源は日本語に直訳すると、「召使いや奴隷」だと先にお伝えしました。(語源はサーバント)
主人が「水が飲みたい」と言えば速やかに水を持って行き、「ここが汚い」と言えば速やかに掃除するのが元々の役割でした。
それが進化して現代の「仕事としてのサービス」に形を変えてきたのではないかと思えます。
つまり、主人(お客様)が「水が飲みたい」と言えば召使い(スタッフ)は「水をお持ちする」。お客様の要望に正しく正確に応えるのが「サービス」です。水が欲しいのならば、その主人(お客様)が欲しいと言っている水を、いかに迅速に、いかに正しいものを提供するかがサービスの質ということになります。
方や ホスピタリティー 。疲れた旅人を癒す場所である「ホスピス」から派生された言葉です。
主人に求められたことを正しく迅速に行うことが「サービス」であるならば、「ホスピタリティー」は相手の心を癒す仕事です。
つまり、相手が「今それをしてくれたら嬉しいだろう」ということを主体的に考え、行動することがホスピタリティーです。
誰かが「水が欲しい」と言ってきたら、「きっと暑くて喉が渇いているんだろう」と汗ばむその人を見て「その水でいいと言っていたけど、氷も入れて差し上げよう。きっとその方が冷たくて喜ぶはずだ」と主体的に考え、より相手が喜ぶことを願う気持ち(行動)のこと。それがホスピタリティーです。
ホスピタリティー : まとめ
この話しは「サービス」と「ホスピタリティー」のどちらがいいのかという話しではありません。
それぞれが確実にアプローチの違うものであるということを理解していくことが大切なのです。
また、店舗運営において「おもてなし」を表現するということはとても重要です。
「こうしたらあの人(お客でも仲間でも家族でも)は喜ぶだろうな」ということを常に考えて行動する人は「ホスピタリティーレベルの高い人」と言えるでしょう。
店舗においてはそういう人ばかりの店はとても心地良く顧客評価の高い店になるでしょう。
スタッフ同士にもホスピタリティーは効果を発揮します。
家族関係にだって光を灯します。妻が何をして欲しいのかを感じて先に行動できれば嬉しくないはずがありません。
「◯◯をやって」と言われてからその通りやる →サービス
「◯◯して欲しいだろうな」と思いやり、「◯◯する」→ホスピタリティー
偉そうに言っていますが、私もまだまだ挑戦中!ホスピタリティーマインド溢れる人間になれるよう、一生懸命に気付きレベルを高めている最中です。
追記
私がクライアント先(上場外食企業)でのホスピタリティー研修を実践させていただいている時に、質疑応答でこんな質問が来ました。
社員「来週彼女の誕生日なんですが、プレゼントを買おうと思っています。だけど何を買えばいいのか正直わかりません。これってホスピタリティー行動としてはどうすべきなんでしょうか」
他の社員からは笑いが起きました。
「そんなん自分で考えろって〜」という声も聞こえてきました。
私はこの質問にかなり具体的に答えたのでそこはここには記載しないでおきますが、
言い換えるとこういうことだと思います。
◆ 彼女に今欲しいものを聞いて、それをプレゼントする。または一緒に買いに行く。→この行動は「サービス行動」です。
◆ 彼女が喜ぶ顔を想像して何をどのタイミングでどうプレゼントするかまで自分で考えて行動(買い物)する。→これは ホスピタリティー行動。
何度も言いますが、どっちがいいという話ではなく、
この二つは「アプローチが違う」ということが一番言いたいことです。
ただ言えることは、
「彼女の欲しいものを聞いてプレゼントする方」はプレゼント自体が「モノ」ですが、
「喜ぶ顔を見たくて一生懸命探したプレゼント」は「気持ち」です。
どちらを喜ぶかは、その彼女次第でしょうけどね。
今回はこの辺で。
ではまた!
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