精神疾患に思う
ほんの少しですが、秋を感じるようになりました。 混沌とした地球なのに、空は高く綺麗だなって思います。 いつもこの季節に感じる秋の気配を寂しく思う気持ちは、さすがにありません。
今日は近頃、耳にすることも多い、精神疾患について、最近みた映像作品
『夜明けのすべて』と少し前の韓国ドラマ『今日も心に太陽を』の感想からひも解いていこうと思います。
『夜明けのすべて』は瀬尾まいこ先生の原作小説を、三宅唱監督が映画化した作品です。 PMSをもつ藤沢美沙を上白石萌音さん、パニック障害の山添孝俊を松村北斗さんが演じます。
PMSは女性特有の、月経前症候群と言って、生理前にホルモンバランスが崩れることを原因とする、心や身体の不調です。
女性ならば多かれ少なかれ経験した事がある人も多いと思います。
主人公の藤沢はそれが重症で、いらいらがはじまると、周囲に暴言をはいて、くってかかります。 薬を飲めば収まるのですが、襲ってくる眠気でところかまわず眠ってしまいます。
人間関係を築くどころか変人と思われる日々に、仕事は当然長続きせず、自暴自棄になっています。
一方山添は、過度な労働のストレスで、ある日突然パニック障害を発症し、いつまた発作がくるのか、怯える日々です。
二人は再就職先の、中小企業で出会います。
会社の人達は、ある程度その状態を容認していますが、それでも摩擦はおきます。 ささいな事でぶつかっては、謝るくりかえしのなかで、お互いの危険な時を察知して、フォローしあうようになります。
そこからは少しずつですが、受け入れ難かった病気をうけいれて、それぞれが自分を生かす方向を見つけていきます。
こういう受け入れ態勢をもつ会社があることに、ほっとしましたが、すべての人がそんな風に待ってもらえないも事実です。
私の幼馴染も、19才の時の家出と、行方不明の末に、統合失調症になってずっと治療と投薬をうけています。
働くことはおろか、普通の生活もままなりません。
薬の副作用はひどいものですが、幻聴や幻覚があるために、止めることもできません。
現代社会には、数えきれない程の精神障害があります。
先天性のものもあるし、一概に社会のせいとも言えないのですが、パニック障害のように、競争社会のストレスに起因するものも多いと思います。
この『夜明けのすべて』を見ていてふと思い出したのは、韓国ドラマで『今日も心に太陽を』です。
韓国ドラマはあまりみないのですが、ちょっと興味深くて、少し前に見ました。 精神障害をもつ人の多さに、衝撃をうけました。
韓国は今、日本をしのぐ競争社会です。
原作は「精神病棟にも朝が来ます」です。
ダウンという精神科に配属されたナースのお話です。
精神病棟に対する偏見を捨て、誰でもが治療を受けられる場所として、時に看護師目線で、時に患者目線で、時に保護者目線で描かれています。
誠心誠意、患者に向き合う看護師たち・・・。 退院したのはいいけれど、世の中から落ちこぼれていく恐怖に死を選んでしまう患者もいます。
自分の担当した患者の死に自らもうつ病を発症する主人公です。
それでも治療を経て、精神病棟に復職します。
しかし、うつ病で療養していたことが、患者たちに知られてしまいます。
そんな人に自分の家族を任せられないという保護者たちに看護師長は、あなたたちの家族が退院して、そういう仕打ちを受けたらどう思いますかと問います。 精神疾患ありきの世の中なんです。
ダウンの幼馴染も、成績優秀で大企業に就職して、過度な期待に応えようとがんばるあまり、パニック障害を発症して、退職しています。
またこの看護師長の妹は、統合失調症で、引きこもっています。
それぞれがそれぞれの立場でこの社会現象ともいえる精神疾患に対して真摯に向き合うのですが、その裏にある社会が変わらなければ、どうどうめぐりです。
現実を受け入れて奮闘する人々のドラマの中で、何かがずれている気がしてなりません。 必要なのは戦わないですむ社会だと思うのです。
今、社会は変革期を迎えていると思います。
きれいごとを言うつもりはないのですが、奪い合いの社会から、解放されたなら、心を病む人は少なくなるのだろうと、思います。