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戸田真琴作『そっちにいかないで』を読んで

私の部屋は家賃が安い代わりに、とても小さく、本を置くのに十分なスペースがない。
それでも、今回感想を述べる、戸田真琴作『そっちにいかないで』は部屋の本棚に置いた。自分の感情を揺さぶる何かがあった。

私がこの本を読んだきっかけについて、まず書いていきたい。
あるタイミングで私は人に裏切られたと思って、神経が衰弱してしまった時期があった。別に本当に人に裏切られた訳ではないけれども、自分的には裏切られたと感じてしまっていた。今から思い返すと、どうしてそんなことで悩んでいたのか恥ずかしい思い出だ。
その時に、自分以外の人間が、家で過ごしているときに、何をして過ごしているのか、どんなことを考えているのか、どんな部屋に住んでいるのかが気になって仕方なくなった。孤独感をすごく感じた。感情が整理できなくなり、カウンセリングにも通うようになった。
そんな感情にどうか対応しようと思い、八つ当たりのように本を読むようになった。特にエッセイを中心に読みはじめた。その内の一冊が、戸田真琴さんが書いた『あなたの孤独は美しい』だった。

『あなたの孤独は美しい』を読んで、タイトルにもあるように、自分の孤独感が全肯定されているような気がした。
戸田真琴さんの他の作品を読んでみたくなった。戸田真琴さんの書籍をネットで探して見つけだのが、『そっちに行かないで』だった。

『そっちに行かないで』は少女が主人公の小説である。少女が複雑な家族、恋愛、AV女優という仕事をすることを通して、生き抜いていく話だ。

私はAV女優という生き方がどれほど大変な仕事なのかは分からない。
でも、小説で描かれる感情に共感できる部分が多くあった。
恋愛についての価値観。時に自分に厳しい選択肢をあえて選択する勇気など、普段誰にも言えないような感情を素直に書き出している。

だから、『そっちに行かないで』は、孤独と戦うロックな小説だと思う。孤独な人に、こうすれば友達ができるよとか、こうやって自分を労わりましょうとう本もたくさん読んで参考にした。でもどこか私の心にはずっしりと来ない。

『そっちに行かないで』は綺麗な言葉で書かれた、ロックな小説。優しい表現なのに、小説の核に、平然と幸せに暮らしている社会への強烈なカウンターパンチを感じる。それでも尚、『そっちに行かないで』という感情が出てくる、感情の整合性のつかない、切なさを感じた。

ラランドの西田さんもYoutubeで『そっちに行かないで』をお勧めしていた。私もとてもおすすめの一冊。


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