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カズオ・イシグロ作『わたしを離さないで』を読んで

『わたしを離さないで』は私が初めて読んだカズオ・イシグロさんの作品です。

大江健三郎さんの作品を読んで、ノーベル文学賞ってすごい。めちゃめちゃ面白いと感じていました。

もっとノーベル文学賞って政治的なメッセージがあったり、歴史を扱っていたり、とりあえずなんだか難しい小説がもらっていると勝手に思い込んでいました。

大江健三郎さん以外のノーベル文学賞をもらった作家さんの本を読んでみようと思いました。

カズオ・イシグロさんのことは、ニュースなどでなんとなくは知っていましたので、どの本を最初に読もうかなと悩みましたが、図書館で検索した結果、タイトルに惹かれて『わたしを離さないで』を選びました。

最終的に私はこの『わたしを離さないで』が大好きな作品になり、カズオイシグロさんの他の作品も読んでみたくなりました。

読み始め、最初の4章に読み進むまでは、
なんだかよく分からない、伏線が多いな、すっきりしないモヤモヤ感があるなと思っていました。(正直、途中で読むのをやめてしまおうかとも思いました。)

中盤から後半へのスッキリ感が良かったです。(伏線が回収されるという単純なものではなく、むしろ主人公たちが大人へと成長することで、主人公の感情がシステマチックになる?大人の感情、認知になることで私にとって身近なものになるという感覚な気がします)

あらすじとしては、SF的な内容で、他者に臓器を提供する、もしくは他者を介護するために作られたクローン人間の主人公達が、養育施設で育ち、社会に出て、使命を全うするという話です。

この、ほとんどの点で主人公(キャシー)やその友達(ルース、トミー)と私には、共通点がないような気がします。
(私は他者に臓器を提供するために育てられた人間ではないので)

でも、とても不思議なことに、『わたしを離さないで』で描かれるシーンのほとんど全てが、私の記憶の中にありました。

私は一時期、全寮制の学校に通っていましたし、その後、その学校の同級生とは全国に散らばって仕事をするというキャリアラダーが準備されていました。それでも多くの同期は、そのキャリアを知っていながら、恋愛関係になり、その多くは残念ながら長続きはしない感じでした。
(お互いにその将来については知っているようでした。)

勤務地などは個人の事情をある程度は配慮されるという`伝説`が確かに同級生の間に流れ、必死に学校側に訴える同級生もいました。
(私は終わりが来る何かに異常に怯え、そのような関係を嫌っていました。)

キャシーの感情に、自分の感情を重ねることができました。

『わたしを離さないで』は全体的にうっすらと絶望が流れています。
絶望だけじゃない、楽しそうなシーンもありますが、どこかで主人公キャシーは悲しげで、その雰囲気がとても好きになりました。

最後の終わり方、主人公はこれからどうなるのだろうと気になりました。

キャシーの
繊細さ、
友人の前では自分を強く見せ気丈に振る舞うところ、
仕事人なところ
に私を重ねていたので、キャシーのこの先の様子が自分を将来を予言してくれるんじゃないかと期待していました。
(私は仕事人と言えるほど、頑張っていないとは思います。
私の予言してほしいという期待は満たされませんでした。)

あと、トミーはとてもいい人だと感じました。
人間としてのコアが誠実なのだろうと感じました。

ルースの言動は、ほとんど嫌な私の言動だと思って読んでいました。

あと海外文学だからか、会話が全てオシャレでこんな会話してみたいと思って読んでいました。

次は『日の名残り』を読んでみようと思います。

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