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70年代ベストアルバムランキング10位~6位


10位 Meters/rejuvenation

ニュー・オリンズの雄、ミーターズ。JBやPファンクと並んで重要なグループだと思うけど、ブラック・ミュージック史以外にはほとんど登場しない。それでもローリングストーン誌の名盤ランキングには入っているので一応アメリカではそれなりなのか。アラン・トゥーサンに寵愛されていたのでロックな方々のバックもつとめているのだが。
初期のジョシー3部作が有名だがその後のメンバーを補強(正確には復帰と言うべきか)した時期も負けずに素晴らしい。
①からモッタりと後ろに引きずるシンコペーションがこのバンドらしい。ワウ・ギターがねっとり絡みつく③のへヴィ・ファンクのカッコ良さよ。ローウェル・ジョージがスライドで参加している。ロック好きはその辺を入り口にどうぞ。⑦は11分越えのファンク・ジャム的ナンバー。船上でのライヴ盤だと鳥肌もののカッコ良さだがスタジオ盤はやや冗長か。⑤⑥⑨はライヴ定番。どれもミーターズにしか出せないネットリ・グルーヴ。⑨はダーティ・ダズン・ブラス・バンドがカヴァーしており、自分はそこでこの曲を知った。
2000年代に「killer meters」なるグループ、というかプロジェクトがミーターズの曲をほぼそのままコピーしたアルバムをリリースしている。当時(一部界隈で)流行していたデイープ・ファンク的な音で、ベスト的選曲なので、入門編としてはいいかも。なんでもプログレ・バンド、イエスのメンバー(スティーヴ・ハウ?)の息子が「killer meters」に参加しているらしい。がプログレに全く詳しくないしさほど興味もないので調べたこともない。余談。

9位 Donny hathaway/extesion of  man

マーヴィン・ゲイ、スティーヴィー・ワンダー、カーティス・メイフィールドと並ぶ「ニュー・ソウル四天王」。なんだ四天王って。
結果的にソロ名義としては遺作となった本作。①から豪華なオーケストラに度肝を抜かれる。ファンクらしいファンクは③④⑧ぐらいか。それも実にスムーズで汗の飛び散らないファンク。
ブルージィな感じとポップな感じが折り混ざってはいるが、全体を貫くフィーリングは「高尚」。それは彼の生き方がそうさせるのか、彼のその後を知っている聴き手がそう受け取ってしまうのか。晩年のカーティスを除けば、四天王の他の皆さんは多分に俗っぽさがあるが、ダニーさんだけは活動期間の短さもあるせいか、とにかく気安く語ることはおろか、聴くにも覚悟を迫られるような。
聴くには勇気が必要だが、聴き終わった後は疲労感と深いため息とともに、「いや〜音楽って、素晴らしいですね」と淀川さん的な満足感に満たされる傑作。

8位 Donald bryd / places & spaces

ストレート・アヘッドなジャズに囚われることなく活動をつづけたドナルド・バードが、「ブラック・バード」から始まったミゼル(マイゼルとも)・ブラザーズのスカイ・ハイ・プロダクションとの至高の共同作業の集大成。兄弟と組む前のエレクトリック、ファンク化作品の「エチオピアン・ナイツ」とどちらにしようか迷いに迷ったが結局ベタな選択をしてしまった。
初めて聴いたときは「こんな軟弱なフュージョンなんか聴けるか」と思ったが、聴き込むうちにその内包するブラックネスにやられた。①からとにかく爽快なファンク。とろけるメロウ②、チャック・レイニーの悶絶するほどカッコいいベースに導かれる③など、スムーズでありながら確かなブラックネスをまき散らし、凡百のフュージョン・バンドとの格の違いを見せつけるサウンドは正にミゼル兄弟ならでは。
大学で教鞭をとり、ブラックバーズや3ピーシズといったグループを世に出したバードだけに、ここでも自己主張する自身のプレイは最低限のみで、ミゼル兄弟にプロデュースを委ねている。
そのミゼル兄弟はこの時期ゲイリー・バーツやランス・アレン・グループ、ジョニー・ハモンド・スミス等の手掛け、売れっ子になるが、どれも似たような音でオーヴァー・プロデュースとの批判もあった様子。何より「こんなのジャズじゃない」と言われることが多かった様子だが時が経ち、彼らの手法、そして彼らを信頼したバードの慧眼は正しかったことが証明された。ラストはテンプスで閉め。さわやかで軽やかなのクロい。クロいのにさわやか。すごい。

7位 The JB's / doing it to death

私のファンク開眼の1枚。②の10分に及ぶ反復に足を取られ、ずぶずぶと底のない真っ黒な沼に引きずりこまれてしまった。
JB'sは初期3枚は掛け値なしの名盤だが、3rdはフレッド・ウェズリーをリーダーにした名義。
数曲でブーツィらが参加した1stでは御大JBの声の参加はほぼなく、かわいい我が教え子たちを前面に出しバックアップしていたが、「ハーデスト・ワーキン・マン・イン・ザ・ショウビジネス」が何時までもおとなしくしていられようはずもなく、本作ではガンガン喋る。その②では、延々と繰り返されるワンフレーズに乗ってフレッドやメイシオがソロ回し。そして喋るJB。歌詞も何もなく、主にメイシオにソロを促すべく名前を呼ぶ。それが歌詞となり歌になるわけだからJBの偉大さがわかると言うもの。曲と曲の間途中途中で差し込まれる曲のフル・レングスが⑧。ずっしりと重いファンク。当時のウォーターゲート事件を連想させるが、コーラスはひたすらタイトルを繰り返すだけ。全編通して暑っ苦しいジャズ・ファンクと言えばよいか。
1stではJBの出番が少なかった分、割とリラックスした雰囲気だったが、本作は熱くて黒い。それでも本体に比べたらまだ聴き易いか。1973年録音のためギターはチーズ・マーティンとジミー・ノーラン。ドラムはジャボ。ベースはフレッド・トーマスという派手さは控えめだが、質実剛健の手練れたちである。

6位 Kool & the gang/ live at PJ's

やたらと明るいディスコ・グループと思われがちだが、初期は恐ろしいほどかっこよいジャズ・ファンクをかますグループであった。
後年は時代に合わせてどんどんとディスコ、ポップ化していってしまうが、初期の作品はどす黒いジャズ・ファンクでどれも最高。「スピリット・オブ・ブギー」ぐらいまでがファンクとして何とか許容範囲かな。
1stと並びネタ元としても人気の本作は2ndに続くライヴ。2ndでは荒々しく混沌としていた音が、本作ではかなり整理され聴きやすいジャズ・ファンクになっておりネタとして使いやすいのも納得。①②④⑦のファンクはマジ最高(②はメロウ)。ラテン風味の③も疾走するフルートがクール。ボーナス・トラック⑧も良き。ほんとヤバイ。
とにかくアース・ウィンド・アンド・ファイアとこのクールの評価はどうにかならんものかと思う。中期以降のポップな面ばかりが取り上げられ単なるパーティー・グループと認知されているが、(もちろん大衆にも知られているのはすごいことだけど)初期の真っ黒な音ももっと評価されて欲しい。まあ大衆受けは・・・しないよなあ。




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