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70年代ベストアルバムランキング15位〜11位

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15位 Herbie hancock/flood

70年代は日本公演での実況録音盤が名盤になることが多かったようだ。マイルスの「アガ」・「パン」、サンタナの「ロータス」、ディープ・パープルの「メイド・イン・ジャパン」、チープ・トリック「武道館」などなど枚挙に暇がない。もっとも後者2枚はなんとなくしか聴いたことがないので詳しくはわからないが。
「ヘッドハンターズ」(アルバム)以降、ファンクに踏み切ったハンコックの1975年の渋谷公会堂でのライヴ盤。メンバーはもちろんヘッドハンターズ(グループ)の面々。まさに脂の乗り切った超絶ファンクが味わえる実況盤。当時は日本のみでの発売で内には「洪水」と漢字表記も。
このころのハンコックはほんとかっこいい。動画もたくさんあるので見て欲しいが、アコースティックピアノからエレピ、オルガン、シンセ、シンクラヴィアにクラヴィネットまで、あらゆる鍵盤を積極的に導入し弾き倒す。
本盤も①のアコースティックピアノから始まり、バンドメンバーを加えてからは猛烈ファンクの雨あられ。②③は高速で突っ走る暴走ジャズ・ファンク。お馴染み⑥は粘着系ファンク。時代的にリズム・セクションがアヴァンギャルドな演奏に走る事があるが、シンプルな反復フレーズがやっぱり心地良いのよ。
因みに本ライヴは途中、ヘッドハンターズのみの演奏パートもあったらしく、いづれ是非完全盤をリリースしてほしい所。

14位 Miles davis/live evil 

ロック・ファンからやたらと持ち上げられる、所謂「エレクトリック・マイルス」時代のD.Cでのライヴ盤+スタジオ録音曲。とはいえフィルモアでのライヴ盤同様、テオ・マセロの大胆極まりない編集がなされている。
そのフィルモアではチック・コリアと、かたやエレピ、かたやオルガンを武器に、2022年ツール・ド・フランスにおける山岳ステージでのヨナス・ヴィンゲゴーvsタデイ・ポガチャルばりに(伝われ)二人だけで極悪・無慈悲な音の殴り合いを演じていたキース・ジャレットが一人鍵盤に。とはいえキースは同じく2022年ツールでのワウト・ファン・アールト並みの一人三役、四役、八面六臂の活躍を見せる。
特に④での暴走無限列車はやばすぎる。キースというとケルンの実況録音やECMでの端正な録音ばかりが取り上げられるが、ここでの暴れっぷりたるや。例の呻き声をあげながら爆走する姿は正に、マイヨヴェールを着ながら超級山岳で2連覇中の絶対王者を振り落とす獅子奮迅のワウトの如し。
あとこの頃のマイルスは回分と東洋思想にハマっていたのか、「sivad」や「selim」といったタイトルも。そもそもアルバムが上から読んでも下から読んでも「live evil」。
本作の完全盤が「cellar door sessions」としてリリース。こういうのを聴くと、やりすぎでは?と思っていたマセロの編集も悪くなかったと思える。完全盤も素晴らしいけどね。

13位 Fela kuti/kalakuta show 

ナイジェリアの闘志という枕詞が付く男、フェラ・クティ。時期ごとに多少の違いはあれど、どのアルバムも大きな差異はない。それ故好きな人ならどれを聴いても楽しめるし、好きでなければどれもイマイチかも。
1994年にビクターから出ていた「アラグボン・クローズ」と2in1でCD化されていた本作で初めてフェラの音楽に触れたので彼の中から1枚と言えばこれになったという次第。
基本的にはライヴも録音も同じ。長いイントロ(本作は5分程度で納まっている)にフェラが喋りだし、女性コーラス隊がレスポンスし、そのうちソロ回しがあり、フェラが喋り、みたいな構造。76年なのでドラムはトニー・アレン。サックスのイゴ・チコはもういないのでフェラ自身も吹いている。
話は逸れるが、こういう大所帯グループを率いる人たちって、専属の奏者はいるのに、よく鍵盤を使っている。フェラもそうだしJBも、マイルスも使っていた。それも、弾くと言うよりは短いフレーズでグループへの指示を出したり、転調を伝えたりと、メンバーを統率するような使い方であり、何か特別便利なことがあるのであろうか?
歌詞も喋っている内容もとにかく政治的なことか下ネタなのだが、本作はジャケットでも示されている通り、自身が作った「カラクタ共和国」というコミュニティが警察に襲撃されたときの事。時の権力に常にケンカを売っていた彼だけに逮捕、投獄、裁判、果ては襲撃である。それでものちに大統領選に立候補したりと正に「闘士」であった。
まあこの辺は賛否あるところ。自身の自宅周辺に鉄条網を張り巡らし、何十人もの女性と同時に結婚して、「カラクタ共和国」を名乗り、夜な夜な怪しげな集会(ライヴ)を開催し・・・と。現代なら胡散臭い宗教団体とかと思われ、大炎上すること間違いなしの輩である。

12位 

Curtis mayfield/there's no place like  america today 

なんでも山下達郎が生涯の1枚と公言したこともあるらしい。
ワウ・ギターとパーカスがウニョウニョと絡む①から重苦しい。続く②もどんよりとしたスロー。重い。③でようやく少しだけ重苦しい空気は開放されるが、ほんとに少し。⑥は彼がプロデュースしたベイビー・ヒューイに提供した曲だが、レア・グルーヴ、ファンクネタとして勢いのあるそのヴァージョンとは全く違う雰囲気に。
個人的にはスライの「暴動」や後のディアンジェロの「vodoo」と並ぶ「沈み込み系、ダウナーファンク」である。そんなジャンルはないが。

11位 Headhunters/survival of the fittest 

ハービー・ハンコックのファンク化の共犯者たちの独り立ち作。ギターは15位のライヴにも参加しているのちのP-ファンク組のブラックバード・マックナイト。
ド頭からぶっといミッド・ファンク。「神は我をファンキーニしたもう」というタイトルからして最高。サンプリングネタとしても知られる。マイク・クラークのスネアのアタックからして鳥肌もの。コーラスはポインター・シスターズらしい、知らなかった。もうこの曲だけでもお腹いっぱい。
②はビル・サマーズ中心のアフロ・トライバルな曲。こういうの大好き。
ハンコックに比べてよりプリミティヴでフィジカルなファンク。とは言え時代がらフリーっぽい混沌とした感じがあったり、フュージョンっぽい超絶技巧披露があったりするが、個人的にはストレートで重いファンクがあれば満足。

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