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水分補給状態が生理学的機能と運動パフォーマンスに及ぼす影響(体重が3%減少すると、各セット前の心拍数が上昇し、心拍数の回復にも遅れが生じる)

水分補給の決定因子とは

運動実践者の水分補給は、臨床と研究の両分野で活発に議論されており、アスリートの水分需要決定に責任を負うコーチやヘルスケア専門職は、水分補給計画の作成にあたって様々な因子を考慮に入れる必要があります。

運動が行われるその時々によって、環境条件、運動強度、運動時間、休息時間、着衣の量、およびそのセッション、練習、または競技イベントの目的は異なります。

同様に、運動を行う人によって、発汗率、水分補給状態、体力、熱馴化レベル、および運動に対する全身の生理的応答にも大きな個人差があります。

発汗率が確定したら、1時間あたりに失われる水分の少なくとも80%を補給するように、試合中の水分補給計画を作成します。

発汗率の高さ(0.5~4㍑/h)や胃の水分吸収率の低さ(約1.2㍑/h)のために、これが難しいこともあります。

発汗率2.5㍑/hの選手が、胃の不快感なしに、無理なく水分摂取を行うとすると、約50%(1.2㍑/h)しか補給できません。

つまり、試合中に最低80%の水分を補給するという目的は、達成不可能であると考えられます。

そこで、試合前、中、間、後に行われる水分補給を監視することが重要になります。

運動パフォーマンスに水分補給が及ぼす影響

汗で失われる水分を運動中に補給しないでいると、しばしば水分欠乏を起こします。

水分欠乏が生理学的機能とパフォーマンスにどの程度影響を及ぼすかをめぐっては、これも議論の的となっており、実験室環境においては、脱水状態で運動を行うと心拍数と深部体温が上昇する可能性があることが数十年に及ぶ研究データによって示されています。

より近年の複数のフィールド研究では、運動強度がコントロールされたフィールド環境において運動中の水分欠乏が生じた場合、実験室環境でみられたのと同様に深部体温と心拍数が有意に上昇したといいます。

興味深いことに、被験者が脱水状態にあり、運動中の心拍数がコントロールされていた場合には、運動後の心拍数が脱水状態でない被験者に比べて有意に高くなり、回復速度が遅くなりました。

同様に、脱水がレジスタンスエクササイズに及ぼす影響を調査した研究では、体重が3%減少すると、各セット前の心拍数が上昇し、心拍数の回復にも遅れが生じました。

このようなフィールド研究でと実験室研究の不一致は、水分補給がパフォーマンスに及ぼす影響についても認められています。

ACSM(アメリカスポーツ医学会)では、運動と水分補給に関する見解の中で、パフォーマンス低下を防ぐために、2%以上の体重減少を避けることを推奨しています。

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