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第3章 発展途上国の壁  19.アフリカで農業はできないと思ってた

▲野菜作り、水が問題

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▲できたら分ける

 ソース作りからにわとり。食の渇望は暴走しだすと、エスカレートするばかりだ。ついに、
「宿舎の庭を耕し、畑にする!」
 と宣言!自給自足のハートに火を付けてしまった。

 野菜の種を首都ジブチで買い、昼の守衛のアデンさん、夜の守衛のムッサさんと一緒に畑を耕した。

 畑の野菜は、暑さに強い夏野菜の「ナス」。一度収穫が終わっても、枯れた苗に水をあげ続けていると、また「ナス」が実をつける。なんと、年中暑いジブチでは、同じ苗で一年に3~4回は収穫できてしまう。
 畑を耕すのは、日本では土を盛って種を植えるが、ジブチでは土を掘って種を植える。水が溜まるようにするためだ。
 アフリカで農業を困難にしているのは水の問題である。今回、水がいかに貴重な資源であるかを思い知らされた。
 先ず、この「貴重な水を人間が飲まず、野菜や土に与えているこの行為がありえない」らしい。クレイジーだと言われた。
 また、断水が1日4回もある。4日連続で水が出ないこともある。だから、水道料金は高く、日本よりも5倍くらいの感覚だ。
 それほど、アフリカでは農業に使えるだけの水がないのである。気候や土地はむしろ農業には向いているのかもしれない。水のありがたさをアフリカに来て知ることになるとは思わなかった。

 そんな貴重な水に対して、私がジブチから日本の実家へ帰宅すると、母親が肉の解凍をするのに水を出しっぱなしにして、肉に水をかけている。排水溝へどんどんどんどん飲める水が流れていく。何てもったいないことを……と、ショックを覚える。洗濯機のすすぎで飲める水を出しっぱなしにするのもありえないし、飲める水で車を洗うのは私に取ってはもはや犯罪同然だ。
「何て水の使い方をしているんだ~! 何て勿体ないことをやってんだ~」
 なんて言うと、こっちが頭がおかしいって思われるだろう。日本って本当に水が豊かで幸せな国なんだとあらためて思う。

 そして、ここ地方都市アリサビエ市のNAKAI農園の野菜たちは、灼熱の中でもすくすく元気に育ち、たくさんの実をつけ、豊作となった。収穫物はできたものからみんなで食べたり、ご近所におすそ分けした。
 通行人はキレイな緑色の家庭菜園に目をうばわれ、外壁越しに覗いてくることも多々ある。また、お隣さんの奥さんは立派に育っている野菜を見て
「料理に使いたいから、そこの人参3本頂戴」
 って、笑顔で話かけてくれる。
 日本の味覚のホームシックから始まって、ソース、にわとり、野菜作りと思いがけない展開になったが、こうしてジブチの人たちとつながりを生み出している。ものごとの先は不思議なものである。

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▲守衛アデンさんが農業作業をする(40歳)

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▲家の庭で野菜づくり。ニンジンに水やり

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▲守衛ムッサさんが農業作業をする(46歳)


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