第3章 発展途上国の壁 17.ジブチの青年教師たち
▲イブラヒム先生〔自動車整備〕(20代)とアトリエ工具置き場にて
アリサビエ職業訓練学校に赴任して、交流が深くなったのは生徒よりも先生かもしれない。世代が近いこともあり、いろんなことをよく話す。
私と同じ自動車整備科の20代のイブラヒム先生は頻繁にレストランからの宅配サンドイッチをご馳走してくれる。しかも、宅配者は生徒。生徒を使いパシッている。そのご馳走してくれるサンドイッチが、フォア=肝臓(レバー)のサンドイッチで絶品なのだ。
イブラヒム先生「ボ~ナペティ(サンドイッチ、召し上がれ)」
私 「ありがとう。いつもお金出してくれてるから、今回は200フラン〔120円〕払うぞ」
イブラヒム先生「いらない。いらない。とにかく食べろ」
私 「ダコー(わかった)」
アトリエでイブラヒム先生とフォアサンドイッチを食べる。
イブラヒム先生「タカ、ジブチは何にもない国だよな。ハァ……」
私 「日本も1945年に何もなくなったぞ。でも今は何でもある大国になった。日本人にできたなら、ジブチ人もできるぞ。」
イブラヒム先生「1945年! それ知ってるぞ。戦争のことだな。
ジブチ人もできるよな。ありがとう」
将来への期待と不安。発展途上国の若者たちは、この2つの課題をいつも持っているように感じる。授業後に先生達とこんな会話が毎日繰り広げられる。
▲職員室 モハメッド先生(20代)写真中央
先生も若い年代も多い。職員室でテストの丸つけをしていると、20代のモハメッド先生から声をかけられる。
モハメッド先生「タカはよく仕事するな」
私 「ありがとう」
モハメッド先生「ジブチには何にもない。だから、タカがなんでジブチに来たのか未だによく分からない。でも、アリサビエ市の人達はタカから良い影響を受けているぞ。来てくれてありがとう」
私 「ホントに⁉ ありがとう」
彼のような若い先生が活躍できる社会に発展するにはどうしたらいいのだろうか? 彼らは何をしたらよいのだろうか? 私は何ができるだろうか?
▲職員室で休憩中のソニア先生〔秘書学科〕(20代)
学校には少ないながら女性の先生もいる。ソニア先生は秘書学科を担当している。
ここジブチでは、男と女は握手をしない。イスラム教のためかもしれない。しかし、私は普通に女性と握手をするし、女性のジブチ人からは握手を求められる。察するに、ジブチの男性は、女性とは距離を置くのが習慣になっているのではないか? 私がソニア先生と会話をすると、なぜか職員室が笑いに包まれる。
私 「ボンジュ(おはよう)、ソニア」
ソニア先生と握手する私。
私 「今日はとってもキレイだね」
職員室にいる先生・生徒達が大爆笑
ソニア先生「ありがとう」
私の現場での仕事は「現地の人達を笑わせる」こと。笑いが出れば結果オーライなのだが、これでよいのか
まぁ、日常の職員室はこんな感じだ。
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