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企業価値とは?株価とは違う?【M&A日記】

例えばある会社の株式100%に10億円という値が付けられてM&Aが成立したとする。
この会社の株式価値はもちろん10億円。
じゃあこの会社の企業価値は?というと10億円ではない。

「わが社は10億円で売れた。企業価値が10億円あった。」と一般的な用語として使いやすそうだが、企業価値という言葉には実は会計用語としての定義がある。

企業価値を英訳するとEnterprise Value。
Enterprise Valueを略してEV。
EV(イーブイ)という言葉でM&Aにおいては頻繁に使われる。
※厳密に言うとEVは事業価値のことだ、という拘りのある方もいて、そうすると企業価値はまた違う意味になってしまうが、どちらかと言えばEV=企業価値として使う方のほうが多いので、今回はあくまで企業価値として説明する。

EVを計算式で表すと、株式時価総額+net debt(ネット・デット=純有利子負債)、となる。

なので、最初の例で10億円で売れた!という事例においては、その10億円にネット・デットを加えたものが企業価値ということになる。

じゃあこのEVは何を表しているかというと、

  • 会社が生み出す将来のフリーキャッシュフローを割引いた現在価値のこと

  • 買収する際に必要な実質的な資金額。買収に要する資金=株式時価総額と、買収後に返済する必要がある金額=ネット・デットの合計。

という2通りの説明がネットを叩くと出てくるが、後者のほうがM&A現場の実態には即していて、分かりやすい。
前者は売主目線、後者は買主目線の説明だが、前者は株式時価総額の算出方法にも依ってくる。

譲渡対価は10億円なのに、12億円だった!などと話を盛っているような売却談をされる方がいるが、これは実は盛っているのではなく、企業価値のことを言っている。
買い手からすると、実質的な譲渡価額は株価ではなくEVとなるので、ある意味こっちのほうが実は正しいともいえる。


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