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皇族の妃が「不義の子」を出産…そんな重大事件をも想定していた戦前の皇室令

『源氏物語』と「もののまぎれ」

 紫式部が書いた『源氏物語』は、光源氏が亡き母親によく似ているという藤壺への慕情を抑えられず、ついには父・桐壺帝の女御であるというのに手を出してしまうという展開を含む物語である。やがて藤壺は天皇の子ということにして光源氏の子を産み、不義密通の結果として生まれたこの「皇子」がのちに即位することになる(⇒冷泉帝)。

御妊娠が三月であるから女房たちも気がついてきたようである。宿命の恐ろしさを宮はお思いになっても、人は知らぬことであったから、こんなに月が重なるまで御内奏もあそばされなかったと皆驚いてささやき合った。

与謝野晶子訳『源氏物語』第五帖「若紫」より

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