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よりぬき1

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しばらく数えていないので正確な文字数は不明ですが、10万字を超えていることはまず間違いありません。
それぞれ単体で110円の記事であることを考えるとめちゃくちゃお得になっています!!
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#世界史

現代スペインの「対立教皇」:ヒトラー列聖の噂もある、カトリックの今日的「異端」

https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Pope_Peter_III_of_Palmar.jpg©Idzhu573(CC BY-SA 4.0)を改変して作成 はじめに 20世紀後半に入り、ローマ・カトリック教会は歴史的な転換点を迎えた。1962年から1965年にかけて開催された第二バチカン公会議の結果、共産主義や無神論の脅威に対抗すべく、現代化を図っていくことになったのである。  しかし――伝統からの逸脱は、時として深刻な分裂を引き

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【DNA鑑定】ナポレオン3世、あの伯父とY染色体が不一致の怪

ナポレオン3世、その出生の疑惑 フランスは、今も昔も不倫大国である。2018年に発刊されたジャニーヌ・モシュ=ラヴォ『フランスの性生活』によると、フランスでは「不倫よりもセックスレスのほうがタブー」であるという。  現代のフランスでは、不倫は特にモラルに反するとはいえないから、不倫の噂を立てられても名誉毀損にはならないのだとか。2015年12月17日、同国の最高裁判所がそのように判例を示した。  ところで日本には、フランス書院という官能小説を得意とする出版社がある。この社

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君主「朕より嫡流が現れた。朕は玉座を譲り渡すべきなのか?」という話

はじめに:王家の嫡流が現れた! ――『ドラゴンクエストV 天空の花嫁』の二つの王国の事例 そんな、まさか――。若きラインハット国王デールは、思わず己の目と耳を疑った。 「ですが王さま。子分は親分のいうことを 聞くものですぞ」  耳馴染みのあるそんな言葉を囁いた男は、どこからどう見ても、約十年前に拉致され、すでに死んだものと思われていた兄のヘンリーその人だった。本来ならば自分に優先する王位継承者であった兄が今、確かに生きて眼前に立っているのだった。 「兄さん! ヘンリー兄さん 

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【奇譚】南米唯一の君主制の起源 奴隷堕ちしたアフリカの王子、新大陸で奴隷たちの王になる

はじめに 歴史を紐解けば、奴隷から身を起こして君主になった人間は少なくない。その例として、エジプトのマムルーク朝や北インドの奴隷王朝の一部君主、(伝説上の存在ではあるが)第6代ローマ王セルウィウス・トゥッリウスが挙げられる。さすがに奴隷ほど低い身分からはそう頻繁には出ないが、貧農の末子として生まれて明朝を開闢した朱元璋(=洪武帝)など、賤民からの劇的な成り上がりを遂げた例はかなり多い。  逆に、生まれながらの君主一族が奴隷身分に転落した事例もある。具体的には、人身売買業者に

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現代君主制の希望の星? 世界で相次ぐ「伝統的首長」の復権

File:Benson Ibeabuchi Homowo 2018.jpg ©BensonIbeabuchi(CC BY-SA 4.0)を改変 はじめに:消えゆく君主国 昭和54(1979)年4月11日に、日本社会党所属の衆議院議員・栂野泰二が第一次大平内閣の総理府総務長官・三原朝雄に次のように問うている。  かつて、世界の大部分は君主の治める地であった。だが、20世紀に至り、ヨーロッパでは二度の世界大戦の影響もあって共和革命が続発、さらに欧州植民地のほとんどが共和国とし

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【奇譚】奴隷の子孫、突然王子になる:DNA鑑定でベナンの王家の末裔と判明!

はじめに:先祖への関心 とある民家での会話だ。「うちのご先祖、槍の名人がいたんですって」。鴨居に飾られている一本の槍を指さしながら、少女は語った。  また別の民家での会話だ。「ひいおじいさんが殿様に拝領した盃じゃ」。立派な桐箱の中から取り出した盃を愛おしげに眺めながら、老婆は言った。  よその家の先祖自慢を聞いて、磯野家の長男・カツオはすっかり羨ましくなってしまった。自宅に帰るや、彼は父・波平にこう尋ねた。「お父さん、うちの先祖で有名な人いないの?」  その問いかけに対

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日本皇室がハンガリー王などを輩出していたかもしれない話

File:Hungarian Parliament 002 - Flickr - granada turnier.jpg©granada_turnier(CC BY 2.0)を改変 はじめに  神話に語られる神武天皇即位を起点に、約二七〇〇年もの歴史を持つとされる日本皇室。少なく見積もっていわゆる「王朝交代説」で有名な継体天皇からと仮定しても、一五〇〇年ほどは続いていることになる。万国の名だたる君主家と比べても、格段に長い歴史を誇る。  しかしその一方、特にヨーロッパの

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即位する婿たち:妻の代理としての君主

はじめに テレビアニメ『サザエさん』で、磯野カツオがクラスメイトの花沢花子に想いを寄せられていることは有名である。彼女の人生設計では、カツオが婿として「花沢不動産」の次期社長となることはほとんど確定事項だ。  『サザエさん』はフィクションにすぎないが、現実でも、民間企業の社長が実の娘でなく婿養子を後継者にすることは珍しくない。政治の世界でも、実の娘ではなく婿を後継者にすることはままある(例:池田行彦)。血筋がかなり大きく物を言うはずの旧華族の家督相続ですら同様だ(例:冷泉為

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ナポレオン、古代ローマに影響されて:近代の危険な「フィリピン皇帝」たち

はじめに  歴史上、フィリピンの政体が帝国だったことは一度もない。したがって、「フィリピン皇帝」という国家元首の称号が存在したことはない。しかし、それはけっして「フィリピン皇帝」という称号を名乗った人物がこれまでに誰一人としていなかったことを意味するものではない。  近代に限定しても、少なくとも二名のフィリピン帝位僭称者の存在が確認できる。両者ともかの「合衆国皇帝にしてメキシコの保護者ノートン1世」のような政治的に無害な存在ではなく、武力による政府転覆を企図した危険人物で

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イースター島で原住民の「王」が復活 約110年ぶり(2011年)

File:Plataforma ceremonial Ahu Akivi - Isla de Pascua.jpg©Jantoniov(CC BY-SA 3.0)を改変して作成 はじめに チリ領イースター島。現地語名はラパ・ヌイ。  この島は、人面を模した謎の石造彫刻「モアイ」の絶大な知名度ゆえに、絶海の孤島でありながら世界中から毎年幾万もの観光客を集めている。  現在はあまり自然の豊かな土地とはいえないイースター島だが、かつては森林に覆われていたことが花粉分析によって

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神託で決定、長男を除外、女系男子… 世界の珍妙継承法

はじめに  2020年(令和2年)10月現在、君主制を採っている独立国は世界に44ヶ国ある。政体に関係なく、伝統的首長領を国内に抱えている国も少なくない。また、歴史の流れに抗えずに滅びた君主制も世界には数多ある。これら今昔の君主制をみると、継承方法にはかなり豊富なバリエーションがあることがわかる。  真偽は定かでないが、言い伝えられるところによると「アレクサンドロス大王」の通称で知られる古代マケドニアの王アレクサンドロス3世は、崩御に際して「最強の者が帝国を継承せよ」と遺

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フランス王家の末裔を名乗る謎のインド貴族「ブルボン=ボーパール家」

File:Balthazar I of Bourbon - Prime Minister of Bhopal.jpg©Thubten Namdrol(CC BY-SA 3.0)を改変して作成 はじめに ブルボン家。かつてのフランス王家である。世界史上有数の名門であり、いくら歴史に疎い者でも、おそらくはハプスブルク家やロマノフ家とともにその名くらいは知っていることだろう。  「太陽王」ルイ14世、ヴェルサイユ宮殿、フランス革命に斃れたルイ16世など、フランスの歴史的王朝とし

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スペインの政治家、「EU皇帝」導入を提案 神聖ローマ皇帝を意識(2015年)

はじめに サライェヴォ事件(1914年)  サライェヴォ事件――オーストリア=ハンガリー二重帝国皇嗣フランツ・フェルディナント大公の暗殺事件――に端を発した第一次世界大戦により、四つの帝国が世界地図上から姿を消した。  最初にロシア帝国が、続いてドイツ帝国とオーストリア=ハンガリー二重帝国が、そして数年遅れて最後にオスマン帝国が崩壊したという流れだ。  これらの帝国の消滅をもって、国際社会に認められたヨーロッパの君主としての「皇帝」はいなくなった(※イギリス王が194

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近親婚のしすぎで断絶したはず… スペイン・ハプスブルク家の「末裔」、現る

はじめに ――近親婚と男系断絶―― 『平家物語』に曰く、「娑羅双樹の花の色、 盛者必衰の理をあらはす」。どんなに勢いが盛んな者であっても必ず衰えていくのが世の道理とされる。  ヨーロッパの大部分を版図に納め、栄光ある神聖ローマ皇帝位を世襲し、また「太陽の沈まぬ国」と形容される広大なスペイン植民地帝国を建設するなど、世界史上に稀なる栄華を誇ったハプスブルク家もその例外ではない。 欧州におけるハプスブルク家の版図(1547年)  一族の富を他家に渡すまいと、近親婚を幾度も重

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