活動再開後にRPE(主観的疲労度)値の記録をとってみました
1.RPE(主観的疲労度)値とは
RPEとはrate of perceived exertion の略で、運動時の主観的な疲労度を0〜10までの数値で表したものです。
一般的には「自覚的運動強度」や「主観的運動強度」と訳すことが多いようですが、中学生の生徒にもわかりやすいように、私は「主観的疲労度」という言葉を使っています。
下の図のように、0が「何も感じない」から10が「最大にきつい」のように疲労度が上がっていきます。この数値を使い、運動後の自分の疲労度を表すことにより、自分の主観的な疲労度を可視化することができます。
2.活動再開時より記録を始める
私の勤務する中学校では、新型コロナウィルスによる活動自粛が3月1日(日)から6月7日(日)まで続きました。
我らが男子バスケットボールも約3ヶ月間の活動自粛の後、6月8日(月)より活動を再開したわけですが、選手も私も3ヶ月間もチーム練習を行わなかったことなど未だ経験のないことでした。
この時、私には「新型コロナウィルス感染予防を実施しながら、どのように練習を再開すれば良いのか?」という悩みももちろんありましたが、それ以上に「3ヶ月もの長期休暇の後、どのように練習を再開すれば、生徒たちが怪我をせずに済むのか?」という問題もありました。
そこで、活動自粛中に参加した日本バスケットボール協会のWEB講習会『スポーツパフォーマンスライブセミナー』において、練習後に選手のRPE値を記録することで障害予防につなげる考え方が紹介されていて、面白そうだな…感じていた私は、早速、活動再開後の取り組みの一つとして、自分チームでもRPE値の記録を行うことにしました。
3.記録の具体的な方法
RPEの具体的な記録方法は以下のように行いました。
1 RPEチェック表を練習後、一人ずつ配布する。
2 練習終了後、更衣し、チェック表に自分の疲労度を記入する。
3 終礼の際に顧問に提出する。
思ったより、手間はかかりませんでした。
チェック表はカレンダー的な表を作成し、厚紙に貼って使ってます。
これを活動再開後から9月1日(火)現在まで継続しています。
4.再開後2週間の記録
練習再開にあたり、通常の練習に戻るまでを第四段階までに区分けし、感染予防と障害予防の観点から練習計画を行いました。
最初の1週目は【第1段階】とし、練習時間を1時間、平日のみ、朝練習なし、個人で行う基礎練習のみ、ボールの共有なし、としました。
障害予防のための取り組みとしては、リアクションとバランス系のコーディネーショントレーニングを行い、非反応系のトレーニングから徐々に反応系のトレーニングに移行しました。
次の2週目は【第2段階】とし、練習時間を2時間、平日のみ、朝練習なし、固定されたグループでのトレーニングのみ、グループ内でボールを共有、としました。障害予防のための取り組みとしては、コンタクト系なし、心拍数を上げるトレーニングと反応系のトレーニングを行いました。
3週目以降については別の機会にお伝えできればと思いますが、とりあえず、再開後2週目までのRPE値のチーム平均をまとめると以下の図のようになりました。
1年生14名、2年生16名、3年生3名のそれぞれの主観的疲労度の平均値ですので、当然個人差はありますが、何日の練習が選手にとってきつい練習だったのか、大まかな傾向を掴むことができました。
例えば、活動再開初日の6月8日(月)の練習は1時間の中で簡単なシュート練習や、個人でのシューティングのみでしたので、RPE値(のチーム平均)は3.6となり、選手としてはやや物足りない練習であったように思います。
また、第一段階の最終日である6月12日(金)の練習では、第二段階につなげるため、心拍数を上げるトレーニングとして距離走行なったため、RPE値(のチーム平均)は8.6となり、選手たちにとってはかなりきつい練習であったようです。6月13日(土)と14日(日)は練習が休みでしたので、RPE値の記録は行わず、したがって0と表記しました。
さらに、練習が第二段階に入った6月14日(月)以降は練習時間も2時間となり、心拍数を上げるトレーニングと反応系のトレーニングなどを行いましたが、第一段階でゆっくりと体力的な準備を行なったので、第二段階に入り飛躍的に主観的疲労度が高まることはありませんでした。
5.RPE(主観的疲労度)値の記録を通して
最終的に、RPE値の記録をすることで、選手の主観的な疲労度を知ることができて良かった点は、私と選手の意識の違いに気づくことができたことです。
つまり、「今日の練習は、そんなにきつくなかっただろう。」と私が思っていても、選手が予想以上に疲労度を感じていたり、反対に「今日の練習は、きつかっただろう。」と私が思っていても、選手はそこまで疲労を感じていなかったり…。ということがあったということです。そして、それは次の練習計画に役立てることができました。
このことが、どの程度選手の障害予防に役立ったかはわかりませんが、9月1日(火)時点で、練習再開後に大きな怪我をした選手はいません。ですので、RPE値の記録は今後も続けていこうと思っています。
6.最後に
最後に、先ほど紹介した再開後2週間の記録を通して「練習の組み立て方が選手の主観的疲労度に影響を与える」という発見がありました。このことについては、次回投稿を行おうと考えています。
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