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滅びの美学を追求⁉太宰治の『斜陽』

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9月第3作目には、太宰治の小説、『斜陽』を取り上げます。


【書き出し】

朝、食堂でスウプを一さじ、すっと吸ってお母さまが、

「あ。」

と幽かな叫び声をお挙げになった。

「髪の毛?」

スウプに何か、イヤなものでも入っていたのかしら、と思った。

「いいえ。」

お母さまは、何事もなかったように、またひらりと一さじ、スウプをお口に流し込み、すましてお顔を横に向け、お勝手の窓の、満開の山桜に視線を送り、そうしてお顔を横に向けたまま、またひらりと一さじ、スウプを小さなお唇のあいだに滑り込ませた。


【あらすじ】


華族だったかず子とその母は、戦後、経済状況が悪化したため、東京の家を売り払い、伊豆の山荘に引っ越した。

弟の直治が南方の戦場から帰還するが、阿片中毒となっており、無頼の作家で既婚者である上原二郎の家に入り浸る。

母が亡くなり、かず子はかつて恋心を抱いた上原に会うため上京。

上原と一夜を共にして山荘に戻るが、直治は遺書を残して自殺していた。

かず子は妊娠し、生まれてくる子どもと二人で「古い道徳とどこまでも争い、太陽のように生きる」決意をする。

没落貴族の家庭を舞台に、美しい滅びの姿を描き出した太宰治の代表作。

”斜陽族”の語源ともなった作品。


【解説】


・「斜陽」のテーマは「没落」

没落していく人々の滅びの美を描いた太宰治の代表作です。

タイトルの『斜陽』とは沈みかかっている陽のことで、この作品に描かれているさまざまな「没落」の比喩です。

作品が発表された1947年は、終戦後、華族制度が廃止された頃。

当時の時代背景そのままに、作品中では敗戦後の没落貴族の様子が描かれています。

このことから、没落していく上流階級の人々を指す「斜陽族」という言葉も流行語となりました。


・滅びや破壊のなかの美?

物語には太宰治の私生活が投影されています。

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