共作小説【白い春~君に贈る歌~】第3章「繋ぎとめるもの、思いとどまらせるもの」④
……見えてくるのは、
晩夏の闇夜。
オレンジ色の街灯。
行き交う車の数々。
車道に佇む後ろ姿。
車の流れを見定めている。
僅かに身体を震わせている。
……彼はまだ、生きている。
温かい身体の温もりを感じる。
と同時に、
差し込むような心の痛み、
凍り付くような冷たさを感じる。
……死だ。
死がそこにやってきている。
季節外れの冷気を纏い、漆黒の闇の中に、彼を取り込もうとしている。
心臓が早鐘を打つように、私の胸の鼓動は激しくなる。
このままでは、彼が「境界線」を越えてしまう。
……今の自分には、彼に呼びかけることが許されているだろうか?
……繋がっているものの一つに、なることはできるだろうか?
分からない。でも、後悔だけはしたくない。
私は今、彼の人生の最も重要な1ページに入り込んでいるのだ。
黒塗りの車がやってくるのが、音もなくスローモーションのように見える。
その車の前に、まさに一歩を踏み出そうとしている後ろ姿。
今だ!
その一瞬をめがけて、私は彼の心を掴む。
絶対に離さない。
なんとしても、繋ぎとめてみせる。
あなたに出会う、未来があるから。
あなたの笑顔を、見たいから。
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〈詩〉【君死にたまふことなかれ】
空と大地の間で
君の命の綱を引く
星屑のように こぼれ落ちそうな君
愛を失って 今 一人凍えてる
どうか私の声を聴いて
君は1人じゃない
生きる意味のない人はいない
美しい世界を見せたいから
もう少しだけ 時間をください
大事な大事な君だから
死神なんかに渡すもんか
どんな言葉も伝わらないなら
せめて今すぐ抱きしめたい
命に代えても繋ぎとめる
君 死にたまふことなかれ!
空と大地の間で
君の命の綱を引く
繋ぎとめるもの 思いとどまらせるもの
愛の魔法が 今 君を守るから
どうかこれだけは覚えていて
君は私の光
この世界に生きるべき人
愛される喜びを伝えたいから
もう少しだけ 時間をください
大事な大事な君だから
死神なんかに渡すもんか
どんな言葉も伝わらないなら
せめて今すぐ抱きしめたい
愛に満たされるその日まで
君 死にたまふことなかれ!
宇宙から見たら 悲しみはちっぽけ
最後に勝つのは 真実の愛だけ
大地に根を張り 空を見上げよう
君と私の 生きる世界で
大事な大事な君だから
死神なんかに渡すもんか
どんな言葉も伝わらないなら
せめて今すぐ抱きしめたい
不死鳥のように返り咲く
君 死にたまふことなかれ!
今 愛してる 君に届け!
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