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セルフマネジメント型組織とは何か?

どうも!ブランドコンサルタントの中江です。

今回は「トップダウン型組織に代わる、業績と働きがいが飛躍的に高まる組織モデル」について紹介していきたいと思います。

前回の記事では、現代のほとんどの企業で採用されている「トップダウン型組織」のメリットとデメリットについてお話してきました。

トップダウン型組織は、意思決定から行動までのスピードが早く、リーダーの意思を全体に素早く反映させることができ、バラバラの個性を持つ人が集まっても集団としてすぐにまとめていくことができるという強みがある一方で、組織の構造的に、リーダー以外のメンバーの意欲や働きがいが低くなる傾向があるという話をしました。

トップダウン型組織でも十分に売上を立てていくことはできますが、構造的にメンバーの働く意欲や働きがいが低下する傾向にあるので、組織全体としての離職率が高まったり、思考停止で指示待ちのメンバーが増えたり、メンバーだけでなく、結果責任を負うリーダーの負担が膨大なものになったりします

メンバーの意欲が低くなり、イノベーションも起きないため、長期的には業績が低下していく傾向にあります。

ですが、組織を運営するとなると

リーダーが計画を作り、意思決定を行い、具体的な指示を出し、メンバーの行動を管理・統制・サポートすることで、組織の目標・目的を達成していくことを目指す

というトップダウン型以外の在り方を知らない場合がほとんどだと思います。

そこで今回は、このトップダウン型に代わる、実現可能で、業績だけでなく、メンバーの意欲や働きがいも高めていくことができる、組織マネジメントモデルについて紹介していきたいと思います。

1.セルフマネジメント型組織とは何か?

それは「セルフマネジメント型組織」という組織モデルになります。

「セルフマネジメント型組織」は、メンバーのオーナーシップを高め、リーダーが意思決定・指示・行動管理をしなくても、組織本来の目的・目標を達成できるようにしていくマネジメントの方法です。

トップダウン型組織で、メンバーの意欲や働きがいが低くなるのは「階層の下に行けばいくほど、オーナーシップが低くなるからだ」という話を前回しました。

オーナーシップとは

自らが所有し、コントロールできる状態にある

と思える感覚のことです。

トップダウン型組織では、階層によって与えられている「権限・情報・責任」などが異なり、階層の上部に上り詰めるほど、誰よりも強い権限を持って自由に意思決定ができますが、階層の下部にいくほど、何も決めることができません。

例えば、社長であれば

✅ どんな新しい事業を立ち上げるのか?
✅ 給与はどうするのか?
✅ 誰をリーダーとして採用するのか?

といったことは一番強い権限を持って自由に決めることが可能ですが、新入社員の場合は、そんな意思決定の一つにも参加することはできないことがほとんどです。

どれだけ興味・関心を持っても、課題を感じても

自分の力では状況を変えることはできない

ということに直面した時に、人はその領域に関して「無関心」になっていきます。

これがトップダウン型組織が、所属するメンバーの意欲や働きがいを奪ってしまっている原因です。

セルフマネジメント型組織では、この意思決定の機会をメンバー全員に開放し、オーナーシップを高めていくことを目指します。

ですが、多くの方が

メンバーに意思決定の機会を開放しても大丈夫なのか?組織に大きな損失をもたらさないのか?

ということに関して、疑問を持たれると思います。

この疑問は至極当然で、例えば、明日からすぐに

これからリーダーは意思決定も指示も行動管理もしません。メンバーの皆さんにお任せしますので、きっちりやってくださいね

と丸投げすれば、ほとんどの組織は崩壊してしまうでしょう。

メンバーは今の段階では組織に最善の利益をもたらす、適切な意思決定ができない場合がほとんどだからです。

では、なぜ、リーダーと同じように、適切な意思決定をメンバーはできないのでしょうか?

これには様々な要因が考えられますが、一つは

リーダーだけが知っていて、メンバーは知らない情報がある

という情報格差の問題があります。

例えば、パーソナルトレーニングジムがあるとして、最近入ってきたばかりの新人のスタッフがいるとします。

おそらく、この入ってきたばかりの新人のスタッフは

ダンベルを新たに購入する

という意思決定すら一人ではできないと思います。

ジムのダンベルが壊れたら、恐らく店長や上司に報告をして、新たなダンベルを発注することになるでしょう。

これはその新人のスタッフは

✅ ダンベルが壊れた時に、どのような手順で購入すれば良いのか?
✅ この店舗でトレーニング器具に当てられる予算はどれくらいあるのか?
✅ どんなダンベルを買うのが適当なのか?

といった情報を知らないからです。

逆を言うと、こういった情報さえ知っていれば、新人のスタッフであっても、「壊れたダンベルを新しく購入する」という意思決定と行動くらいはできたでしょう。

今の時点で、メンバーが適切な意思決定ができないのは、情報が開示されておらず、意思決定の機会や方法がわからないからです。

そこで、セルフマネジメント型組織では、情報を開示し、メンバーが適切な意思決定をできるようにリーダーがメンバーをサポートしていきます。

リーダーは「計画・指示・管理」ではなく

メンバーが目標・目的を達成できるように、サポートする

コーチとしての役割に移行していきます。

組織において重要なのは、目標・目的を達成することです。

だったら

仕事における目標・目的を達成できるのであれば、そのやり方は、本人に任せる

という考え方で権限委譲を進めていきます。

トップダウン型組織では「仕事のやり方」まで

このようにしなさい

とガチガチに固定化されている場合が多いですが、これはある意味で、一人一人の個性を無視するものであって、多くの場合生産性を下げてしまいます。

例えば「ウェブサイトを作る」という仕事があったとします。

一人は始発で出勤して、午前中で仕事を終わらせるという働き方の方が生産性が高いメンバーもいれば、夜に出勤して始発まで仕事を進めて帰る方がパフォーマンスを発揮できるというメンバーもいるかもしれません。

もしくは、オフィスに出社するのではなく、自宅やカフェで作業を進めた方が仕事が捗るというメンバーもいるかもしれません。

それぞれ個性が違うのに、一律で

9時にオフィスに出社しなければならない

というルールを敷く必要があるのかは、今一度考えてみた方が良いかもしれません。

どんな働き方であれ、高い品質の仕事を期日までに仕上げることができていれば、本来は問題ないはずです。

セルフマネジメント型組織では、そういうような働き方を目指していくという訳ですね。

もちろん、最初から、全ての仕事の領域でこのように進めていくわけではありません。

トップダウン型組織を長く続けていら、メンバーは意欲が低く、主体性もなくなっている場合も多いので、いきなり

やり方は任せる

と言われても戸惑ってしまう場合の方が多いでしょうし、最初からあまりにも影響が大きい意思決定を任せていくのはリーダーとしても不安でしょう。

なので、最初は、影響の範囲が少ない、領域から権限委譲は進めていくのが良いです。

このセルフマネジメント型組織に移行する過程で、メンバーはただただリーダの指示をただ忠実に聞いて、行動すれば良いという存在ではなくなります。

メンバーは、開示された情報を元にリーダーのサポートも受けながら

どうすれば「目標・目的」を達成できるのか?

を自分の頭で考え、責任を引き受け、結果を出すことを求められます。

このような形で仕事を進めていくと、メンバーは組織の中でどんな役職についていても、多角的な情報をもとに、適切な意思決定が少しずつできるようになり、大きく成長していくことができます。

例えば、ここにプロモーションを担当する部署の新入社員が2人いるとします。

一人は、リーダーの言うことをだだただ忠実に聞き、実行し、もう一人は、リーダーのサポートを受けながら、意思決定に必要な情報を自分なりに読み解き、試行錯誤をしながら、意思決定を行い、結果責任を引き受け続ける場合、どちらの方が、1年後、大きく成長しそうでしょうか?

これは当然ですが、後者になります。

新人なので、もちろん最初から全ての意思決定や行動が上手くいくわけではありませんが、自らの頭で考え、行動し、結果責任まで引き受けるのですから、凄まじい勢いで成長していきます。

また、仕事の目的・目標には事前合意がありますが、やり方は自由に任せてもらえるので、トップダウン型と比べてもオーナーシップは高くなり、結果として、意欲や働きがいも高くなります。

また、メンバー一人一人が意思決定に参画するといっても、組織全体の目的に基づいて行うので、組織を構成するメンバーやチームがバラバラで別々な方向に向かい、空中分解するということもありません。

例えば、このセルフマネジメントスタイルを日本でいち早く取り入れた、コンサルティング企業の「ENERGIZE-GROUP」には「金曜日よりも月曜日が待ち遠しくなる社会を作る」という組織全体の目的があります。

メンバーは常に

金曜日よりも月曜日が待ち遠しくなる社会を作ることに近づくのか?

という観点から意思決定を行うので、バラバラな方向性にいきません。

例えば、新規事業を立ち上げたいと思った時

この事業を立ち上げることで、金曜日よりも月曜日が待ち遠しくなる社会を作ることに近づくのか?

という観点に基づいて、新規事業を計画するので、組織の目的とずれた変な新規事業が続々と立ち上がることもないというわけです。

2.セルフマネジメント型組織へ移行するメリット

セルフマネジメント型組織への移行が進むと、メンバーやチームに意思決定を委ねるだけで、組織が最善の方向に自走するようになるので、リーダーの仕事の負担も大幅に減ります。

実際にセルフマネジメント型組織への移行が最終段階に達すると、リーダーがほとんど出社しなくても、メンバーに任せるだけで、現場がうまく円滑に回るようになります。

メンバーはリーダーと同じように、組織に最大の利益をもたらす意思決定をするために必要な情報を持ち、判断力を身につけ、必要であればサポートも受けられるからです。

社長であれば、週に2日、それぞれ3時間だけ出社して、他の時間は、自分の見聞や知識を深めるための時間に当てている方も多いです。

トップダウン型の組織では、適切な意思決定ができる優秀な人材が一部に限られるため、その人が会社を辞めると、現場に大きな混乱が生まれます。

ですが、セルフマネジメント型の組織では、メンバー全員が適切な意思決定ができるようにトレーニングするため、誰かが何かの事情で会社を抜けたとしても、現場に大きな混乱が生まれることもありません。

なので、この組織マネジメントの方法だと、「人が育たない」という問題も解消されます。

というのも、どの階層にいるメンバーも常に適切な意思決定ができるようにトレーニングされているので、自然と組織の誰もがリーダーのポジションを担えるようになるからです。

そんな組織運営は理想論で、実現するのは不可能でしょう

と思われる方もいるかもしれませんが、実際に全世界で数百社を超える企業が、この方法で組織運営をしています。

業種業界も問いません。従業員規模も数十名から最大で3000名以上の組織でもこのセルフマネジメント型組織は機能しています。

3.セルフマネジメント型組織の原点

このセルフマネジメント型のスタイルは「リカルド・セムラー」というブラジル人の経営者から生まれました。

リカルド・セムラーは、ブラジルで製造業を行なっている「セムコ社」のCEOで、21才の時に父親から会社を継承し、6年間で業績を3500万ドルから2億12000万ドルまで成長させた、凄腕の経営者です。

彼は会社を継いでから、視察に行った工場で働く社員をみて、驚愕したそうです。

みんな、死んだ魚のような目をしているじゃないか

と。

それを見たリカルドは「こんな会社なら経営をしたくない」と思い、あることを考えました。

それが

どのようにしたらバンドマンがバンドをする時のように、働く人がイキイキと働けるだろうか?

ということです。

リカルドは元々はバンドマンで、バンドをしている時は、リーダーもメンバーも、本番のライブを成功させるために、誰もが楽しくいきいきとバンド活動に取り組んでいたからです。

実際に彼はその思想を元に、様々な施策に挑戦し、気づけば、トップダウン型の組織運営から、今解説した「セルフマネジメント型」の組織運営に移行させることに成功しました。

そして、会社の年間平均成長率は147%を超え、トップダウン型で組織を運営していた時をはるかに凌ぐ業績を叩き出しました。

また、離職率が平均30%のブラジルで2%という数値を出し、国内の就職したい企業ランキング1位を獲得しました。

その実績とユニークな組織マネジメントの方法があまりにもすごかったため、世界中の企業が視察に訪れ、ハーバード大学をはじめとした、世界の76大学の研究対象にもなり、そのマネジメントの方法をまとめた、リカルドの著作は100万部を超える大ベストセラーとなり、次世代のマネジメントスタイルの権威となりました。

その後、このリカルドの組織マネジメントの方法はオランダのコンサルティング企業が体系化し、それが今世界15カ国に波及し、ライセンスパートナー企業や、私のような認定コンサルタントの手によって、日本でも広まりつつあるという訳です。

たとえ、今、あなたの組織がトップダウン型組織であったとしても、セルフマネジメント型組織へと移行することは可能です。

具体的にどういう手順でトップダウン型組織からセルフマネジメント型組織へと移行できるのかについては、LINEの方で詳しく解説しているので、興味がある方は、ぜひご登録ください。

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