登り窯を焚く時のリアルな心境
小代焼中平窯の西川です(^^)
5月末に登り窯を焚き、
今月は素焼きを含めて3回ガス窯を焚くつもりです。
今回は技術論ではなく、
「登り窯を焚く時の心情」を誇張も矮小化もせずに書いてみようと思います。
窯焚き直前
小代焼中平窯では火入れの際に「お酒・お米・お塩」を窯に捧げ、火をつけてから二礼二拍一礼して窯焚きが始まります。
窯焚きの中では一番静かで、ピリッとして 個人的に好きな時間です(^^)
リアルな心情で言いますと、窯の神を厚く信仰しているというよりも
「頑張りますんで、どうぞよろしくお願いします!」
みたいに、窯に挨拶している感じです。
父は人吉の一勝地焼(現在は廃窯)で修業を始めたのですが、
師匠の成田さんは一週間前から水浴びをしてお経をあげ、体を清めていたそうです。
(※神道と仏教が混ざっています)
窯焚き前には注連縄で窯の周りを囲い、部外者が入れない結界としていました。
成田さんは特に信心深い方でした。
どの程度窯を信仰するかには、実のところかなり個人差があります。
窯焚き中
多少の緊張感を持って始まる窯焚きですが、焼き始めてしまえば緊張どころではありません 笑
とにかく、目の前のことに集中します。
考えていることといえば
「温度の上がるペースが速すぎるかな?」
「還元は何時から掛けようか?」
という実務的な感じで、あんまり情緒的なことは考えていません。
作りで2か月~3か月、土掘りや釉薬の原料準備から考えると1年~2年前から積み上げた仕事が窯に詰まっていますので、
「今できるベストの判断をしよう」
と心掛けています。
窯焚き終盤
焼き物の工程の中で最も集中する時間です。
というか、人生の中で考えても
ここまで集中する時間は そうそう無いかもしれません。
窯焚きには30時間ほど掛けるのですが、時間にしてラスト5分で作品の焼き上がりが変わります。
正確に言いますと、時間と言うより
『今やめるか、薪をあと一くべするか、あと二くべするか』
の判断次第で 色が飛んでしまうか、美しい青小代になるかが決まります。
この時は
「炎をちゃんとコントロールしてやる!」
「自分が終わりを見極めるんだ!」
という強い気持ちで臨みます。
これは窯を軽んじているわけでは無くて、それだけ集中しているということです。
レンガを1枚隔てて、窯の中は最高温度1,300℃以上になります。
単純にダラダラしていたら怪我しますんで。
窯焚き後
窯焚きが終わり、数日冷まして窯出しです。
この時が本当の答え合わせです。
窯焚き中の自分の判断が本当に正しかったのか、自分は間違っていたのかが分かります。
窯の中を一目見るまでは不安も大きいのですが、窯の中を覗いて
「おっ! 釉が綺麗に溶けてるぞ! 火ぶくれがきてないぞ!」
となると
「楽しい! 楽しい! どんな作品が焼けたか全部見たい!」
とルンルン気分で窯出です。
逆に大失敗だと全身の力が抜けるほど、気持ちが落ち込みます 笑
「あぁ~……………」
と、何も考えたく無くなります。
失敗の程度が酷ければ、暫く引きずるかもしれません。
私は本焼きという工程に感謝しています。
詳しいことは過去の記事を読んでいただけますと幸いです。
おわりに
窯焚きの話になると、どうしても技術論になりがちですので
今回はあえて感情にフォーカスしてみました。
窯焚きの考え方は人それぞれですので、
あくまで私の場合はというお話です。
それではまた!(^^)!
2023年7月7日(金) 西川智成
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