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地元の食材と地酒のペアリングを実験したいがために、キッチンをリノベーションしたら見える世界が変わった話。

こんにちは中村です。福井県大野市を舞台に、本業はWEBの仕事をしながら、空き時間でいわゆる「まちづくり」的なことを好き好んでやっている人の一人です。

カンケイ商店を作って 1 年が経過。
当初から構想(妄想)していた、大野の地酒と郷土料理のペアリングを提案していくという計画について、(他もだけど)なかなか思うように進んでいないという現状があり、結果を真摯に受け止めてとりあえず自宅のキッチンを自腹でBAR風にしてみた。かかった費用は5坪で15万円ほど。自宅のままなので飲食店的な営業はもちろんできない。

ちなみにBeforeはこんな感じ↓

使っている本人としては「まあ汚くはないけどただキッチンとして機能しているだけ」だったなと思う。いや、振り返ってみるとどう見ても汚い。というか、雑然としている。

今回の記事では、

  1. やろうと思っていたことがなかなかできなかった原因

  2. なのでもっと小さく始めてみた

  3. そしたら色々と景色が変わってきた

ということについて触れたいと思う。
特に食やお酒、空間づくり、DIYなどのキーワードについて興味関心がある方の何かの参考になれば幸いだ。

イメージと現実のギャップ問題

冒頭に「なかなか思うように進んでいない」と敢えて書いたのは様々な理由からなるが、例えば、

  • 場所・スペース的な面

  • お酒に関する知識の面

  • 料理との組み合わせ方の引き出しが乏しい(そもそも専門外)

  • 時間とか精神的リソースが足りない

  • 収支の組み立ての勝ち筋が見えてない

など、いろんな原因があり、批判は甘んじて受け入れたいと思っている。

しかし、それ以前に根本的なところを振り返ってみると、そもそも「実験」であったり、「トライアンドエラー」が足りないのではないかと思えてきた。

一方で密かに感じていた疑問について。

でも、でもだ。
料理はおいしいお店がたくさんある。お酒もおいしいお店もたくさんある。
でも、
料理は料理。
お酒はお酒。
という、シーンに出くわすことが多かった。もちろんどちらもおいしいのだけど。

特定のお店や団体・個人を否定するつもりは一切ないんだけど、個人的にペアリングとか言う割に自分がペアリングで感動したことが乏しいのはいけないと思った。

よーく煮詰めたトマトソースに、スーパーで一番高い値段で売られているフレッシュなオリーブオイルを掛けたときの感動とか、

鹿肉とスパイシーな赤ワインを組み合わせたときのあの感動とか、

ピカピカの新米と焼き肉とか、

・・・そういう、口に含んだ瞬間に天を仰ぐような組み合わせが日本酒×身近な料理で、もっと引き出しがあってもいいのでは?と思うようになった。

いきなりお店を開くのはハードルが高い。資金的な体力もそんなに無い。
ただでさえ出張や外出が多いのに、これ以上場所が増えると体が足りない。
人を雇う余裕もない。

ないない尽くし。
だったら、全ての物事を低いコストで・形はどうあれまずは小さく一歩を進めるのが大事なのではないかと。
なので、実験の過程を発信しながら感想や反応・フィードバックをいただいて改善を重ねていく。

そうしたステップがもっと手前に必要なんじゃないかなと思い、自宅キッチンを日本酒バー風にする計画がスタートしたのが今年8月のことだ。

イメージ固めから空間づくりまでをどうしたか?

出張のついでにて色々下見をして気になるお店に入ったり、日本酒や旅が好きな友人に LINE を送って聞いてみたり、前回の記事でも書いたピンタレストでイメージを収集したり、

採寸をしたり図面をつくってスクラップした画像を配置しながら、改装後の姿を具現化していった。

「なんとなくこんなキッチンにしたいな」と思い始めてイメージを仕事場の見える場所に掲げておいたのが今年の1月。

そこから改装工事(DIY)に着手したのが8月なので、実に半年以上考えを熟成させていたことになる。

漫然と「オシャレにしたい」というところから、「壁や天井はどんな風で、テーブルや椅子はどんな風が良いのか?」とアイテムをセレクトしていく過程は、実に大変だった。

空間作りについては
1.とことん不要なものを捨てる。
2.壁や天井など色のトーンをなるべく統一する。
3.植物と照明でごまかすという
基本的な?戦略を取ることにした。

完成に近づいてきた段階のものがこちら。

制作の過程については、Instagram のストーリーズハイライトにまとめているので、興味がある方はこちら↓を見てほしい。

https://www.instagram.com/stories/highlights/18139848991295123/

最初は単におしゃれな空間にしたいな。という想いが大半を占めていたのに、せっかくだったら、地元の食材・地元のお酒・・・だけじゃなくて+皿や箸、包丁や壁に飾るアート作品など・・・

身の丈の範囲で色々とご縁があるものを用意することに。
深い。深すぎる。

ただ単に口に入るものが美味しいだけにとどまらず、視界に入るもの、手に触れるものなども含めて空間を作っていったが、自分が純粋にいいなと思ったもので揃えていき、それが他人の目に触れるのは、結構勇気が必要なことも分かった。

90%は満足しているが、あと30%がどうにもこうにも・・・だけど現状そうするしかないジレンマは常に付きまとっていた。

完成後に訪れた変化とは?

スペースが完成すると同時に、一番変化が訪れたのは私たち夫婦の食事の時間だ。
これまで、円卓こたつのある別部屋が食事の場所だったのが、そこをほとんど使わなくなった。
調理して→食べるまでの導線がキッチンの空間で済むようになったのだから当然といえば当然なのだが、居心地の良い空間が変化したということなのかもしれない。

次に変化を感じたのは、食への追求の深さの度合いだ。
いつも作っているものや、いつも食べているもの。何気なく食べていたものに「食べ合わせはこれで良いのか?」「この料理にはどんな日本酒と合わせせたらいいんだろうか?」と、他者へプレゼンテーションする視点が加わったことで、食材選びや調理をより深く考えるようになった。これには自分自身も驚いた。

あと、妻が仕事に出かけている時は友人を招いていいことに自然な流れでなった。これが最も奇跡とも言える出来事だった。

ひとまず純粋に、少なくとも自分たちの中では美味しいと感じる料理を食べながら、好きな音楽やアーティストのライブを動画で見ながらご飯やお酒を楽しむというのは、かなり幸福度が上がることが良く分かった。

行ったことはないんだけど、ブルーノートで食事を食べながらアーティストのライブを鑑賞するような毎日がしばらく続いた。

客人を招いて反応を見てみた。

リノベの過程を逐一Instagramのストーリーズで発信していると「ちょっと行ってみたい」「気になる」といった反応も少なからずいただいた。
流石に自宅なので誰でもウェルカムというわけにはいかないが、仲良くさせていただいている友人を招き、ちょっとした食事会を催してみたりもした。

手前味噌で恐縮だが、あまり近所にはない空間だと思うので、それなりに楽しんでいただけたような手ごたえを感じている。

次第に、日本酒のペアリングについて本を何冊も買って読んでみたり、日本酒ソムリエなる試験を受けてみようかな?という気も起きてきた。
知れば知るほど「世界はまだまだ広い」ことを当たり前ながら痛感したり、えいや!と奮発しないといけないようなお店へ食べに行ってみたい欲も出てきた。

学べば学ぶほど、己の小ささを知る。

興味があるとどんどん学習意欲が湧いてくるもので、

これらの本を読んでみてとても勉強にさせていただいたりした。
またタイミング良く、仕事で地方の高級旅館と呼ばれるところにもお邪魔する機会にも恵まれ、自分がいざ空間をつくる立場になって、その次元の違いや凄さも実感できたりもした。

こんなデカイ皿を使う発想が無かったし、装飾とかどうしていいかも全く分からない・・・凄い。

それなりに時間をかけたつもりだけど、世界の深さと己の小ささを知る良い機会にもなった。

しかしそれは、誰を喜ばせたいかで、こだわりの深い・浅いも全然変わってくるから、やはり身の丈なりなんだと思う。

空間づくりや料理の腕前、設えなどはほぼ素人に毛が生えた程度なので今の自分にできることはこのぐらいだが、それでも冷静にわが身が置かれている状況を鑑みると、

毎日天然の地下水が蛇口をひねれば出てくる
地元の野菜がすぐそこでめちゃくちゃ安く買えて普通においしい
お酒も普通においしい
・・・というだけで結構贅沢な暮らしをしているような気がする。

こういう「ごく普通のくらしのクオリティの高さ」は相当なものだと思うし、都会に住んでいた時の私が何より欲しかったものなので、ひとまず「こういう晩御飯の空間・時間を過ごしたい」理想を形にできたことは素直に喜びたい。

この一件をまちづくりとどう絡めめていくか?

以前、八百熊川にお邪魔した時のことを記事にしたが、将来的には大野にも一棟貸しの、ゲストが余白をたっぷり楽しめる宿があったらいいなと常々思っていて、その1つのコンテンツの卵として引っ掛けていけたらなーと思っている。

少なくとも、水のおいしさに関してはぶっちぎりだと思うし、旅好きのクライアントに「私も色々全国回ってきたけどここはぶっちぎりで水が美味しい」と言わしめたこの場所のポテンシャルは、やはり高い。
素材のベースがとても良いから、あとはそれをどう編集するかだ。

街中にどう人を呼び込むか、商店街をどう盛り上げるか、日本酒をどうやって盛り上げていくかというようなお悩みについて「うーん・・・」と頭を悩ませる日々が多いのだが、打ち手が無数にある中で、

1.行くべき理由を作る
2.来てもらったからには滞在時間を増やす。
3.地元資本の店にお金が落ちる仕組みを作る。

ことを意識することが大事だなーと思っており、それらの解の一つとして、この卵的な空間をゆっくり?育てていけたらと思っている。

まとめ

あんまり偉そうなことは全然言えないんだけど「思っているよりもイメージと現実のギャップは大きくていろいろもがいているが、とりあえずの1手としてこんな手を打ってみました」というのを記念にしたためておいた次第。

リアルで日ごろから親しくさせていただいている方におかれましては、手料理と地酒のペアリングを味わいに来ていただきたいし、むしろ色々教えていただきたいのでお誘いがあった時は快くお返事をいただけると幸いだ。

また、今回の改装費を何か月で・またどういう形で回収できるかも観察していくのもとても興味深い。

きっと私のことだから、家事代行で仕事をいただく形になるのか、リノベ空間づくりが仕事になるのか、普通のWEBの仕事に繋がっていくのか、・・・はたまた有耶無耶になるのかは分からないが、セルフプロデュースした物理空間ver.3があることの波状効果を確かめていきたいと思う。

そして最後になったが、ひとまず10瓶ぐらい空にした中で、感動した組み合わせを貼っておくので、晩酌の参考にしていただけたら幸いだ。(まだまだ色んな酒蔵さんの組み合わせにチャレンジしたいので、限られた紹介になることが申し訳ない…)

山廃は常温で、大吟醸は冷蔵庫から出して少し馴染んだくらいがちょうど良いかも。どのお酒もお財布に優しいので、自信をもっておすすめしたい。


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