覚悟があるのか問われている気がした|『書く仕事がしたい』読書感想
『書く仕事がしたい』佐藤友美 著 CCCメディアハウス
ライティングの仕事をはじめてみようと思い立って間もない私にとって、とても興味深いタイトル。書く仕事で生計を立てるために必要な仕事に対する考え方、仕事の取り方、収入や生活についても赤裸々に書かれている。
本を知ったきっかけ
この本を知ったきっかけは、よく聞いているラジオ番組、J-WAVE『GOOD NEIGHBORS』のゲストコーナーにエッセイストの寿木けいさんが出演された回を聞いたこと。
お話されている内容や雰囲気が気になりSNSをフォローしたところ、佐藤友美さんとの対談があることを知った。
「書いて、生きる。書いて、稼ぐ」というイベントテーマがまさに私が知りたいことだと思い、さっそく『書く仕事がしたい』の書籍と対談イベントチケットのセットを購入した。
お二人とも今回はじめて著書を読んだ。
著書を読んでから著者の話を聞くということは経験があるけど、話を聞いてから読むという順番はあまりなかったかもしれない。
対談で話を聞いてから、「こんな文章を書く人なんだ」と感じるのは新鮮だった。
対談で話されていたことが本にも書かれている箇所があり、読後にまた話を聞いてみたくなる。ありがたいことにアーカイブ期限がないのでもう一度対談を聞いてみよう。
「翻訳」というキーワードに共感
本の中に、「ライターとは、日本語を日本語に翻訳する仕事」という言葉がある。翻訳の仕事をしている私はドキッとした。もしかして、共通点があるかもと期待した。
翻訳は原文の意図を同じ内容、かつ自然な日本語で伝えるもの。
ライティングの場合は、取材したことを同様に伝えるものと考えると確かに似ていると共感できた。
また、翻訳は外国語の知識がもちろん必要だけど、実は日本語の知識も求められる。実際、英語から日本語に翻訳する際は、英語の意味や文法を調べるのと同じくらい日本語の意味や文法を調べている。
そのまま読み流してしまいそうな言葉、言い回しの違いを調べることが多いのも、翻訳とライティングの共通点だと思う。
あとは、文字だけで表現する仕事だからこそ、読み手に誤解を与えたり、冷たく感じさせたり、傷つけたりしないように、簡潔な文章や慎重な言葉選びが重要だと感じている。
副業、お小遣い稼ぎ程度でいいの?
私がライティングの仕事をはじめてみようと思ったのは、翻訳業界以外の収入の柱となる仕事にできればと考えたからだ。
今回のコロナ禍やリーマンショックなどの世界的な経済危機が起こったとき、1つの業界だけでは仕事がなくなるリスクがあるので、2本の柱ができれば、どちらかが不調でも補えるのではないかと思った。
そこで、「書く」という共通点があり、フリーランスとしての働き方ができるライティングの仕事をはじめてみた。
なんとなくはじめてみたものの、モヤモヤした気持ちを抱えながらぶつかったのが収入の問題。これについても佐藤友美さんがズバリと言ってくれている。
「1文字○円」案件はプロの原稿料の相場の1/5から1/10。
空いている時間で筋トレする気持ちであればいいけど、それでは生活できない。
10倍の営業努力をして、10倍の原稿料をもらう道を考える。
――本文要約
これを読んで、「収入の柱となる仕事」にしたいという目標を見失っていたと気づいた。
この報酬額についても翻訳と共通している。
翻訳会社勤務からフリーランス翻訳者を経て業界の相場を知る者として、知人から相談されたことがある。その際に聞いたクラウドソーシング上での単価は、翻訳会社経由の相場の半分以下。
本来、翻訳会社を通さずにプロジェクト管理も含めて発注元から直で仕事を受ければ翻訳会社経由より単価が高いはずなのに、直での仕事のほうが単価が低くなっているから仕事に見合った対価にならない。
筋トレだけを続けて満足するのか、実践練習や試合に挑戦するのか覚悟を決めないと、収入が増えることはないと危機感をもった。
何を柱として稼いでいくのか
書いて稼ぐには覚悟を決めて時間をかけて取り組むことが必要だと理解したところで、新たな不安が生じた。
翻訳もライティングも片手間でできるような仕事ではないのに、器用でもない私が両方に手を出すとどちらも中途半端になるのではないか?
目先の仕事や日々の生活に追われていると、フリーランスとしての働き方、仕事への取り組み方、キャリアについて考えることがおろそかになってしまう。
このあたりの不安についても、フリーランスの先輩である佐藤友美さんの経験や考えが書かれているので、読書と対談を行き来しながらじっくり考えたい。
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