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vol.7 ため息をつくことの大切さを知る

両親に、「ため息を吐くと幸せが逃げていくからやめなさい。」と言われて育ち、25歳になった。

昔は私もそれなりに純粋な少年だったから、
当時は少しだけ衝撃を受けた。
「マジか!ため息すると幸せが逃げていくんだ!」
「ため息つくのはやめとこう!」と、
純粋に思った。

理屈は分からないけど、
肺の空気を抜くその同時に、幸せ成分も空気に
混じって逃げていくその絵面を想像して怖くなって、
今までずっとため息をついてこなかった。
我慢強い前向きな子に育ってほしいと思った
両親の想いからなのか、思惑は直接聞いてみたことはない。

でも、私は生まれてこの方、ずっと25年、前向きに
物事を考えられる人間ではなかった。
人の言葉とか感情に敏感で、傷つきやすい。
そんな繊細さから学生時代、
何かとビクビクしているので、気の利かないクラスの
一軍男子に挙動不審だと笑われたり、からかわれる事が多かった。

そんな自分は、気の合う友達と狭っこい秘密基地で少人数でひっそりとしているのが丁度いいのだと、ずっと思っていた。

腹立つ事は結構言われ続けてきた。
でもその場の波風を立てたくないので、
決してそれに言い返したりせず、
無難に受け入れていた。
それが大人というものだ、と割り切って。

人からからかわれたりしたら、
「私がここで我慢をしていれば、この場が白ける事はない。ヘラヘラ笑っとけばいいんだ。」

社会人になって叱られたりしたら、
「私がここで我慢をしていれば、この場は丸く収まる。反省してるふりをしていればいいんだ」
というような。

振り返ってみれば、自分には"我慢する処世術"が
身に馴染みすぎていたと思う。
ため息をなるべくつかない方向に持って行くために、
我慢する選択肢を選ぶ事が普通になっていた。

おまけにプライドがすごく高い人間なので、
泣いたり喚いたりするのが
非常にみっともないとずっと思っていた。


社会人になって、営業マンという体育会系
バリバリ縦社会の職種を選び、(言い過ぎか)
ガムシャラ精神の美学みたいなものを押しつけられると、"我慢する癖"はさらに加速する。

上司からどんなに叱られたって、子供みたいに言い訳せず、理路整然と自分のした事を悔いて、ちゃんと謝る。

今月、契約してくれる見込みのお客さんが少なくても、めげずに果敢に営業活動を続けて、電話しまくる。

パッと見、
なんだ、ちゃんと頑張って営業マンやってんじゃん。
休まないし、遅刻もしないし、身体も壊さずに自分よくやってるな〜。とか思うことはある。

でも、ある日、上司からチクリと言われる。

「お前はなんかロボットみたいで
何考えてるか分かんないんだよな。」

その言葉は、なんだか自宅に帰った後も
ずっと忘れられず、鳩尾(みぞおち)にジワジワと残っていた。

色んな辛いことになんとか耐えて、
みっともない事はしない様に心掛けて
頑張っていたつもりなのに、この頑張りはあまり評価されてない事に気づく。
我慢して我慢して、感情を押し殺している内に、
人間味のないくそ生意気な若手社員がそこに出来上がっていた。

よく、飲み会とかで初対面の人に「若いのにすごく落ち着いてますよね」とお褒めの言葉(多分。そう思いたい。)を頂くことが多い。

そこに対してのアンサーとしては、
プライドがくそ高くて、感情を押し殺すのに非常に慣れてるからこんなに落ち着いているように見えるんじゃない?というのが正直なところ。
そんな事言ったところで、その飲み会の酒が
不味くなるだけだ。

最近は、「ため息を吐くことはすごく体にいい!」
という内容のニュースや記事をよく見る。
自律神経のバランスが整ったり、心身のリラックスに
繋がるというデータもあり、なるほどなぁと思う。
ネガティブな意味合いが強かった"ため息"の価値観は
変わりつつある。

私にとってはそういった脳科学的なデータよりも、
きちんと"弱みを見せる"という意味でもため息は
どんどんついていってもいいのではないかなあと思う。
弱みを見せないでプライドだけが凝り固まってしまうと、まず人が寄って来なくなる。

あからさまに表に出すのはちょっと違うけど、ちょっとしたSOSサインはキチンといえる人間になった方が
人生、得だ。
私なんかは本当に苦手。

あいつはめげずに仕事を淡々とこなせる奴だけど、
人間味がなくて、ロボットみたいなんだよなぁって一回でも思われてしまうと、それは孤立の第一歩だ。

一個。自分のために、フォローじゃないけども、
補足しておくと、
私は仕事以外の休みの日は、積極的に人に会いに行き、ちゃんと自己開示をしながら楽しくコミュニケーションはとれている。色んな人の話を聞くのは自分への刺激になるし、勉強になる事もある。

でもこれは正直疲れる。
自分の性格上、やはり少し無理はしているのだろう。
「早く人間になりたい!」妖怪人間ベムもそう言ってたし、私もロボットを卒業したいです。

以上、ため息をつきながら書いた文章は少し暗いものになってしまいました。悪しからず。

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