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急速に拡大するAI分野で、新卒でも大きな仕事を任されるメリット|FIXER 岡見洋佑さん

奈良先端科学技術大学院大学(以下、奈良先端大)では、研究に没頭するあまり、就職活動を始める時期が周りより遅かったという岡見さん。諦めずに頑張った結果、無事に現在の会社に就職されました。入社1年目でも、大きな仕事に挑戦できる環境だそうで、一生懸命、毎日頑張っている姿が想像できるほど、今は仕事に打ち込んでいる様子が伝わってきました。大学院での経験を今の仕事にどのように活かしているか、就職活動をどのように切り抜けたのかを含めて、詳しくお話を伺いました。

岡見 洋佑
奈良先端科学技術大学院大学では、AR(拡張現実)を活用して自動運転車に乗った人のストレスを軽減するための研究に取り組む。博士前期課程修了後、株式会社FIXERに入社。入社後は生成AIのプラットフォーム開発を担当。主にその中のフロントエンド開発に携わっている。

大きく出遅れた就職活動で無事に内定にまで至った経緯

就活のスタートは遅くて、M2の9月頃でした。その頃までは研究の方を何とかしないといけないという思いが強く、研究に集中していて、なかなか就活に力が入らない状態でした。ただ、もうその頃になれば、周りの同期はみんな就職先が決まっていて、これではマズイと思い始めました。

まずは、当時の研究が直接活かせそうなAR(拡張現実)関連の企業を調べていましたが、AR系の企業はほとんどありませんでした。あったとしても、まだ立ち上げて間もなく、拡大するフェーズではないため、なかなか新卒を採用していない企業が多かったです。修士論文の提出も徐々に迫ってきて、精神的に参っていた中で、やりたいこと、やりたくないことを明確化して、それに合った企業をキャリア支援室から紹介していただきました。それがFIXERになります。そして、最終的に、3月に内定をいただき、入社に至ります。

世の中に次々と出てくる生成AIに携わる仕事

弊社では生成AIのプラットフォーム「GaiXer」というサービスを提供しています。その特徴としては、個人情報を学習せず、セキュリティをしっかりと担保した生成AIを使えることで、金融機関にも使っていただいているほどです。今はChatGPTを筆頭に、いくつもの生成AIや精度の高いLLM(大規模言語モデル)が世の中に出てきている中で、そういったものを全部「GaiXer」の中に入れ込み、瞬時にそれらのAIを切り替えられるマルチなプラットフォームになります。その「GaiXer」において、主にフロントエンド(ユーザーが目にする部分)や、生成AIと通信する上で必要になるAPIの繋ぎ込みに携わっていて、時々はバックエンド(ユーザーが目にしない裏側の部分)の業務も行っています。それに加えて、「GaiXer」に組み込む新しい技術の調査として、実際にコードを書いて、どういう動きができるかなどの検証もしていますね。

AIに関わる仕事の面白さ

まだ業務に慣れていないところもあって、あまり余裕はない状態ですが、AIやLLMに関しては、普通に過ごしていると、自分では調べないような知識なので、それが蓄えられることが面白いですね。他に、実装に詰まって、うまくいかない時に、色々と調べた結果、どうしたら動くのかが分かった時はやっぱり嬉しいです。ただ、調べることは好きですが、実際に気になったことをすぐに自分で手を動かして検証することはもっとできるようになりたいと思っています。

話しやすく、相談しやすい職場の雰囲気

事業規模の拡大も伴って、僕が入社した年は特に大きく採用に力を入れていたので、同期が非常に多く、チームの中も同期の割合が高いです。そういう環境もありますが、上司や先輩とは話しやすい雰囲気で、何かに詰まって困った時には相談しやすいですね。また、現在、所属しているチームは研究室の頃の雰囲気に近いと感じていて、現状の共有や情報交換もしやすい職場です。

新卒でも大きな仕事を任してくれる場所

新入社員でも、すぐに実業務に取り掛かれたり、大きな仕事に携わったりできることは利点だと思います。僕も「GaiXer」に関わっていますが、他の会社であれば、こんな利用人数の多い大規模なサービスの開発に1年目から関わることはなかなか難しいですよね。

それから、大きな仕事を任されることが多いので、どんどん自分の分からないことが減って、分かることが増え、もっとこうした方が良いと考えられる。自分なりにどう向き合っていくかも考えながら、どんどんスピード感を持って仕事ができるようになっていくことを1年目から経験できる点は非常に面白いと思っています。それに、フロントエンドがメインだったとしても、バックエンドに挑戦することもできているので、そういう何らかのきっかけを与えてくれる、挑戦させてくれる会社です。

また、福利厚生も非常に充実していて、本人が使うデバイスの費用を補助する制度があったり、住宅手当も相当な金額が出たりしますので、社員の生活が苦しくならないように、とても考慮してくれています。福利厚生とは異なりますが、四日市の事業所では、お昼ご飯にお弁当を出してくれることも結構嬉しいですね。

現役の奈良先端大生へのメッセージ

何か物を調べる時に、誰かがまとめた情報ではなくて、最初に出したところの情報、一次情報をしっかりと探して、自分でそれを読んで、自分の中の理解に落とし込む能力は研究でも仕事でも大事になってくると思います。例えば、大学院の時に使っていたホロレンズは、マイクロソフトが開発した複合現実(MR)のデバイスですが、そういったものであれば、マイクロソフトの公式ドキュメントを自分で読むようにしていましたね。

また、就活においては、なかなか内定をもらえなかったとしても、募集をしている会社はやっぱりあるので、頑張って諦めなければ、何とかなります。

奈良先端大を目指す学生へのメッセージ

企業ではすでに何か情報が出たものを実装することも多く、例えば、弊社が実装しているLLMでも、LLMを作るのではなくて、世に出ているLLMを使います。一方で、大学院は研究する場所であり、世の中に出ていない新しいものを作ります。何かそういうことをしてみたい、まだ世の中には出ていなくて、物や技術としてあっても、それを発展させたい場合は、やっぱり大学院という場所は良いと思います。やりたいことが明確になっているのであれば、大学院を選択肢として入れてみると良いですね。

奈良先端大の研究生活で印象に残っていること

自動運転とARを組み合わせて研究していましたが、実験場を借りて自動運転車を実際に動かす経験は企業でもなかなかできません。後から費用を調べると、20代の学生が触るにはビックリするような額の機材に触れることができたことは面白かったですね。研究室での経験を通して、今でもARへの興味は強いので、今の仕事とは関係ないかもしれないですが、ARグラスの普及には少しでも関わっていこうとは思っています。 

また、研究室ではメインの研究と並行して、学生主体で進めるサブ研究も希望する人はできました。自分では主体でやらなかったですが、先輩はテレビ番組の「ナニコレ珍百景」に出たり、技術的なサポートをしていた同期の研究は国際学会で賞をいただいていたり、面白いテーマがいくつもありましたね。

奈良先端大で経験して、今も仕事で役に立っていること

研究室は和気あいあいという感じで、留学生も多かったので、交流も頻繁にあり、留学生がよく鍋パーティーをしていましたね。そういう環境でしたので、研究室内の発表は英語。喋ることは難しいですが、入学前と比べて、英語に対する忌避感は多少減った気はします。今は英語を聞いたり、喋ったりすることはほとんどないですが、最新技術を追うため、英語の資料を見るので、英語に触れることは多く、その時の英語の論文の読み方は特に役立っています。 

他にも、毎週の進捗報告で、資料を作る時に、相手がどの程度、分かっているかというより、そもそも分かっていない状態でも、しっかりと説明できるようにする点、資料1枚に詰める情報量、人に説明する時に気を付けていたことは、今でも意識しています。 

また、研究室ではメディアとのインタラクティブ性、その人にとって、どうあれば快適であるかを検証していたので、その辺りの経験はフロントエンドのデザインに活かされていますね。

※この記事に記載した内容は取材当時の情報になり、会社名や役職名等は現在と異なる場合があります。