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【挿絵あり】№19_召喚術の授業は××な魔物と、 (月下美人系魔物 VS 安全第一なぼっち学生)

【月下美人系魔物 VS 安全第一なぼっち学生】の召喚契約を巡る攻防を描く、割と現代的で現実的なファンタジーです。
№15~№19まではBL版・ブロマンス版、共通になります。


 
(ん、あれ…?なんだっけこの匂い…)
 
なんの匂いか思い出そうと、もう一度嗅ごうとした。
しかし、香りは幻のように消え去っていた。

(さっき確かに匂いがしたのにな…)
もう少しで答えが出そうなのに、出ない。そんな歯がゆい状態を、どうにか解消したくなった。

すんすんと鼻を鳴らしながら、もう一度あの匂いはしないものかと周辺をゆっくり探ってみる。

すると書斎の扉の近く、本棚と本棚が背中合わせになっている辺りから一瞬それが薫った。
2回目で、その甘い香りが何だったのかも分かった。

(あれだ、あの毒薬の匂いというか、味に似てるんだ。)

まるっきり同じ風味ではなかったが、魔力の制御を狂わす毒薬に繋がる香りだと感じた。

 

(そういえば、あの毒薬はどこから持ってきているんだろう?)
僕が見た限りでは、この屋敷内にはあの毒薬の保管場所は見当たらなかった。

書斎だって自称・領主様が不在の日に、机や戸棚の中もくまなく探っていた。
しかし、毒薬の小瓶すら見かけなかった。

ただ、これだけ大きな亜空間を創造できるのだ。
例えばあのローブの内ポケットを拡張して、保管していることも考えられる。

(でも)
この亜空間の外に保管している可能性だって、ゼロではないだろう。
この匂いの先には、もしかしたら亜空間外に繋がる場所があるのかもしれない…

チラリと、書斎に繋がる扉を伺った。
扉は閉まったままで、彼が出てくる気配はなさそうだった。
ゴクリ…

本棚と本棚の間、隙間さえ無いようなそこにおそるおそる手を伸ばした。

風のような、空気の膜に触れた感触。
次いでそれが揺らぐのを指先で感じた。
そして自分の手は本棚に触れることなく、その奥へと突き抜けてしまった。

(たぶんこのまま、入って行ける気がする…)
この図書室も探索魔法も駆使して、事細かに調べたはずだった。
しかしこの出入口は見つけられなかった。
やはりあの魔物が隠したものを見つけるなんて、自分には到底無理だったのだ。

 

(今日は偶然見つけられただけ、次があるとは考えない方がいいよな…)
魔界は一晩で地形すらかわる世界だ。
繋がる場所、出入口の場所が日々変化しないとも限らない。
あの魔物からしたら、僕の脱出ルートなんて隠しておきたいことだろうし。

もう一度、書斎の扉の方を振り返ってみた。
相変わらず扉も、その中も静かなままだ。
…今のところは。

(危険かもしれない。
 でも、これを逃したら……
 脱出のチャンスはもう、来ないかもしれない…)

その時、僕の足を止めるものは、その場には存在しなかった。
 



今回はここまでにします~
ではまた~ 

1話目はそれぞれこちら↓
BL版↓

ブロマンス版↓



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