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【挿絵あり】№32_召喚術の授業は××な魔物と、 …過去を引きずる人に贈る、ヒーリングBL…

【月下美人系魔物 VS 安全第一なぼっち学生】の召喚契約を巡る攻防を描く、現代的で現実的なファンタジー召喚BLです。


 
「…あ、あの…、何も、ありませんでしたが…?」

そんな僕を見てため息をついた魔物は、小さい子供に言い聞かせるように話し出した。
「そんな風に怯えるのが、お前の日常ではないだろう。
 いいか、体調がおかしかったり気分が悪くなったり、精神が不安定になっても私を呼べ。」

(えっ…そのくらいで人を呼出しても、いいのか…?)
相手がいくら魔物といえども、本人がいいと言っても。
渋る僕を見かねて、魔物は落ち着いた声で諭すように言葉を紡いだ。

「…人間は、容易く壊れてしまうのだろう。肉体も精神も。
 お前が大丈夫かどうかは、管理者である私が判断する。
 …今度1人で勝手に怯えていたら、常に私の側に置くからな」
最後に釘を刺すかのごとく、ギラリと若草色の目を光らせた魔物は「それに、」と続けた。

「人間は経験や感情を他者と共有・共感して、不安や心の傷を癒すのだろう?」

確認するように尋ねられた内容に、どう答えるべきか迷った。
なんとなく魔物の様子を伺うと、その瞳には好奇心というか探究心が浮かんでいるような気がした。


(なんか、自分が魔界の生物に思い馳せる時と似ているような)
だとすれば、ここは正確に答えた方が良いはずだ。

「あー、一般的にはそうですけど人間は個体差のある生き物でして…」
それから参考までに、僕の個体情報も付け加えさせてもらった。
自分はむしろ人と話したりするのが苦手で、物理的にも心理的にも距離を保ちたいと思う個体だということを。

「!っな、っで、では…っ!
 先日からの夜のあれは、不快だったのか…!?」
僕の申告に思いのほか驚いた魔物は、少しおろおろとしながら尋ねてきた。

「りょ、領主様が不快なんてそんな…」
咄嗟にそう答えたが魔物が疑うようにジト目を向けてきたので、僕は慌てて率直な言葉で返答を改めた。

 
「ほ、本当ですよ!
 その、え、L様は森?の香りがして落ち着くし、もう色々とお世話頂いているせいか触れられても抵抗感ないし、むしろなぜか安心します……」
「!!…っそ、そうか…!!
 ま、まあ、私のリラックス効果が人間風情に劣るわけがないか…!」 
僕の返答を聞いた自称・領主様は、フフン…っと鼻高々に嬉しそうにされた。

(ふっ、なんでその”人間風情”をライバル視してるんだよ…)
おかしくなり思わず笑ってしまった。
耳もいいらしい領主様は、その小さな笑い声に切れ長の目を丸くされる。
(ヤ、ヤバい…不敬だって怒られ…)


春の暖かい日差しをうけて、木蓮の真っ白な蕾がふんわりと綻んだ――

白面に浮かび出たのは、そんな微笑みだった。

気づけば、自分の息は止まっていた。
(……、…な、な、なななんで…)
なんとか呼吸を再開させた胸の内側は、驚きと感嘆と疑問で混沌となっている。
口もパクパクと開け閉めするだけしかできなくなった。
そんな僕を置いてけぼりにして、領主様は機嫌良さげに方向性をお決めになられた。

「では、話すのが苦手なお前の代わりに、私が話をしてやるか。
 魔界の環境や気候に過去の出来事、白緑湿原に生息する魔物について…何がいい?」
 
 


今回はここまでにします~
ではまた~ 

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