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№27_召喚術の授業は××な魔物と、 【月下美人系魔物 VS 安全第一なぼっち学生】の召喚契約BL

【月下美人系魔物 VS 安全第一なぼっち学生】の召喚契約を巡る攻防を描く、現代的で現実的なファンタジー召喚BLです。


 
「っ!??」
何をするのかとまだ重怠い体で身構える。
しかし魔物は僕の警戒など気にせず、その白い手で僕の胸のあたりを優しくトントンしてきた。

「っぇ…?」
「?どうした?叩き加減が強かったか?」
「い、いえ…」

(こ…!これは、もしやあれか?僕は今、寝かしつけられているのか…!?)
思わずまじまじと、隣にいる魔物の顔を見上げてしまった。
「…フッ、なんだその顔は。
 ほら、今はそう思い悩まずに眠れ。人間は睡眠が重要なのだろう?」

(ッ!?!、わ、笑った…)
それは、子ども達を見守る聖母のような微笑みだった。
その衝撃的な笑みに僕の目は見開かれ、驚いた心臓もドギマギと忙しない。

この白緑の魔物は、姿は人とよく似ているが人間ほど表情を浮かべない。
無表情という訳ではないが、なんというか表情が薄いのだ。
人間ほどコミュニケーションを重視しない生き物だから、表情筋自体が人間ほど発達していないのかもしれないと思っていたが…

(こんな柔らかい顔もできるんだ…)
その面差しは演技にはとても見えなかった。
そもそも弱肉強食の世界に生きる魔物が、こんな表情をできるなんて思いもしなかった。
 
(どうして……?)
目の前の魔物は、弱い魔物達を踏み潰すのは仕方のないことだと語っていた。
人間だってそれと同程度の存在だろうに、なぜ僕にこんな顔を向けることができるんだ…?
(…幻術の類だとした方が、よっぽど納得できるのに)

でも、そうだったら少し。
……悲しい。

心の奥底で呟かれた声は、聞かなかったことにした。
精を吐き出したあとの気だるさも手伝ってか、僕はすぐに深い眠りへと落ちていった。

 


 

 

目覚めた先こそ、悪夢だった。

(…う”うっ。ベタベタしてて、気持ち悪い……)
僕は変わらず蔓に囚われたままだった。
身体は土や蔓の粘液、自分の汗や体液が混ざり合ってドロドロだ。
所々カピカピしてつっぱる感じもする。
そのうち痒みや酷い臭いも出るであろう汚れ具合に、みじめさが募った。

花の魔物は少し離れた所で目を閉じてじっとしていた。
その姿は、遊び疲れた子どもが眠っているみたいだった。
だが身体にゆるく巻き付く蔓は、時折ずりずりと動いては僕を苛んだ。

「…ンッ……ぁ…っ…」
花の毒のせいか、情けないことにそれだけでも身体が疼いてしまう。
でも、蔓を振り払って逃げるための体力も気力も、もう残っていなかった。

粉雪のように降り積もる快楽に自我が覆われていくなか、ぼんやりと思う。

(…もしかしたら、もっと早くこうなっていたのかもしれない)
あの白緑の魔物が僕を見張っていたから、何もなかっただけで。
今までは運が良かっただけで。

特殊な魔力を持っていても結局、平凡な力しか持たない自分。
脅威をはねのける力のない者は、虫けらのように好き勝手に弄ばれ搾取される…それが摂理
なのだろう。

自分だって魔物を殺してしまった。
だからこれも、こんな目に遭うのも、し、仕方ない………

「…っ”っ、……ぅ………、…!!ッ」

気配を感じたのだろうか。
花の魔物がふるふると瞼を持ち上げ、あのゾっとするような紅い瞳をのぞかせた。
そして目を覚ました僕を見つけると、楽しそうに唇の端をつり上げて近づいてきた。

(あぁ……あの延々と溺れ続けるような時間が、また始まるのか…)
呼吸が早くなり、体が震える。
「ッ…ハッ…ハッ」

(…召喚契約を結んでいたら、こんなことにはならなかったのかな…)
絶望を前にして怖気づいた心は、今更後悔し始めた。

「ッ……」
いやダメだ。アレは多くの人を魔物の餌にするかもしれない選択だ。
絶対に選ぶわけにはいかなかった。
だから、こうなってしまったのも仕方ないんだ…

ああ、でも――

(……どうせ喰われるのなら、)

"お前が何か…よ、余計な事を考える必要はないのだっ "
"冷めないうちに食べろ "
"ほら、今はそう思い悩まずに眠れ。人間は睡眠が重要なのだろう? "

口ぶりは傲慢で、行動は強引。
そして時々、その言動もぎくしゃくし出す不審な魔物。
それでいて、こちらを気遣おうとする意思が垣間見えたり、謎の安心感をもたらす白緑色の不可解な存在。

(自称・領主様がよかったなぁ…)

諦めて目を閉じて、早く終わることを願う。
自分はもう、願う事くらいしかできそうにないから。


 
 


今回はここまでにします~
ではまた~ 

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