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新型コロナへのmRNAワクチン効果:NEJM

非ヒト霊長類にmRNA-1273をワクチン接種することでSARS-CoV-2中和活性が良好に誘導され、上気道および下気道は保護され、肺では病理学的変化は認められなかった。

新型コロナウイルス感染症(Covid-19)の原因菌である重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)は、2020年の世界的なパンデミックを認めています。

安全で効果的、かつ迅速に展開可能なワクチンの開発は、世界保健上の緊急の優先課題です。

前臨床動物モデルにおけるワクチンの有効性と安全性を評価する上で、非ヒト霊長類は臨床応用に向けていくつかの利点があります。

SARS-CoV-2感染後、非ヒト霊長類では上気道と下気道で一過性のウイルス複製がみられ、肺では軽度の炎症がみられ、14日以内に消失することが報告されています。

霊長類は自然免疫反応やB細胞・T細胞がマウスなどのげっ歯類よりもヒトに類似しており、臨床的に適切なワクチン量を評価することができます。

今回研究対象となったメッセンジャーRNA(mRNA)は、迅速な製造ができることからワクチン開発を加速させることができるため、Covid-19ワクチンの有望なアプローチです。

低用量の mRNA-1273 を投与したマウスモデルのデータで良好な中和抗体を誘導しました。

SARS-CoV-2に対して高レベルの保護効果を示したことから、mRNA-1273 のワクチン接種は、非ヒト霊長類における上気道感染と下気道感染の両方を予防または制限できる可能性があることが示されました。

方法

National Institutes of Health(NIH)の規則を遵守し、Animal Care and Use Committee of the Vaccine Research Center and from Bioquaの承認を得て実施しました。

雌および雄のインド原産アカゲザル(各性別12頭、年齢 3~6歳)を、性、年齢、および体重によって分類し、3つのグループに層別化しました。

各層内では、3匹の動物のうち1匹を任意に各試験群に割り付け、ワクチン接種群は0週目および4週目にリン酸緩衝生理食塩水(PBS)1ml中のmRNA-1273 10μgまたは100μg、対照群であるワクチン未接種群は同量の1×PBSを右後脚に筋肉内投与しました。

SARS-CoV-2を用いた上気道および下気道チャレンジの前に、抗体およびT細胞応答を評価しました。

気管支肺胞液(BAL)および鼻腔スワブ検体中の活性ウイルス複製およびポリメラーゼ連鎖反応(PCR)で評価し、肺組織検体の病理組織学的解析およびウイルス定量化を行いました。

結果

mRNA-1273ワクチンは、ヒトの回復期血清中の抗体レベルを上回る抗体レベルを誘導し、live-virus reciprocal 50% inhibitory dilution (ID50)の平均力価は、10μg 投与群で 501、100μg 投与群で 3481 でした。

ワクチン接種により、1型ヘルパーT細胞(Th1)に依存したCD4 T細胞応答、および低または検出不能なTh2またはCD8 T細胞応答が誘導されました。

ワクチン接種群の8匹中7匹の動物では、SARS-CoV-2を用いたチャレンジ後2日目までにBAL液中のウイルス複製は検出されませんでした。

100μg投与群の8匹の鼻では、チャレンジ後2日目までにウイルス複製は検出されず、どちらのワクチン群の動物の肺でも炎症や検出可能なウイルスゲノムや抗原は限られていました。

まとめ

非ヒト霊長類にmRNA-1273をワクチン接種したところ、SARS-CoV-2中和活性が良好に誘導され、上気道および下気道は保護され、肺では病理学的変化は見られませんでした。

問題としては、非ヒト霊長類ワクチンと感染モデルがヒトの臨床ワクチン開発に役立つかどうかということです。

しかしながら今回報告された結果は、ヒトを対象とした第 1 相臨床試験で得られた免疫原性と安全性のデータを補完するものであり、非ヒト霊長類における mRNA-1273 の免疫原性と上気道および下気道の保護に関するデータを提供するものであるとしています。

Evaluation of the mRNA-1273 Vaccine against SARS-CoV-2 in Nonhuman Primates. N Engl J Med. July 28, 2020.

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