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冠攣縮性狭心症への抗血小板薬の効果認めず

冠攣縮性狭心症患者に抗血小板療法は有益な効果を認めなかった

冠攣縮性狭心症とは

冠攣縮とは、心臓の表面を走行する比較的太い冠動脈が一過性に異常に収縮した状態とです。

以下のような特徴があります。

硝酸薬により速やかに消退する狭心症発作
安静時(特に夜間から早朝)に出現
運動耐容能の著明な日内変動(早朝の運動能の著明な低下)が認められる
心電図でST上昇を伴う
過換気で誘発される
Ca 拮抗薬で抑制されるが β 遮断薬では抑制されない
一般的な狭心症とは異なり、冠攣縮性狭心症は欧米人に比べて日本人の発症率が高いことが知られています。

冠攣縮の発症に関わる重要な因子は喫煙であることがすでに報告されているので必ず禁煙してください。

一般的な狭心症でも必ず禁煙してください。

冠攣縮性狭心症の生命予後は一般によいとされていますが、器質的狭窄を合併した場合には急性心筋梗塞や突然死を起こすことも知られています。

治療は硝酸薬やCa 拮抗薬などが有効ですが、これらの治療でも発作を抑えられない難治症例にも出会います。

日本循環器学会による冠攣縮性狭心症の診断と治療に関するガイドライン(2013年改訂版)に原因についての言及や、詳細な検査・診断方法が記載されています。

研究の目的

一般的な狭心症患者は抗血小板療法が使用されています。

しかし、血管痙攣性狭心症患者では、抗血小板療法の効果は十分に解明されていません。

この研究では、日本冠攣縮学会の多施設登録研究に登録されたn=1429の冠攣縮性狭心症患者において、抗血小板療法の効果が比較されました。

主要エンドポイントは主要有害心臓イベント(MACE)で、心臓死、非致死的心筋梗塞、不安定狭心症、心不全、および植え込み型除細動器の適切作動と定義されました。

結果

集団全体では、669人の患者が抗血小板療法を受け、760人の患者は受けませんでした。

抗血小板療法を受けた患者では、高血圧、糖尿病、脂質異常症、喫煙などの併存疾患の有病率が、受けていない患者に比べて高値でした。

また心筋梗塞の既往、心電図のST変化、有意な器質性狭窄、およびカルシウム拮抗薬、硝酸塩、スタチン、ACE阻害薬/ARBを含む薬物療法が施行されている率は、抗血小板療法を受けている群は受けていない群より高値でした。

両群ともn=335でpropensity matchingを行うと、追跡期間中央値32ヵ月間のMACEの発生率は、抗血小板療法を受けているは受けていない患者と同程度でした(P=0.24)。

MACEは抗血小板療法を受けている患者で5.7%、受けていない患者で3.6%発生しました(P = 0.20)。

全死因死亡は抗血小板療法を受けている患者で0.6%、受けていない患者で1.8%発生しました(P = 0.16)。

まとめ

この多施設共同登録研究では、抗血小板療法は冠攣縮性狭心症患者に有益な効果を認めませんでした。

The impact of antiplatelet therapy on patients with vasospastic angina: A multicenter registry study of the Japanese Coronary Spasm Association. Int J Cardiol Heart Vasc. 2020; 29: 100561.

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