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【読書録】母性

はじめに

 湊かなえさんの母性を読了しました。本書は11月に映画の公開が予定されているため、ご存じの方も多いかもしれません。
 本書の主人公は母と娘です。母の方はいわゆるお嬢様育ちで自分の母(娘から見ると祖母)に愛されることのみを生きがいとしています。娘の方も自分の母から愛されたいと願っているのですが、なぜか母ためにとったはずの行動で余計に嫌われることに悩んでいます。物語はそんな二人の回想で進みます。その回想の時点でどうやら娘の方が自宅で倒れているような描写があり、その原因が母にあるのではないか?という疑惑が読み進めるごとに強くなっていくという作品です。

一人称視点の到達点

 本書に限らず湊かなえさんの作品は章ごとに語り手が変わり、事実が浮き彫りになっていくという形をとるものが多いです。湊さんの作品を読むたびにいかに人間の主観が曖昧で信用できないものか思い知らされます。
 特に本書は母と娘のある意味表と裏のような2つの視点で進むため、章が変わるたびに事実が真逆になるというまさに湊かなえマジックを味わえる作品でした。

田舎の閉そく感リアリティ

 母と娘はある事故をきっかけに夫(娘にとっては父)の実家に住むことになります。夫の実家は田舎の農家で、母は姑にこき使われます。とにかく田舎の古臭い価値観を押し付けられ、読んでいるこちらまで息苦しさを覚えます。著者の他の作品だとユートピアも同じく田舎の閉そく感を味わえます。私も田舎育ちなので何となくは雰囲気を理解できる一方で、おそらく女性しか体験しないことがリアルに描かれており、ただただ慄くばかりでした。

どんな人間も誰かの子

 本作は母と娘のすれ違いが大きな見どころです。自分の母(娘にとっては祖母)に褒めてもらうことだけが全てだった母。その母に認めてもらいたい一心で取った行動が全て裏目に出る娘。この決して上手くいっているとはいえない母娘は、二人共母からの愛を何よりも求めているという点でとても似ています。ここに血の繋がりを感じさせる著者の技量に脱帽しました。

さいごに

 数えてみたら湊かなえさんの作品を読むのは本作で13冊目でした。我ながら結構読んでいますね。ただ仕事から帰ってきてから読むイヤミスは結構しんどかったです。。。結局休日の昼間に半分以上一気読みしました。
 11月に公開予定の映画も非常に楽しみです!一人称視点だからこそ面白い作品をどう映像で表現するのか。今から公開が待ちきれません!!


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