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2度の保活で気付いた自分の育児へのスタンス-『「生きる力」の強い子を育てる』を読んで

3月。卒業、入学、進級など子どもたちにも変化の大きい季節です。
わが家の息子も4月に保育園の4歳児クラス(年中)になります。もうすぐ5歳。なんだか早いなぁ。

今日はめずらしく子育ての話
保育園も残すところあと2年ではありますが、今日はタイトルの本を読んで思い出した「保活」のエピソードから、本題に入っていきたいと思います。

2016年、2019年と2回「保活」を経験することに

2017年、息子が0歳児クラスで入ることができた認可保育園は乳児専門園で0,1,2歳児クラスまで。つまり2年後にまた保活をしないといけないということがこの時点で確定しました。
そのため一昨年は2度目の保活をすることに。

私はわりとざっくりしていて、真面目に育児とにらめっこするようなタイプではありませんが、この保活というものは「子育ての環境をどんなスタンスで捉えるか?」といった親側の価値観を考えさせられる時間でもありました。

↓ 入園したての前の保育園で

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共働き家庭の選択肢 保育園or幼稚園?

「保育園」?「幼稚園」?という話は時々働く母親の間で聞くことのあるテーマ。
私自身もこれは1度目も2度目も保活をしている頃、少し気になっていました。

その理由のひとつは、私も夫も母親が専業主婦の家庭で育ち、幼稚園に通っていたという自分たちの経験。
ふたつめは、義理の母から遠回しに幼稚園の方がいいんじゃない?と言いたい空気は何度か感じたりしたこと。(孫へいろいろ考えてくださる気持ちはありがたく受け取りつつ、合わないものはそっとスルーさせていただきます♪)
幼稚園は文科省、保育園は厚労省と管轄が違って、片方は教育、片方は保育、そもそもの目的なども違う。そんなこともあり「保育園の子は可哀想」と思われる方がいたりします。

とはいえ、自分の選択で子どもへ支障が出ることはやっぱり避けたいから幼稚園?保育園?ということを私も少し気になったのでした。
こうした場面にふれることで、自分の中にも自分の経験してきたことをなぞらせようとするような意識も働いてるんだな~と、客観的に自分の心の動きや固定概念に気づいたり。
いろいろ見て、情報もアップデートして、その上で自分が何を選ぶのか?を引いて、寄って考え選択することって大事ですね。

働く親の保活は平日に有休をとらないといけないという罠

2019年の初夏から秋。2度目の保活の際、トータルで10園くらい保育園見学に行きました。(1度目と2度目とで区内の引越しをして、エリアが違ったので見直す必要があったため。)
認可保育園の選考は、自治体によるから希望を出しても入れるとは限らないのだけれど、子どもを朝から晩まで10時間近く預かってもらう保育園という場所。見学しないで申し込むわけにもいきません。(これ特に0歳児や1歳児などで午睡時の死亡事故などもあるので、見ておくのは超大事。)
だけど保育園の見学って平日の日中なんですよね…なぜかというと通常の保育を行なっている様子を見てもらうことを目的にしているから。
1度目の保活は育休中だったので、ともかく、2度目は仕事をしているなか、この園見学は地味に大変でした。

こうしたことができたのは、前職の勤続年数が10年以上と長く、私の有休日数が多かったこと、そして仕事を自分で調整しやすい立場だったということもありました。(それでも長期計画で、だいたい半休が月2回くらいになるようにばらけさせて5月くらいから見学を始めました。これだと周囲にも影響がほぼなくすみました。)

とはいえ、同時に妻側だけがそうした負担を負うというのは本当はおかしな話だなとも思っていました。(夫に見学後、状況などをLINEで共有したり、申請前に状況整理しどこが良さそうか?という話し合いはしたものの、実際に見てる見てないで全然当事者意識違いますからね〜)

保育園見学をするうちに、自分の育児へのスタンスも見えてくる!?

見学したある私立こども園でのエピソード。
その園では、お絵描きの時間に絵の描き方を「まず枠を描いてここに○○を描いて〜」と指導され、全員が同じような絵を描かされていました。制服を着て通うスタイルで、習い事関係もカリキュラムに組み込まれている。見学に来ている保護者の雰囲気もママスーツを着ている方。
なんだか全体的に私にはなんだか違和感…。

こうした経験を重ねることで、言語化されていない自分の内側にある育児へのスタンスが何なのか?が浮かび上がってくる感じがしました。

今、息子の通う保育園の「保育目標」のなかのひとつに今回紹介する本のキーワードでもある「生きる力をもったたくましい子」というものが入っています。このワードと、それを体現した保育内容が気に入りました(笑)。
習い事的なプログラムは月1の体操くらいなもの。
そのかわりしっかり広さのある園庭で、その子の様子にあわせて遊ばせるような保育をしていること、近所の大きな公園に毎日のように出かけて遊べるというところがいいなと思ったのでした。

転園してもうすぐ一年。
去年の4月に入園後、コロナで約2ヶ月休園でしたが友達もでき楽しく遊んでいることや入園時には苦手がっていた虫などもクラスの子が先生いわく野生的(笑)なようでみんなが普通に手づかみしていることでだんだん慣れていっていそうなので、ひとまずよかったなと思っています。
田舎で育った私からすると、コンクリートジャングルで、生きていく上での土台になってくれる「生きる力」が育つかな?いうところを自分が懸念していたんだなぁとこの一連の経験で気付かされました。

↓ 2年前、所属するコミュニティの「田んぼの草とり」に参加させてもらったときのひとこま

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元ソニー天外伺朗さんによる子育て論のテーマは「生きる力」

今日紹介するのは、ソニーで「AIBO」などの開発を主導し、近年は経営分野でティール組織をテーマにした本など多数書かれ経営者向け勉強会などをされている天外伺朗さんの子どもの教育について書かれた本。
SNSで、これまたたまたま紹介されているのが目に入り気になり手に取りました。

この本で天外さんの定義する「生きる力」は以下。

「生きる力」の定義

①大地をしっかりと二本の足で踏みしめて立つ力(アレクサンダー・ローエンの「グラウンディング」という概念…自立心、足が地についている、外部の雑音や他人、世間の評価で信念がゆるがない…など)
②自らを肯定する力
③自らを常に磨く力
④自己実現へ挑戦する力
⑤意志の力
⑥物事を前向きに解決する力
⑦大自然を畏敬する心
⑧全体の中で適切で調和的な立ち位置を確保する力
⑨人生を楽しむ心
⑩感受性、感性
⑪ 独創力
⑫ 決断力
⑬ 好奇心
⑭ やる気
⑮ 人間的魅力
⑯ 積極性、行動力
⑰ バイタリティー
⑱ 交渉力
(天外伺朗(2011),『「生きる力」の強い子を育てる』飛鳥新社 p.29-30より)

天外さんの定義の特徴は、人間の大脳の中で、爬虫類時代までに発達した「古い脳」のはたらきが核になっている能力や資質のみを「生きる力」と読んでいるそう。理性、論理、知識のような大脳新皮質のはたらきかけで完結している表面的な能力や、外から強制された枠に従って実行している正義感や倫理観は「生きる力」に含めないんだとか。

ジャン=ジャック・ルソーにはじまり、ジョン・デューイの教育学、シュタイナー、モンテッソーリ、サドベリー教育など「人間性教育学」で主張が少しずつ違うけれど「子どもたちが自律的に成長する力を信頼する」「与えるより引き出す」「枠を強制することより自由を尊重する」などの共通点が見られるそう。
シュタイナーやモンテッソーリをはじめとしたオルタナティブ教育(学校教育法で規定されていない教育法)の中でそれぞれの違いがあるにせよ、私はこの大枠の共通項、「与える」ではなく「引き出す」という考え方に惹かれます

親のよかれが「逆効果」というはなし

この感覚に共感するのは、幼い時に親の熱心さで詰め込み教育を受けた同級生がその後、反抗期くらいに自分の意思が芽生えると詰め込みの勉強から離れていくケースを何人も見かけてきたこともあります。
「親に褒められること」などを動機にしてしまうと、反抗期くらいに楽しくないやらされ勉強より、他の楽しいことに走っちゃうのかもな?と当時から感じていました。

あまり恵まれなかった人は、見果てぬ夢を子に託すし、成功した親はさらなるプレッシャーを子に課す傾向がある。
どの親も、「わが子だけは!」と願うのだが、じつは他のすべての親も同じ願いを抱いている。
ひとりひとりの親にとっては、ごく自然な、ささやかな願いが、全体として積み上がると、とても酷いことになる。社会の中での「成功者」という数少ない椅子をめぐる、激しい競争に子どもたちを駆り立ててしまう。
ひとりの成功者は、大勢の成功できなかった人たちの上に立つ。成功者のみが評価されると、圧倒的な数の失敗者を生む社会になる。

成功という名の椅子には、「学歴」と書いてあると信じている人が多い。その競争は「お受験戦争」にすり替わっており、下手をすると小学校や幼稚園から子どもたちを苦しめることになる。
その渦の中に入ってしまうと、何も見えなくなってしまい、いまこれをしないと大変だ、というある種の強迫観念にかられて、子どもの尻をひっぱたいて勉強させることになる。
しかしながら、少し引いて大所高所から眺めたとき、それは本当に子どもたちにとって、いいことなのだろうか。

結論は「ノー」だ!
親の思いとは裏腹に、幼いうちから面白くもない勉強を強制され、ペーパーテストの世界にさらされた子どもたちは、きわめていびつで「生きる力」の乏しい大人に育っていく。(略)
それは、私が勝手にいっているのではない。「人間性教育学」の系譜に属する、偉大な教育者たちは、異口同音にそういっているのだ。
(天外伺朗(2011),『「生きる力」の強い子を育てる』飛鳥新社 p.59より)

また「できない子」だった私は、いじめに近いような状況も何度か経験しています。小学校在学中に2人、他の小学校へいじめを理由に転校していったことがあるような、わりといじめが起きやすい風土だった気がします。
そうした場面を思い出しても、クラスで「先生の前の顔」と、自分より下と思う人に対して見せる顔が違う同級生というのはよくありました。教室から先生が出ていくと標的をいじめるみたいなたぐい。それに親の前では親ののぞむ子を演じるけど、隠れて悪さをしてみたりというのもよくある話。ちなみに私は小学校では担任の先生に反抗したりしましたが、親には反抗気味でもオープンだった気がします。隠れてなんとかが、どうも好きじゃない。
そんな実体験から、詰め込み型で親が自分の欲のため子どもに敷いたレールを歩ませてもあまり「生きる力」はつかないんだろうなと経験から感じていました。

でも以下のピチャピチャは忍耐も必要。
雨の日に水たまりにはいりたい息子にやめようと言ってしまうことは実際私も多い…。(東京はほんと人が多くて寛容になりにくいよね。音の問題とか。)

幼児がミルクをこぼしてピチャピチャ遊び始めて夢中になったら「フロー」。「フロー」を十分堪能しきるまで遊んだ子どもは「正常化」に向かう。
一方、「そんなことしてないで、早く雑巾を持ってきて拭きなさい」としつけると、同様な状況で率先して雑巾で拭くようになり、誰の目から見ても「いい子」「しつけがよく行き届いた子」に映る。
ただ、たびたび「フロー」を妨げられた子どもは人が見ているときだけいい子を演じる傾向が強くなる。そして、どこかで意識的に悪いことをしたり、弱い子をいじめたりしてうっぷんをはらす。
(天外伺朗(2011),『「生きる力」の強い子を育てる』飛鳥新社 p.118 要約)

こども園でモヤっとした事例の「絵の指導」もこの中に!
絵を描くという表面的なスキルのみに着目していて、大人の絵、写実を理想としてそこに近づけようと焦ってしまうという話も。
実はこれよく子どもの頃に私の母が言っていたんです。「子どもの絵は、どの子が描くものもいいよね〜。変に大人が教えて大人の求めるものを描かせない方がいいんだよね〜。」というようなこと。

ロボット工学の立場で天外さんいわく、実は実現しやすいのは明らかに写実的な絵なんだそう。
抽象化することのほうが機械に難しい=人間にしかできないことなんだとか。

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あなたも「情動」にふたをしているかも?

喜び、怒り、悲しみ、恐れなどの感情の動きや、美しい、快いといった印象、感動など、さまざまな心の動きの源を「情動」というそう。
また「情動」というのは、ひとつ抑圧すると、すべてが抑圧されるという性質があるんだとか。一般に怒りを抑圧しないと社会生活はうまくいかないが、そうすると喜びも悲しみも抑圧されてしまい、近代文明人は多かれ少なかれその傾向があるそう。
情動が完全に接地できると、人は身体の内側からフツフツとわいてくる喜びを感じるようになり、そうなればレジャーやゴルフや海外旅行に精を出して、外側に楽しみを見出す必要はなくなるんだとか。

何か言おうとして、自分で抑圧することが習慣化すると、喉に「ブロック」ができるんだそう。
そうすると本音が出ない人になり、当たり障りのないことしかいわなくなる。一見すると、いい人に見えるけど、単に葛藤を内部に抑え込んでいるに過ぎない、と。これ私もちょっとその傾向あるな…アウェイでは抑圧しちゃう。

だけど、今「ファン」の感情に焦点をあて、自分自身も感情を出していく方に舵を切って、それで最近noteもポツポツ書くようにしていたりします。
情動も自分自身の考えることも意識して出すように。
情動のふたをこじ開けていく!笑

この本で紹介される「生きる力」が伸びる四要素とは?

最後に「生きる力」が伸びる四要素をまとめられています。

1.無条件の受容
2.大脳新皮質がいろいろ学ぶ前に、古い脳を徹底的に鍛える
3.フロー
4.大自然との対峙
(天外伺朗(2011),『「生きる力」の強い子を育てる』飛鳥新社 p.200より)

「子どもたちを勉強机からひっぺがし、大自然の中に連れ出して、思いっきり遊ばせればいいのだ。」とも書かれているのですが、私が親子ワーケーションに関心を持ち、積極的に取り入れていきたい理由もまさに「大自然との対峙」を一緒に経験したいから。

人の感情を扱うファンベースの仕事にしても、自然と対峙し人間が本来持つ力を活かしていくような教育にしても今私が向かおうとしている方向性はこっちなんだなと改めて思う一冊でした!

↓ 去年の夏の母子2人旅

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