PASSION ブラジルで「急げ」~ブラジルらしさって~
大移動
アマゾンの地・トメアスーを発ったのは2月19日。帰国は3月8日。この日から慌ただしい移動が続いた。サンパウロ近郊にあるヤクルト野球アカデミーというところで、27日と28日に野球大会が行われるとの情報を得ていたため、26日にはサンパウロへ戻なければならなかった。飛行機には乗らず、バスで移動していく。
ブラジルという大国では、時間が限られた旅は辛い。
ベレンから12時間バスに乗り、サンルイスへ。そしてサンルイスから260キロ離れたバヘリーニャスというまち。見渡す限りまっ白な砂丘が見られるレンソイス国立公園を訪ねた。
翌日、サンルイスに戻った私。ゴーストタウンと化していた。
サンルイスは世界遺産のまちだから、一日くらい観光しようとしたのだが、その日は日曜日。日曜日のサンルイスは人っ子ひとりいなかった。宿への道に迷い、途方に暮れていた。人に聞きたくとも人がいない。しかし、ある店の前で男性がいる。道を聞くと「危ないから連れて行ってあげる」。
しかしいきなり知らない人の車に乗るのは怖い。やめておこうか…と思った時には、彼は私のバックパックをひょいと車に積んでしまう。覚悟を決めた。だが、彼はとてもやさしく、宿に着くと無事に私がチェックインできるまで見守ってくれたうえ、「何かあれば連絡しなさい」と携帯電話の番号を控えたメモをくれたのだのだった。
翌月曜日。サンルイスに人が戻り、私は散策を楽しんだ。
サンルイスからは36時間バスに乗り、ブラジルの首都・ブラジリアへ。リオ・デ・ジャネイロから首都が移されて2010年で50年。まだ50年の歴史しかない首都である。国連ビルの設計者・オスカー・ニーマイヤーとその師であるルシオ・コスタによって設計されたまちはジェット機の形をしている。国会議事堂や裁判所、教会まで、あらゆる建築物が奇抜かつ芸術作品のようだとされているのだ。
ゴミが落ちていないアスファルトの道、大学のような建物、高層ビル、綺麗なバス、整然とした渋滞。これまでにブラジルで見てきた街並みとは全く異なり、有機的で近代的だった。
首都なのに、都会なのに、ジェット機の機首にあたる三権広場まで歩いてくれば、地平線が見えてしまう。ブラジリアは、セラードと呼ばれる中央高原の荒野にある。偉大な建築家の作品の数々を抱きながら、雲と空と地平線が360度広がっている世界。
東京の比ではない、サンパウロの高層ビル群。アリアンサの大自然。アマゾン河のフェリー旅でみた風景。そしてこの奇抜な首都・ブラジリア。
ブラジルはつかみどころがない。
でもそれが、ブラジルらしさなのかもしれなかった。
ブラジリアを出て14時間後、2月26日。3週間ぶりにサンパウロへ戻ってきた。