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"弱み"に注目したほうが、才能が活かせるという話

私は毎朝、ニューヨーク・ロンドン・パリ・ミラノ・東京から生まれる約1000記事をチェックして、週2回、ニュースレターを書いているのですが、今回は気になる記事のピックアップではなく「才能とブランドを強化する弱み」についてお届けしました。その内容を転記します。

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前回のニュースレターで「才能とは、情熱と弱みからできている」といったことを書きました。

抜粋すると
『得意なことと、好きなことと、やりたいことが重なる部分を仕事にすると良い、と言われますが、私はそこに「弱み」のエッセンスが加わると「ブランド」になっていくと考えます。』

そして、「弱み」がなぜブランドになるのか?を知りたい方がいらっしゃったら教えて下さいね、と伝えたところ、多くのリクエストをいただいたので、今日は私が考える「弱み力」についてお話したいと思います。

弱みに潜むすごいパワー

パラレルワークや副業が大手企業でも解禁になって、
同時にSNSが普及するにつれて、自分の名前で仕事をしていきたいと思う人が増えました。

独立や起業をしたことがあれば、自分の商品やサービスをどう売っていくのか、自分自身がそこにどんな貢献ができるのか、を意識します。

その意識がサラリーマンの中にも浸透してきていることが、「ブランディング」というキーワードが一般的になってきていることからも、感じられます。

ブランディングに成功している、ということは
良いイメージを持たれているということと
イコールと思われる人も多いかもしれません。

なので、良いイメージを持たれる=多くの人に好かれる=ブランディングに成功している、という式を思い浮かべて、ブランディングに力を入れよう!となることが多いのだと推察されます。

しかし、ブランディングに成功している=多くの人に良いイメージを持ってもらうという式は、本当にそうなのでしょうか?


それを考えていくには「ブランド」とは何か?ということから考えなければなりません。
「ブランド」プラス「ing」、つまりブランドを作っていくことが「ブランディング」だからです。

「ブランド」とは

ウィキペディアによると「ある財・サービスを、他の同カテゴリーの財やサービスと区別するためのあらゆる概念」と書かれています。

「言葉の由来は”焼印を押す”ということで~」と歴史から説明を始める人もいます。

カルフォルニア大学バークレー校デイヴィッド・アーカー名誉教授は
「組織から顧客への約束」「積み重なり変化していく顧客との関係」と説明していますし

ダートマス大学のケビン・レーン・ケラー教授は「消費者が意思決定を単純化できるように製品・サービスについての知識を整理すること」と述べています。

どれも何となくそうだろうな、と思えるものではありますが、ここから具体的に何をしたら良いのか?はイメージするのはちょっと難しいです。


先に、私が考える「ブランド」とは何か、ということをお伝えしてしまうと

ブランドとは、

『価格や機能などのスペック比較を超越して、無条件に選ばれる存在』

のことです。

「私にとって、○○といえばコレ!」の
コレ、になるというイメージです。

そして、選ばれるには“誰かから”という主語が必要になるため
ブランドは「関係性の中」にしか存在しません

ある人にとってはブランドでもこの人にとってはそうではない、ということは、高級ブランドと言われる製品でもありますね。

では、理屈抜きに選ばれる存在になるには一体何が必要になるのでしょうか?

【1】違いが明確

スペックで比較されないということは[違い]が明確でなければなりません。
間違えてはいけないのはここでスペックの[違い]を説明してもブランドにはならないということです。

企業のロゴデザインやコーポレートカラー、ノベルティやホームページなどでもその[違い]を表現していきますが、一番の[違い]とは何かというと、サービスや商品を作っている「人」のことです。

ITスタートアップ界隈でよくある話ですが、解決する課題や提供するサービス、UIUXなども似ている2つのサービスがあった時、どちらかが圧倒的にシェアを占めるということが起こる場合があります。

同じ課題、似たようなサービスであっても、作っている・運営している人が違うだけでそのような差を生み出すことができるのです。

そしてこの[違い]は多くの場合、強みの競争で現れてくるのではなく、弱みから生まれることが少なくありません。

強みの種類は数少ないのに対し、弱みというのは千差万別で、独自の[違い]につながることが多いのです。

ポストイットなど、弱み(失敗)から生まれた大ヒット商品も数多くありますね。


【2】共感される

選ばれる人になるには、その前段階として
知ってもらい共感してもらうというプロセスがあります。
何に共感してもらうかというと、あなただけの「才能」に、です。

自分の才能が何かということをちゃんと把握していますか?
どんな場所でどんなことをしていても才能は輝かせることができるものです。

私は昔から、人が才能を発揮しているところを見るのが大好きでした。

その人だけが持つ独自性と、大好きなこと、得意なこと、やっていて楽しいことが合わさっていきいきと過ごしている様子を見ると、世界はなんて豊かな才能に溢れているんだろうと嬉しくなってしまうのです。

直接お会いできるのであれば、その方の才能を見抜くことは容易なのですが
もし自分の才能がわからない、というのであれば見当をつける方法があります。


才能とは、

その部分を使うことで誰かに良い影響を与えて人を動かしてしまう
自分がそれをやっている時に楽しいと感じる
自分が強烈に弱みだと思っている

という所に隠れています。

「人を動かす部分」はわかりやすいですね。
料理人としての才能がある人は、その人の料理を食べに100km先からでも人は来ますし 、教える才能がある人は、生徒さんはその人の指導を受けたいとどんなに忙しくても時間を作ってレッスンを受けに来るでしょうし、ライティングの才能がある人は、その人の文章で誰かの生活に影響を与え、読んだ人の人生を変えてしまうようなことが起こります。

生まれたばかりの赤ちゃんでさえ、ミルクをもらったりおしめを変えてもらったりと、泣くだけで誰かを動かす才能を持っています。


次の「楽しいと感じる部分」ですが、この「楽しい」の中には、努力することが苦ではない、ある程度のところまでは簡単にできるという要素が含まれます。

私は広報という仕事に出会ったとき、楽しくて仕方がなくて、周りから「どれだけ仕事をするんだ」と言われたりもしましたが、本人はまったく気にしていませんでした。

私の場合、自分が楽しいと感じているかどうかはすぐにわかるのですが、人によっては楽しいと感じることに対して罪悪感を持っていたりするので、小さな小さな心の声に敏感にならないと感じられないかもしれません。

没頭し、そのことについて常に考えていて、それを通じて世の中に貢献できることが嬉しい!と思うことが「楽しいと感じる」部分です。


そして、「強烈に弱みを感じる部分」です。これは、不得意な部分や苦手なジャンルという意味ではありません。

やっていて楽しいのに「これがないから成功できない」「○○だから自分にできるはずがない」と思い込んでいる部分や、人に言えないくらい恥ずかしいと思っている過去の出来事、それを引き起こした自分に対するジャッジで「こんなことを知られるくらいなら死ぬ方がマシ」くらい思っている部分です。

ひとつ例をお話します。
先日、ずっと副業としてやっていた事業が本業を越えるくらいの規模になってきたので、起業したという友人と会いました。

彼女は宝石が大好きで、趣味で色々な石を集めてコレクションしていたのですが、そこから石を仕入れて売るようになって、パートナーに恵まれ、指輪やネックレスといったジュエリー加工をするようになり、それが当たって会社を作ることになりました。

これだけ聞くと順調に聞こえますが、私が彼女と出会ったのは前職でのこと。事務作業系を何でもやるというポジションで同僚として働いていました。

彼女のこれまでのキャリアは
ウェブデザイナー、カスタマーサポート、営業事務、校正、広報、その他諸々と、業界も職種も多岐にわたり、何をやってもいまいちハマらず、転職を繰り返すキャリアの迷子で、いつも会社や上司の愚痴を言う日本全国の居酒屋に生息するサラリーマンと何ら変わりませんでした。

自分で宝石を売るきっかけになったのは、問屋で石を買うようになった頃、自分が大好きな石なのに店員さんが「売らされている」感満載だったこと。
石についても詳しくなく、質問にも適当な回答で「こんな店員から買うくらいなら自分から買う」と思ったことだそうです。

小さなECサイトを立ち上げて販売するようになった、と聞いたのが2年くらい前。宝石への愛があるので、石の説明が丁寧で、良いものばかりを売っているのであっという間に人気になりました。

仕事は最近どう?と連絡を取るたびに「宝石のほうが忙しくなっちゃって」と順調な様子だったのですが、これはあくまでも副業、趣味でまさか自分が会社を作ることになるとは思っていなかったそうです。

それは、どんな仕事をしても中途半端で、会社の人間関係もあまりうまく行かず、これといった専門性も自分で仕事を作ったこともないので、事業を作るなんてことができると思っていなかったから。

つまり「ジョブホッパーで何をやっても中途半端」というところが弱みだと思い、それが故に成功しないと思っていたのでした。

しかし、実はそこに才能が隠れていて、多くの職種を経験していたからこそいますべてのスキルを総動員して事業が運営できている、と言います。

一緒にやっている人が、マーケティングが得意でそれしかできないので、
売る以外のすべての部分、仕入れから協力会社との交渉、梱包や配送、ノベルティ作成やサイトの更新など彼女ひとりでやっているそうです。

自分が楽しいと思う分野で、人が動くくらいのパワーを持ち、弱みをひっくり返して強みにしているという才能を活かして生きている様子にとても嬉しくなってしまいました。

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弱みというのは、自分だけが気になる「欠けていると思い込んでいる」部分です。

気になる、ということだけでひとつの明確なサインなので
それをひっくり返してみると大きな才能が潜んでいることが多いのです。そしてこの部分は、自分でも見たくないと思っている部分なので、ぱっと言われてもすぐに見つからないことも多いです。

しかし、この友人のように「様々な業界や職業を経験している」ということは事実ではありますが、それを「専門性がない」という弱みに思うか「なんでも器用にできる」という特性にするかは自分次第なのです。


話は「共感」に戻りますが
弱みをさらけ出すことは共感を得ることにとても有効に働きます。

人は、敵じゃないと認識した対象にしか好意を抱かないものなので、弱みを伝えることで「この人も悩んでいたんだな」とか「こんなすごい人でも完璧じゃないんだな」などと思ってもらうことに使えるのです。

共感は文字通り「感情を共有する」ことです。
ダメだなぁ、悔しいなぁと落ち込む弱みの部分は多くの人に共通の感情で、優しい気持ちになれる効果があります。

こんなふうに「弱み」には

・違いを作り出し、
・才能が隠れていて、
・共感を生み出す

すごい作用があります。

体験するすべての出来事も感情も、「弱み」ですらも捨てるところはなくて
何かに活かすためにやって来ていることを知れば、人生がもっと楽しくなりますね。

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