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いつもの中で。

初老ほどの夫婦のいつも。

夫はいつものように茶をすすりながら、
新聞をみている
妻はいつものように掃除機をだして、
居間から掃除機をかけ始めている。
居間には掃除機の音と、
テレビでやっている観客の笑い声が時に聞こえる。

夫:(新聞から目を覗かせ、妻を見やる)
妻:(少ししてそれに気づいて掃除機をとめる)

妻:なんですか
夫:・・・いや、別に(茶をすすり新聞に目をおとす)
妻:はぁ・・・(再び掃除機をかけはじめる)

夫:(しばらくしてまた妻を見やる)
妻:(夫の視線に気づいて掃除機をとめる)

妻:・・・なんです、さっきから
夫:いや。いい。
妻:なに、気持ち悪い。
夫:(視線を新聞に落とし顔を隠す)
妻:お茶ですか、
夫:いや、お茶はまだある(と、湯飲みだけかかげる)
妻:はぁ、(また掃除機をかける)

夫:(新聞の上からまたこっそり覗く)
妻:(しばらくしてそれに気づいて掃除機をとめる)

妻:本当に、なんです、用事ですか。
夫:いや、その
妻:そのじゃわからないですよ。
夫:えと、今日は、何日だったか。
妻:新聞みてるんですから、あなたのほうがご存知でしょ
夫:あ・・・うん。(と、また新聞を見やる)
妻:はぁ(また掃除機をかける)

夫:(新聞の横からひょっこり覗く)
妻:(それに待っていたように掃除機をとめる)

妻:一体何なんですか、さっきから。
夫:いや、その
妻:うるさいならうるさいと言えばいいじゃないですか。
夫:あ、いや
妻:いやいやいやいや、いやしか言えないんですか、あなたは。
夫:いや、(と、口を押さえる)
妻:全く・・・

妻は居間をかけおわり、
コンセントを抜いて、手際よく線をたくして、
玄関に向かう。
夫、茶をすすり、新聞をおく。
妻の足音がぴたりと止まる。

夫、ゆっくり立ち上がり出かけるのか身支度をゆっくり始める
妻の足音がぱたぱたと居間にかえってくる

妻、手には花瓶にいけた一本の薔薇。

妻:あなた、これ
夫:あ、あぁ、結婚記念日だからなぁ
妻:(薔薇をみて、くすっと笑う)
夫:掃除ができたら、久々にどうだ、外食いくか。
妻:・・・はい!

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